SH4734 金融庁、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)の公表 藤田将貴/木下岳人(2023/12/14)

取引法務倒産・事業再生

金融庁、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」等の
一部改正(案)の公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 藤 田 将 貴

弁護士 木 下 岳 人

 

1 はじめに

 金融庁は、2023年11月27日付で、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」「主要行等向けの総合的な監督指針」、「系統金融機関向けの総合的な監督指針」および「漁協系統信用事業における総合的な監督指針」の一部改正案(以下あわせて「監督指針改正案」という。)を公表した[1]

 金融機関に対し、融資先への支援の軸足をコロナ禍の資金繰り支援から事業者の実情に応じた経営改善や事業再生支援に転換することを求めるため、所要の改正を行うものである。意見募集期間は2024年1月5日までとされており、2024年春に適用されることが見込まれている。

 

2 改正の背景

 2023年5月、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症に移行したことを受け、社会経済活動の正常化が進んでいる。一方で、原材料・エネルギー価格等の高騰や円安、人手不足の影響等により、厳しい環境に置かれた事業者が数多く存在している中で、2023年7月以降、新型コロナ対策として官民の金融機関において実施した実質無利子・無担保融資の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化しており、事業者の収益力強化や過剰債務の整理が喫緊の課題となっている。

 こうした中で、金融庁は、2023年11月27日、監督指針改正案を公表するとともに、金融機関の代表らとの意見交換会を開き、鈴木金融担当大臣は、「コロナ禍での資金繰り支援に注力した段階から、経営改善と事業再生支援に取り組む新しい段階へ移行する必要がある」と述べ、金融機関に対し、取引先への支援の軸足の移行を要請した[2]

 

3 監督指針改正案の内容

⑴ 概要

 金融庁の説明資料[3]によれば、監督指針改正案は、2つの柱から構成されている。

 第1の柱は、「一歩先を見据えた早め早めの対応の促進」であり、具体的には以下の内容が想定されている。

この記事はプレミアム向け有料記事です
続きはログインしてご覧ください

(ふじた・まさき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2003年早稲田大学法学部卒業。2006年京都大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年University of California, Berkeley(LLM)修了。2017年ニューヨーク州弁護士登録。大手総合商社法務部への出向経験を有する。事業再生分野、経済安全保障・通商(米国・英国・EUの経済制裁及び貿易管理を含む)、M&Aを中心に取り扱う。主な著書・論文:『ケースでわかる実践「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」』(共著)(中央経済社、2022)、『英文M&Aドラフティングの基礎』(共著)(金融財政事情研究会、2023)、「外資系企業の日本からの撤退が問題となる事案における実務上の留意点」(共著)事業再生と債権管理2022年7月号、「Restructuring and insolvency in Japan: Overview」(共著)(Practical Law – A Thomson Reuters Legal Solution、2021)、「米国の経済制裁の基礎知識と実務対応のポイント」(Business Lawyers(ウェブサイト)、2022)、「米国による懸念国向け半導体関連輸出規制の強化」(商事法務ポータル、2023)ほか多数。

 

(きのした・たけと)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2015年弁護士登録(東京弁護士会、その後大阪弁護士会へ登録替え)。2020年University of Leeds(LL.M.)卒業。主な著書・論文等として、『ケースでわかる 実践「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」』(中央経済社、2022)〔共著〕。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

タイトルとURLをコピーしました