◇SH1365◇消費者庁、消費者契約法の見直しに関する意見募集を開始 (201708/28)

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消費者庁、消費者契約法の見直しに関する意見募集を開始

--不利益事実の不告知の主観的要件に「重大な過失」を追加すること等を検討--
 

 消費者庁は8月21日、消費者契約法の見直しに関する意見募集を開始した。

 消費者契約法(平成12年法律第61号)については、平成28年に改正され、取消しの対象となる消費者契約の範囲を拡大するとともに、無効とする消費者契約の条項の類型を追加する等の措置が講じられた(消費者契約法の一部を改正する法律(平成28年法律第61号))。

 この改正のもととなった「消費者契約法専門調査会報告書」(平成27年12月25日)で「今後の検討課題」とされた論点等について、同専門調査会では平成28年9月に審議を再開。前述の改正法の国会審議における附帯決議第2号で「情報通信技術の発達や高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化に鑑み、消費者委員会消費者契約法専門調査会において今後の検討課題とされた、「勧誘」要件の在り方、不利益事実の不告知、困惑類型の追加、「平均的な損害の額」の立証責任、条項使用者不利の原則、不当条項の類型の追加その他の事項につき、引き続き、消費者契約に係る裁判例や消費生活相談事例等の更なる調査・分析、検討を行い、その結果を踏まえ、本法成立後三年以内に必要な措置を講ずること。」(衆議院消費者問題に関する特別委員会・平成28年4月28日)とされたことも踏まえて検討が進められた。

 そして、平成29年8月8日に消費者委員会(河上正二委員長)から「消費者契約法の規律の在り方について」の答申(下記参照)が行われた。答申に添付された「消費者契約法専門調査会報告書」では、「措置すべき内容を含むとされた論点については、消費者と事業者の双方から幅広く意見を聞く機会を設ける」ことが求められており、今回の意見募集対象となったものである。意見募集では、下記の「報告書における消費者契約法の改正に関する規定案」等について、8月21日から9月15日まで、広く意見を求めている。


○消費者委員会「消費者契約法の規律の在り方についての答申」(8月8日)の抜粋

 別添「消費者契約法専門調査会報告書」の内容を踏まえ、措置すべき内容を含むとされた論点のうち、法改正を行うべきとされた事項については、速やかに消費者契約法の改正法案を策定した上で国会に提出し、改正法案が成立した場合においては、現行法の内容及び改正法の内容について幅広く周知活動を行うこと及び解釈の明確化が必要な点については逐条解説等において明確化を図ることなど、必要な取組を進めることが適当である。

 なお、当委員会は、専門調査会における報告を受けて、ぜい弱な消費者の保護の必要性等現下の消費者問題における社会的情勢、民法改正及び成年年齢の引下げ等にかかる立法の動向等を総合的に勘案した結果、特に以下の事項を早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題として付言する。

  1. 1 消費者契約における約款等の契約条件の事前開示につき、事業者が、合理的な方法で、消費者が契約締結前に、契約条項(新民法第548条の2以下の「定型約款」を含む。)をあらかじめ認識できるよう努めるべきこと。
  2. 2 合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させるいわゆる「つけ込み型」勧誘の類型につき、特に、高齢者・若年成人・障害者等の知識・経験・判断力の不足を不当に利用し過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合における消費者の取消権。
  3. 3 消費者に対する配慮に努める事業者の義務につき、考慮すべき要因となる個別の消費者の事情として、「当該消費者契約の目的となるものについての知識及び経験」のほか、「当該消費者の年齢」等が含まれること。

 

○報告書における消費者契約法の改正に関する規定案

 1 法第3条(事業者及び消費者の努力)第1項関係

  1. ⑴ 努力義務を定めた消費者契約法第3条第1項のうち、契約条項の明確化に関係する箇所を改正し、事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになり、また、条項の解釈について疑義が生ずることのないよう配慮するよう努めなければならない旨を明らかとすること。
  2. ⑵ 努力義務を定めた消費者契約法第3条第1項のうち、事業者の情報提供に関係する箇所を改正し、当該消費者契約の目的となるものの性質に応じ、当該消費者契約の目的となるものについての知識及び経験についても考慮した上で、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない旨を明らかとすること。

 2 法第4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)第2項関係

  1.    不利益事実の不告知(消費者契約法第4条第2項)の規定において、現行の消費者契約法では「故意」とされている事業者の主観的要件に「重大な過失」を追加すること。

 3 法第4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)第3項関係

  1. ⑴ 消費者契約法第4条第3項の規定において掲げる行為(当該行為によって消費者が困惑して意思表示をしたときは取消しが認められることとなる行為)として、当該消費者がその生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険に関する不安を抱いていることを知りながら、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該損害又は危険を回避するために必要である旨を正当な理由がないのに強調して告げることという趣旨の規定を追加して列挙すること。
  2. ⑵ 消費者契約法第4条第3項の規定において掲げる行為(当該行為によって消費者が困惑して意思表示をしたときは取消しが認められることとなる行為)として、当該消費者を勧誘に応じさせることを目的として、当該消費者と当該事業者又は当該勧誘を行わせる者との間に緊密な関係を新たに築き、それによってこれらの者が当該消費者の意思決定に重要な影響を与えることができる状態となったときにおいて、当該消費者契約を締結しなければ当該関係を維持することができない旨を告げることという趣旨の規定を追加して列挙すること。
  3. ⑶ 消費者契約法第4条第3項の規定において掲げる行為(当該行為によって消費者が困惑して意思表示をしたときは取消しが認められることとなる行為)として、当該消費者が消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に当該消費者契約における義務の全部又は一部の履行に相当する行為を実施し、当該行為を実施したことを理由として当該消費者契約の締結を強引に求めることという趣旨の規定を追加して列挙すること。
  4. ⑷ 消費者契約法第4条第3項の規定において掲げる行為(当該行為によって消費者が困惑して意思表示をしたときは取消しが認められることとなる行為)として、当該事業者が当該消費者と契約を締結することを目的とした行為を実施した場合において、当該行為が当該消費者のためにされたものであるために、当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしないことによって当該事業者に損失が生じることを正当な理由がないのに強調して告げ、当該消費者契約の締結を強引に求めることという趣旨の規定を追加して列挙すること。

 4 不当条項の類型の追加関係

  1. ⑴ 消費者契約が、物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの対価を消費者が支払うことを内容とする場合において、当該消費者が後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたことのみを理由として事業者に解除権を付与する条項を無効とする旨の規定を設けること。
  2. ⑵ 次に掲げる消費者契約の条項は無効とする旨の規定を設けること。
    1. ア 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の要件に該当するか否かを決定する権限を事業者に付与する条項(消費者契約法第8条第1項第1号及び同項第2号の規定の潜脱を可能とするような決定権限付与条項)
    2. イ 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされる当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の要件に該当するか否かを決定する権限を事業者に付与する条項(消費者契約法第8条第1項第3号及び同項第4号の規定の潜脱を可能とするような決定権限付与条項)
    3. ウ 事業者に債務不履行がある場合に消費者の契約を解除する権利の要件に該当するか否かを決定する権限を事業者に付与する条項(消費者契約法第8条の2の規定の潜脱を可能とするような決定権限付与条項)

 5 法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)第1号関係

  1.    消費者契約法第9条第1号の規定における「平均的な損害の額」に関し、消費者が「事業の内容が類似する同種の事業者に生ずべき平均的な損害の額」を立証した場合には、その額が「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」と推定される旨の規定を設けること。

 

  1. ○ 消費者庁、消費者契約法の見直しに関する御意見募集について(8月21日)
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/index.html#investigation
  2. ○ 報告書における消費者契約法の改正に関する規定案
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000163119
  3.  
  4. 参考
  5. ○ 消費者委員会「消費者契約法の規律の在り方についての答申」(8月8日)
    http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2017/index.html#lst8
  6. ○「消費者契約法専門調査会報告書」(8月8日)
    http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2017/__icsFiles/afieldfile/2017/08/09/20170808_sk_toshin_betu.pdf
  7. ○ 消費者委員会「消費者契約法専門調査会報告書」(平成27年12月25日)
    http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2015/houkoku/20151225_houkoku.html


 

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