SH4665 金融庁、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン事例集」を公表 関端広輝/片山いずみ/木下岳人(2023/10/25)

取引法務倒産・事業再生

金融庁、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン事例集」を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 関 端 広 輝

弁護士 片 山 いずみ

弁護士 木 下 岳 人

 

1 はじめに

 2023年10月17日に、金融庁のウェブサイト[1]において「中小企業の事業再生等に関するガイドライン事例集」が公表された。中小企業の事業再生等に関するガイドライン(以下「本ガイドライン」という。)は、2022年4月15日から運用が開始された新たな準則型私的整理手続である。私的整理手続という性質上、実例に関する情報の流通が乏しい状況だっただけに、今回公表された事例集(以下「本事例集」という。)は、運用開始初年度における本ガイドラインの活用実績の実像を伺い知ることができる貴重な資料となっている。

 

2 背景

 本ガイドラインは、2022年3月4日に、経済産業省、金融庁、財務省が公表した「中小企業活性化パッケージ」の一角を構成するものであり、中小企業の事業再生フェーズにおける活用を意図して策定された。全部で3部から構成されており、前提となる目的(第一部)、関係当事者の基本的なあり方(第二部)、具体的な事業再生の準則(第三部)に加え、実務を行う上で留意すべきポイントがまとめられたQ&Aが公表されている[2]

 本ガイドラインと類似の準則型私的整理手続としては、中小企業活性化協議会による中小企業再生支援スキーム(いわゆる協議会スキーム)が以前から存在した。本ガイドラインと協議会スキームでは、支援対象者の範囲、手続遂行主体、費用、廃業型の私的整理手続の有無等に違いがあり[3]、本ガイドラインの運用開始によって、当事者は事案の特性や状況に応じて手続を柔軟に使い分けることが可能となっている。

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(せきばた・ひろき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1994年 上智大学法学部卒業1998年弁護士登録(東京弁護士会所属)。1998年 新東京法律事務所(その後、ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業))入所。2015年 事務所統合によりアンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。主な著書・論文等として、『ケースでわかる 実践「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」』(中央経済社、2022)〔共著〕、『多様化する事業再生』(商事法務、2017)〔共著〕、『FinTech法務ガイド』(商事法務、2017)〔編集・共著〕、『注釈破産法(上下巻)』(きんざい、2015)〔共著〕、『クロスボーダー事業再生 – ケース・スタディと海外最新実務』(商事法務、2015)〔共著〕ほか。

 

(かたやま・いずみ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2009年東京大学法学部卒業。2011年東京大学法科大学院修了。2014年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2015年 ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業)入所、事務所統合によりアンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。主な著書・論文等として、『実務で役立つ 世界各国の英文契約ガイドブック』(商事法務、2019)〔共著〕、『破産手続書式集〔新版〕』(慈学社出版、2018)〔共著〕ほか。

 

(きのした・たけと)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2015年弁護士登録(東京弁護士会、その後大阪弁護士会へ登録替え)。2020年University of Leeds(LL.M.)卒業。主な著書・論文等として、『ケースでわかる 実践「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」』(中央経済社、2022)〔共著〕。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

 


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用。

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