SH4448 シンガポール:会社法改正――バーチャル株主総会(上) 酒井嘉彦(2023/05/22)

組織法務株主総会

シンガポール:会社法改正――バーチャル株主総会(上)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 酒 井 嘉 彦

 

はじめに

 2023年2月、シンガポール会計企業規制庁は、株主総会のバーチャル開催[1]の明文化に関して、会社法の改正法案を公表するとともに意見募集および審議を行った。

 改正法案の主眼は、株主総会のバーチャル開催について明文で規定し、適用される規律や出席する株主の権利関係を明確化するところにある。株主総会の運営方法という多くのシンガポール会社が関心を寄せる事項に関係する法改正であるため、以下でその概要を紹介する[2]

 

改正の背景

 現行のシンガポール会社法において、株主総会(これには、毎年開催される定時株主総会の他、臨時株主総会や種類株主総会も含まれる。以下同じ。)の開催方法について明確な定めが置かれておらず、物理的な開催を念頭に置いた文言になっている条文もあった。

 しかしながら、会社によっては、定款に規定を置くことにより、電話会議またはテレビ会議等により株主総会を開催することも実務的に行われている。また、物理的な株主総会の開催を必ずしも要求しない諸外国の流れや、会社法制定以降のデジタル技術の発展を踏まえ、株主総会のバーチャル開催を正面から認めて会社法の関連規定を整備することのニーズが高まっていた[3]

 なお、今回の会社法の改正法案に係る意見募集について集まった意見は今後その概要が公表されるものとされており、それらの意見を踏まえて改正法案の内容が修正等される可能性がある。

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(さかい・よしひこ)

2011年から長島・大野・常松法律事務所にて勤務し、各種ファイナンス案件、不動産取引を中心に、企業法務全般に従事。2018年から2019年にかけて、Blake, Cassels & Graydon LLP(Toronto)に勤務。その後、2019 年より長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィスにて、主に東南アジア地域における日本企業の進出・投資案件を中心に、日系企業に関連する法律業務に広く関与している。京都大学法学部、京都大学法科大学院、University of California, Los Angeles, School of Law(LL.M.)卒業。

 

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