◇SH1461◇改正民法の「定型約款」に関する規律と諸論点(3) 渡邉雅之/井上真一郎/松崎嵩大(2017/10/27)

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改正民法の「定型約款」に関する規律と諸論点(3)

弁護士法人三宅法律事務所

弁護士 渡 邉 雅 之
弁護士 井 上 真一郎
弁護士 松 崎 嵩 大

 

4 具体的取引に係る「定型約款」該当性の検討

 本項においては、以下のとおり、約款・契約書の種類を「消費者向け取引(BtoC)」(下記(1))と「事業者間取引(BtoB)」(下記(2))に分類して検討を行う。

 定型約款に該当するか否かは、あくまで当該取引の実態を踏まえて判断することになるため、必ずしも一概には判断できない可能性もあるが、以下においては、一般的に認識されている取引の実態を前提として検討を試みる。

(1) 消費者向け取引(BtoC)

ア 預金規定・証券総合サービス約款
 預金規定や証券総合サービス約款は、以下のとおり定型約款の要件を充たすため、定型約款に該当するものと考えられる。[1]

  1. ① 預金取引や証券取引は、銀行や証券会社が不特定多数の顧客を対象として行う取引であるため、不特定多数要件を充たすものと考えられる。この点、預金契約や証券総合サービス契約の締結の際には顧客が反社会的勢力に該当しないかチェックをするが、このような画一的な基準で審査をしているに過ぎない場合には、相手方の個性に着目した取引であるとはいえないと考えられる。
  2. ② 預金取引や証券取引のように大量の取引が予定されているものについては、画一的な取引とすることにより、銀行や証券会社にとっては事務の定型化による正確性・迅速性の確保やコスト低減を図ることができ、顧客にとっては、正確かつ迅速なサービスを平等かつ低額で利用できるというメリットを享受することができ、双方にとって合理的であるといえるため、画一性要件を充たすものと考えられる。
  3. ③ 預金規定や証券総合サービス約款は、顧客が個別の条項の内容を逐一検討していなくても、契約の内容とすることを目的として準備されたものといえるため、目的要件を充たすものと考えられる。

 

※ 表明・確約書の定型約款該当性

 預金口座の開設の申込みにおいては、預金者が反社会的勢力ではないことの表明・確約書を徴求する実務が行われている(その他にも、ゴルフ場の入場の際にも同様の表明確約を徴求することとされている等、このような実務が行われている場面は少なくない。)。預金口座開設申込書の中にチェック欄を設けて同様の表明・確約をさせる例もある。

 反社会的勢力でないことの表明・確約は、預金規定において解約事由として、「預金者が口座開設申込時にした表明・確約に関して虚偽の申告をしたことが判明した場合」を定めることにより、単に預金規定に暴力団排除条項を定めるよりも預金者の認識が高まることにより、①予防的効果があり、また、②事後的に、反社会的勢力であることが判明した場合、預金契約を解除することが容易となり、さらに、③警察が虚偽の表明確約をした者を詐欺罪で立件しやすくなるという効果があると考えられている。

 

【反社会的勢力ではないことの表明・確約に関する同意の例】

反社会的勢力ではないことの表明・確約に関する同意

 

年  月  日

住所:               

氏名(会社名):          

 

私(本預金口座の名義人。預金口座名義人が法人の場合には、当該法人の役員等を含む。以下同じ。)は、次の①の各号のいずれかに該当し、もしくは②の各号のいずれかに該当する行為をし、または、①にもとづく表明・確約に関して虚偽の申告をしたことが判明した場合には、この預金取引が停止され、または通知によりこの預金口座が解約されても異議を申しません。また、これにより損害が生じた場合でも、いっさい私の責任といたします。

① 貴行との取引に際し、現在、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約いたします。

  1. 1. 暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から 5 年を経過しない者
  2. 2. 暴力団準構成員
  3. 3. 暴力団関係企業
  4. 4. 総会屋等、社会運動等標榜ゴロまたは特殊知能暴力集団等
  5. 5. その他前各号に準ずる者

【以下、略。】

 

 このような反社会的勢力でないことの表明・確約に関する同意が定型約款に該当するかについて、形式的には預金規定外の同意事項ではあることを踏まえると、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項」とはいえないのではないかが問題になるように思われる。もっとも、預金規定における解約事由に関連する事項であることからすれば、このよう表明・確約に関する同意も含めて、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項」に当たるとして、定型約款に含まれるとも考えられる。

イ 保険約款
 個人向けの生命保険や損害保険における保険約款は、以下のとおり定型約款の要件を充たすため、定型約款に該当するものと考えられる。[2]

  1. ① 保険約款は、保険会社が不特定多数の保険契約者を相手方として締結することが予定されているため、不特定多数要件を充たすものと考えられる。この点、例えば、生命保険であれば被保険者の健康状態の審査をする等、加入に当たって一定の審査が行われることはあるが、このような画一的な基準で審査をしているに過ぎない場合には、相手方の個性に着目した取引であるとはいえないと考えられる(被保険者が「相手方」なのかということ等も問題になり得るだろう。)。
  2. ② 預金取引と同様、保険取引も大量の取引が予定されているものであり、画一的な取引とすることにより、保険会社にとっては事務の定型化による正確性・迅速性の確保やコスト低減を図ることができ、保険契約者にとっては、正確かつ迅速なサービスを平等かつ低額で利用できるというメリットを享受することができる。そもそも、保険取引は、各保険契約者が公正・衡平な条件で加入することを前提として、大数の法則や収支相当原則等に基づいて商品設計されるものであるため、個別の相手方との間で契約内容を修正していては、制度として成り立たないともいえる。したがって、画一的であることが双方にとって合理的な取引であり、画一性要件を充たすといえるものと考えられる。
  3. ③ 保険約款は、保険契約者が個別の条項の内容を逐一検討していなくても、契約の内容とすることを目的として準備されたものといえるため、目的要件を充たすものと考えられる。

 なお、普通保険約款に様々な特約(総合医療特約、リビング・ニーズ特約、三大疾病特約、転換特約等)を組み合わせて契約をする場合、顧客の選択によって特約をつけることによって、普通保険約款は画一的に適用されることにはならいということになり、一種の交渉があるため、特約が関連する部分は定型約款から外れていくのかという議論もあり得る。しかし、普通保険約款及び各種特約のいずれにしても、実質的な内容に交渉があるわけではなく、顧客が特約をつけるかどうかの選択をしているだけなので、定型約款から除かれることはないものと考えられる。

※ 申込書に記載されている確認事項の定型約款該当性

 生命保険契約においては、保険約款が冊子となっており、生命保険契約申込書とは別途の書類となっているのが通常である。

 生命保険契約申込書においては、保険契約者(申込人)、被保険者、受取人、主契約・特約の内容、保険料、保険料払込方法などが記載されるが、これらは、保険契約者との個別の交渉を経て合意されるものであり、定型約款に該当するものではないと考えられる。

 この点、生命保険契約申込書においては、下記のような保険約款には記載されていない個人情報の取扱いに関する「確認事項」も記載されている。もっとも、このような確認事項は、生命保険取引の契約内容とすることを目的としたものといえるのか疑問であり、当然に定型約款に該当するとはいえないようにも思われる。

 

【個人情報の取扱いに関する確認事項の例】

【確認事項】

■個人情報の取扱いについて■

○当社は個人情報を以下の目的達成に必要な範囲で取り扱います。保健医療など特に取扱いに注意を要する個人情報は、保険業法施行規則により利用目的が限定されており、保険業の適切な運営を確保するため業務上必要な範囲で取り扱います。

  1. ・ 各種保険契約のお引受け、ご継続・維持管理、保険金・給付金等のお支払い
  2. ・ 関連会社・提携会社を含む各種商品・サービスのご案内・提供、ご契約の維持管理
  3. ・ 当社業務に関する情報提供・運営管理・商品・サービスの充実
  4. ・ その他保険に関連・付随する業務

【以下、略。】

 

ウ ソフトフトウェア利用約款
 ソフトウェア利用約款は、以下のとおり定型約款の要件を充たすため、定型約款に該当するものと考えられる。

  1. ① ソフトウェア利用取引は、ベンダーが不特定多数のユーザーを相手方とすることが予定されているため、不特定多数要件を充たすものと考えられる。
  2. ② ソフトウェア利用取引は、画一的な取引とすることにより、ベンダーにとっては事務の定型化による正確性・迅速性の確保やコスト低減を図ることができ、ユーザーにとっては、正確かつ迅速なサービスを平等かつ低額で利用できるというメリットを享受することができ、双方にとって合理的であるといえるため、画一性要件を充たすものと考えられる。
  3. ③ ソフトウェア利用約款は、ユーザーが個別の条項の内容を逐一検討していなくても、契約の内容とすることを目的として準備されたものといえるため、目的要件を充たすものと考えられる。

エ スポーツクラブ利用規約
 スポーツクラブ利用規約についても、上記のソフトウェア利用約款等と同様に考えられるため、定型約款に該当するものと解される。
 なお、スポーツクラブ入会に際して、申込者の年齢・住居等の一定の審査があるが、このような画一的な基準で審査をしているに過ぎない場合には、相手方の個性に着目した取引であるとはいえないと考えられる。

オ 投資信託約款
 投資信託約款については、特定の委託者(運用会社)と受託者(信託銀行)との間で締結される契約であり、不特定多数要件を充たさないように思われる。もっとも、投資信託約款には、受益権の内容に関する定めがあり、不特定多数の受益者にも契約の効力が及ぶものであるので、この点に着目して不特定多数要件を充たすという考え方もあり得る。
 このような考え方のもと、不特定多数要件を充たすと考えられるのであれば、画一性要件及び目的要件については、前述の預金規定や証券総合サービス約款と同様に考えることができるため、投資信託約款も定型約款に該当すると考えられる。

カ 消費者ローン契約書
 消費者ローン契約書は、以下のとおり定型約款の要件を充たすため、定型約款に該当するものと考えられる。[3]

  1. ① 消費者ローンは、金融機関や貸金業者等が不特定多数の借主を相手方とすることが予定されているため、不特定多数要件を充たすものと考えられる。借入に当たっては、個人信用情報、年収、勤務先情報等をもとに、個人信用情報に毀損があるか否か、他社からの借入が多いか否か(多重債務でないか)、年収が低いかまたは安定しないか等が審査されるものの、このような審査は画一的な基準に従って行われているに過ぎないため、個性に着目しているとはいえないと考えられる。
  2. ② 消費者ローンは、画一的な取引とすることにより、貸主にとっては事務の定型化による正確性・迅速性の確保やコスト低減を図ることができ、借主にとっては、正確かつ迅速なサービスを平等かつ低額で利用できるというメリットを享受することができ、双方にとって合理的であるといえるため、画一性要件を充たすものと考えられる。
  3. ③ 消費者ローン契約書は、借主が個別の条項の内容を逐一検討していなくても、契約の内容とすることを目的として準備されたものといえるため、目的要件を充たすものと考えられる。

キ 住宅ローン契約書
 住宅ローン契約書については、以下のとおり、定型約款に該当しないと考える余地もあるが、通常は定型約款に該当する場合が多いのではないかと考えられる。[4]

  1. ① 住宅ローンは、金融機関が不特定多数の借主を相手方とすることが予定されているため、不特定多数要件を充たすものと考えられる。借入に当たっては、顧客の収入、資産等を踏まえた一定の審査が行われているものの、このような審査は画一的な基準に従って行われているに過ぎないため、個性に着目しているとはいえないと考えられる。
  2. ② 住宅ローンは、画一的な取引とすることにより、貸主にとっては事務の定型化による正確性・迅速性の確保やコスト低減を図ることができ、借主にとっては、正確かつ迅速なサービスを平等かつ低額で利用できるというメリットを享受することができ、双方にとって合理的であるといえるため、画一性要件を充たすものと考えられる。もっとも、例えばアパートローンのように、事業性の住宅ローンである場合については、個別の事案に応じて借主との間で交渉をしながら契約を締結することが予定されている場合もあり得るため、そのような実態がある場合には、画一性要件を充たさないとも考えられる。
  3. ③ 住宅ローン契約書は、借主が個別の条項の内容を逐一検討していなくても、契約の内容とすることを目的として準備されたものといえるため、目的要件を充たすものと考えられる。ただし、アパートローンのような場合に前述したような実態があるのであれば、借主が契約内容を十分に吟味するのが通常であるため、目的要件を充たさないと考える余地もある。

ク 不動産売買契約書・不動産賃貸借契約書
 不動産売買契約や不動産賃貸借契約については、相手方が事業者であれ消費者であれ、個別の顧客ごとに、個別事案に応じて交渉を経て締結されるのが通常であると思われる。したがって、不特定多数要件も画一性要件も満たさないと考えられる。[5]
 もっとも、住宅の賃貸借契約については、例えば、地方住宅供給公社が大規模団地を建設し、契約内容を画一的に定める場合などは、双方にとって画一的であることが合理的といい得るし、不特定多数要件や目的要件もみたすため、定型約款に該当するとも考えられる。[6]仮にこのように定型約款に該当するといえるような実態がある場合には、事業者が社宅用として一部を借り受ける場合であっても、賃借人が個人である場合と実態は変わらないため、定型約款に該当するという結論に影響はないだろう。また、このような取引の実態がある場合に、例外的に交渉によって条項を修正してもらうことがあり得たとしても、その修正した部分だけが個別合意として定型約款から外れるだけであり、その他の部分が定型約款に該当することに変わりはないということになる。
 オフィスビルの賃貸借契約等については個別交渉によって締結されることが予定されているのが通常であり、定型約款に該当するとは考え難い。もっとも、使用細則等については、全賃借人に画一的な内容になっており、このことは双方にとって合理的であるといえるように思われる。そうであるとすれば、このような使用細則等については定型約款に該当するという解釈もあり得る。

(2) 事業者間取引(BtoB)

ア 預金規定・証券総合サービス約款・保険約款・ソフトウェア利用約款
 普通預金や定期預金等に係る預金規定、証券総合サービス約款、保険約款、ソフトウェア利用約款といったものについては、相手方が消費者である場合と事業者である場合とで、その取引の実態に変わるところはないのが通常である。したがって、定型約款の要件を充たすことに異なる点はなく、いずれも定型約款に該当すると考えられる。[7]

なお、企業保険については、個人向けの保険契約とは異なり、個別の相手方との間で協定書等を締結することがある。このような協定書の内容については、相手方である企業と交渉のうえで決定したことを定めることが予定されているため、定型約款には該当しないと考えられる。[8]損害保険の分野では、保険契約者数は機器メーカーなどの事業者であって多数性は認められないものの、被保険者として不特定多数のユーザーが付帯することとなるような場合もあるが、このような場合についても、不特定多数性は否定されず、定型取引に当たると指摘する見解もある。[9]

ウ 事業者間取引の契約書・約款のひな形(製品の原材料の供給契約等)
 事業者間取引の契約書・約款のひな形(製品の原材料の供給契約等)は、以下のとおり定型約款の要件を充たさないので、定型約款には該当しないことが通常であると考えられる。[10]

  1. ① 事業者間で行われる取引は、相手方の個性に着目したものも少なくなく、不特定多数要件を充たさないことが多いと考えられる。
  2. ② 契約内容が画一的である理由が単なる交渉力の格差によるものであるときには、契約内容が画一的であることは相手方にとっては合理的とはいえず、画一性要件を充たさないと考えられる。[11]
  3. ③ 契約内容を十分に吟味するのが通常であるといえる場合には、「契約の内容とすることを目的」としているとはいえず、目的要件を充たさないと考えられる。

エ 銀行取引約定書
 銀行取引約定書については、定型約款に該当すると考える見解と該当しないとする見解に分かれているが、以下のとおり、定型約款には該当しないものと考えられる。[12] [13]

  1. ① 銀行取引約定書は、定性・定量にわたる総合的な審査を経て締結されるものであることから相手方の個性に着目した取引であり、不特定多数要件を充たさないとする見解がある。銀行取引を開始するに当たっての審査は、前述した保険約款や消費者ローン等における審査と同等の画一的な基準によるものとはいえないであろう。[14]
  2. ② 銀行取引約定書は、原則として同一内容にて締結されるものの、一方で契約締結交渉過程において修正交渉の申入れがあることや、さらには実際に修正に応じることもあることから、画一性要件を欠くとする見解がある。具体的には、いわゆる治癒条項(当然失期事由や請求失期事由につき、例えば仮差押えであれば30日の治癒期間を設けてその間に治癒すれば当該事由は生じなかったことになるというもの)を入れて欲しいということが要求されることがあり、その他、危険負担を平等にして欲しいといった要求もあるようである。[15]また、銀行取引約定書も、事業者間取引における取引基本契約書のひな形として位置付けられるものと思われ、上記ウにおけるのと同様の考え方が当てはまるのが通常であると考えられる。すなわち、実際に修正されることがレアケースであったとしても、契約内容が画一的である理由が単なる交渉力の格差によるものであるときには、契約内容が画一的であることは相手方にとっては合理的とはいえない。銀行取引については、その内容が画一的であることが相手方にとって合理的であるという実態は想定し難いように思われる。
  3. ③ 顧客は、所要の説明を受けて、内容を確認したうえで、銀行取引約定書書面に記名押印を行うのが実務であり、契約内容を十分に吟味するのが通常であるといえるため、目的要件も欠くと考えられる。一般に、銀行は顧客向けに銀行取引約定書の逐条解説書を交付するようにしているともいわれている。[16]

オ フランチャイズ契約
 フランチャイズ契約についても、上記ウで述べた事業者間取引の契約書のひな形を同様に考えることができると思われるため、取引の実態にはよるものの、基本的には定型約款には該当しないものと考えられる。[17]

カ 工事請負契約約款(民間(旧四会)連合協定)・下請契約等
 工事請負契約約款(民間(旧四会)連合協定)・下請契約等も、上記ウで述べた事業者間取引の契約書のひな形を同様に考えることができると思われるため、定型約款には該当しないものと考えられる。[18]



[1] 浅田隆「定型約款」債権法研究会編『詳説改正債権法』(金融財政事情研究会、2017)403頁、中原利明「預金規定の現代的課題」金法2071号(2017)70頁。

[2] 山本・前掲第2回注[7] 48頁、山下友信「民法(債権関係)改正と保険――改正の意義,重要論点及び今後の保険実務」損害保険研究第77巻第2号(2015)178頁、中原・前掲注[1] 70頁。

[3] 衆議院法務委員会議事録第15号(平成28年12月9日)民事局長答弁、浅田・前掲注[1] 406~407頁。

[4] 衆議院法務委員会議事録第15号(平成28年12月9日)民事局長答弁では、取引の実態によるという留保はあるものの、住宅ローン契約書も定型約款に該当すると説明されている。浅田・前掲注[1] 406~407頁では、住宅ローン契約書は定型約款に該当しないと述べられている。

[5] 潮見・前掲第2回注[2] 39頁では、定型約款には該当しないひな型の例として不動産賃貸借契約の書式を挙げる。

[6] 最判平成17年12月16日判タ1200号127頁参照。

[7] 部会資料86-2・2頁参照。

[8] 山下・前掲注[2] 178頁。

[9] 木下孝治「定型約款」損保ジャパン日本興亜福祉財団叢書No.87「保険業法に関する研究会報告書 債権法改正と保険実務」(2016)85頁。

[10] 部会資料86-2・1頁において、本文①~③記載のような指摘がされている。また、衆議院法務委員会議事録第15号(平成28年12月9日)の民事局長答弁においても、「事業者間の取引において用いられる当事者の一方が準備した契約書のひな形は、一般的には定型約款の定義には該当しないと考えられます。」と説明されている。

[11] ただし、画一性要件によって、企業間取引を定型約款に該当しない解釈を導くことができるのかについては疑問が残ると指摘する見解もある(木下・前出注(26)86頁)。

[12] 浅田・前掲注[9] 405~406頁では、本文①~③記載と同様の指摘がされている。衆議院法務委員会議事録第15号(平成28年12月9日)民事局長答弁においても、取引の実態によるものの、銀行取引約定書は個別交渉して修正されることがあり、画一性要件を充たさないため定型約款には該当しないと説明されている。その他、井上聡「定型約款に関する立法提案」金法2014号(2015)5頁、鈴木仁史「改正監督指針等を踏まえた金融機関の反社対策(12)」金法2014号(2015)78頁も同旨。

[13] 定型約款に該当する方向での見解を述べるものとして、森下哲郎「団体による標準契約書等の作成」金融法務研究会報告書(26)「金融取引における約款等をめぐる法的諸問題」(2015)95頁、中原・前掲注[1] 70頁。

[14] 白石大=長谷川卓=松尾博憲「鼎談 10のテーマから学ぶ改正債権法の全体像」金法2072号(2017)32頁(松尾発言)では、「契約を締結するかどうかがある程度客観的な基準によって決まっていて、個性に着目した取引には当たらないから不特定多数の取引ではあるという理解になると考えていました。」と述べられている。

[15] 白石ほか・前掲注[14] 31頁(長谷川発言)。

[16] 白石ほか・前掲注[14] 32頁(長谷川発言)。

[17] 衆議院法務委員会議事録第15号(平成28年12月9日)民事局長答弁。

[18] なお、最判平成26年12月19日判タ1410号65頁の千葉裁判官補足意見においては、川崎市と共同企業体との間で一般競争入札の方法により締結された請負契約の約款について、一般的な約款の意義を示したうえで、その解釈手法につき、当事者の合理的意思解釈を行うべきであるとして、当該約款の解釈を示している。この補足意見の考え方によれば、工事請負約款は、従来の約款には当たるが、定型約款ではないということになる。

 

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