SH4730 公取委、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表 岩本圭矢(2023/12/12)

取引法務そのほか労働法競争法(独禁法)・下請法

公取委、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 岩 本 圭 矢

 

1 はじめに

 政府は、原油等のエネルギーコストや原材料価格の上昇を受けて、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」(令和3年12月27日内閣官房・消費者庁・厚生労働省・経済産業省・国土交通省・公正取引委員会)[1]を公表するなど、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁するための施策を進めていた。しかしながら、公正取引委員会が行った調査の結果、労務費は原材料費やエネルギーコストに比べて価格に転嫁されにくいことが判明しており、賃金の上昇は令和4年4月以降の物価上昇に追いついていない状況が続いている。

 そこで、今般、公正取引委員会は、日本の雇用の7割を占める中小企業が賃上げの原資を確保できることを目標として、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」[2](以下「本件指針」という。)を公表した。

 以下で説明するとおり、本件指針は、独占禁止法上の優越的地位の濫用[3]や下請法上の買いたたき[4](以下、これらを併せて「独占禁止法違反等」という。)に該当するか否かの判断基準として用いられると考えられるため、発注者は、本件指針において採るべきとされている行動に沿って価格交渉を行うよう留意する必要がある。

 そこで、本稿では、発注者が価格交渉において採るべきとされている行動の内容を中心に、実務上参考になる点を概説する。

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(いわもと・よしや)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2014年九州大学法学部卒業。2016年九州大学法科大学院終了。2018年裁判官に任官し、破産・執行・保全を含む民事事件等を担当。2023年弁護士登録。コーポレート分野、株主総会対応など、企業法務全般を取り扱う。

 

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902 年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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内閣官房・公取委、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html#roumuhitenka_head

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