◇商事法務メルマガ2000号記念◇商事法務メルマガ発行2000号に寄せて――商事法務メルマガの思い出から今後の期待まで 児島幸良/澁谷展由(2024/01/09)

そのほか

商事法務メルマガ発行2000号に寄せて
商事法務メルマガの思い出から今後の期待まで

弁護士 児 島 幸 良

弁護士 澁 谷 展 由

 

1 商事法務メルマガに対する高い支持の要因の考察

 このたび商事法務メルマガが発行2000号を迎えられるということで、心よりお祝い申し上げます。

⑴ 商事法務メルマガに対する高い支持

 商事法務メルマガは登録者数約2万4千人とのことです。

 これはメールによる日本の企業法務関係の情報メディアとしては最大級のものだと思われます。

 企業で法務をご担当されている方々、企業法務を専門とする弁護士などのかなりの割合が商事法務メルマガの登録をしているのではないでしょうか。

 その発行が2000号、約20年にわたって続いています。

 商事法務メルマガがこのように長期にわたって広い支持を得た第一の要因は、企業法務関係の情報が幅広く集約されたメールを毎週2回も無料で受け取ることができることにあると思います。第二の要因は、そこに含まれる情報が、①鮮度、②網羅性、③信頼性の三つの強みを兼ね備えたものであることにあるのではないでしょうか。

⑵ 情報の鮮度

 第一の強みである情報の鮮度については、土曜から火曜までの直近4日間と、水曜から金曜までの直近3日間という、極めてフレッシュな期間の情報にフォーカスして情報を収集しておられる点です。

 当然のことながら、鮮度の点で月間や旬刊の法律雑誌に対してすら優位にあります。これより速い法律関係情報となると、日刊新聞やネットニュースの記事だけではないでしょうか。

⑶ 情報の網羅性

 第二の強みである情報の網羅性は、日刊新聞やネットニュースの記事にすらない特長です。

 日刊新聞やネットニュースでは、メディアとしてのニュースバリューがあると考えられた情報は速報されますが、地味な情報やマイナーな情報は速報されません。

 また、日刊新聞やネットニュースの記者さんは企業法務の専門知識の豊富な方ばかりではありません。そのため、政治家や大物経済人が逮捕されたとか重要な法令が改正されたといったメディアとしてのニュースバリューが高いタイプの情報とは違って、官公庁の指針改定情報、行政処分情報、上場企業のリリースといったような、専門家以外には重要性が読み取りづらいタイプの情報については、たとえそれらが企業法務の専門家にとってはバリューが高い情報であっても、必ずしも速報してもらえない傾向が感じられます。

 この点、商事法務メルマガは「官公庁情報」では前号発行以降の各省庁の発信した企業法務に関係する法令、指針、処分などの情報が、「企業情報」では企業のリリースのうちガバナンスや法務に関する情報が紹介されるのはもちろんのこと、裁判動向、法案の提出・審議・成立・公布、パブリック・コメントの開始・結果など、必ずしも日刊新聞やネットニュースでは取り上げられていないような情報についてまで網羅されています。

⑷ 情報の信頼性

 第三の強みである情報の信頼性も、商事法務メルマガがこれほどの支持を集めるに至っている必須の要因でしょう。

 商事法務メルマガの最新情報ピックアップ作業は、商事法務の若手~中堅スタッフの方々が持ち回りで、各行政機関や企業等のウェブサイトをはじめとする第一次情報源を最重視しながら、手作業で情報収集と取捨選択を行っておられると聞いたことがあります。

 毎回合理的な量に収めつつ速報性を維持できる範囲内で、企業法務やガバナンスに関連するかどうかといった一貫した視点で情報を厳選し続けてくださることが、どれほどのご負担であるか、また、どれほど読者の方々のタイパが良く見落としの少ない日常業務を可能にしているか、考えるたびに感謝の気持ちでいっぱいです。

 しかも、商事法務メルマガの場合、行政の施策、企業のリリース、裁判の結果などが良いか悪いか、正しいか正しくないか、といった「評価」は記載されていません。このニュートラルさが、先ほど述べた鮮度、網羅性と合わさっていっそう情報の信頼性を高めていると考えます。

 無料の専門情報のメディアとしては、コンサル会社や各種事務所・団体その他のメルマガ、ニュースレターもあります。これらに立派な内容のものも多いのは当然ですが、発行主体によっては主観的記述部分や論点の取捨選択等がステマ的な色合いを帯びるリスクも一概に否定しきれないことが懸念されます。

 他方、上述のような過程を経て編集されている商事法務メルマガにはそういった懸念が基本的にありません。

 以上のような①鮮度、②網羅性、③信頼性の三つの強みを兼ね備えていることが、これほどの多くの登録者数と2000号もの発行回数とに結実したのだと思います。

 

2 澁谷の商事法務メルマガ2000号へ寄せるメッセージ
  (活用法と思い出)

 当職(澁谷)の職業人としての現在の主だった活動は、弁護士としてのクライアント企業への法的アドバイス、代理人活動、政府機関に対する法務面やルール制定に関する助言、企業の社外取締役としてガバナンスの一端を担う活動、法務・ガバナンスに関する書籍・論文の執筆や講演などです。

 これらの活動を行うためには、企業法務・ガバナンス・危機管理に関する最新情報を常にアップデートすることが不可欠です。

 情報収集の観点から、所属事務所が定期購読しているものとは別に、当職個人として現在、旬刊商事法務、月刊監査役、月刊ビジネス法務、日本経済新聞、日経クロステック、Wall Street Journal電子版、週刊文春電子版、月刊FACTAといった有料メディアを定期購読しています。

 情報をバリバリと咀嚼して自分の血肉にするためには、事務所で購読したものを皆で読むのではなく、身銭を切って個人で購読することが重要と考えています。

 他方、無料メディアである商事法務メルマガにも弁護士になって以来の十数年、ずっとお世話になっています。

 週2回、商事法務メルマガの「官公庁等情報」「企業等の動向」などを中心にざっと目を通す。自分の専門分野や関心分野と関係する情報でまだ押さえていなかった情報があればリンク先を読む。そのうえで深掘りして知りたいテーマがあった場合は関連する文献を読むなどリサーチをする。

 これを愚直かつ地道に十数年間ルーチンしたことが弁護士としての研鑽に非常に役に立ったと考えています。

 弁護士の情報収集はどうしても実際に対応している案件に関係した分野の調査だけになりがちな面があります。

 しかしそれだけでは仕事や専門分野が広がりません。

 商事法務メルマガに目を通していると、これまで自分が経験していなかったり、関心を持つに至っていなかったりした分野についても、官公庁や企業が具体的にどのような動きをしているかを気づかせてくれることが多々あります。

 筋トレやダイエットは全然続かないのですが、このルーチンだけは弁護士を廃業するまではずっと続けたいと思っていますので、商事法務メルマガもぜひ末永く発行し続けていただきたいと願っております。

 

3 児島の商事法務メルマガ2000号へ寄せるメッセージ
  (感謝と期待)

 児島の場合、澁谷弁護士同様にビジネス法務を専門分野とする弁護士として商事法務メルマガを愛用しているのみならず、京大・早稲田・同志社の3つのロースクールでビジネス法務分野での「❶調べて(リサーチ)、❷まとめて(レポート)、❸説明する(プレゼンテーション)」スキルに重点を置いた実践的講義を長年行っています。また、そのエッセンスの一部は経営法友会の「基礎知識総合講座〔国内編〕」でも毎年ご紹介させていただいています。それらの中で❶の段階に必須の情報源としてしばしばご紹介するのが商事法務メルマガであることは言うまでもありません。今や中堅実務家に成長したかつての教え子や受講生の多くが、商事法務メルマガのおかげで、前記の「タイパが良く見落としの少ない日常業務」の恩恵に浴しているようです。

 既に無料で十分すぎるくらいのメリットを享受しているので、これ以上何かをリクエストするのは欲張りすぎとは思います。ただ、めでたく大台の2000号を超えられたことでもあり、また、ビジネス法務の分野においてもデジタル化と生成AI活用がますます進んでいることでもあり、次のようなアップグレードをご検討いただけないでしょうか。これらが一部でも実現すれば、読者の「タイパが良く見落としの少ない日常業務」はもちろん、利用者数増加も更に加速するのではないかと期待しております。

  1. ❶「拾読(ひろいよみ)」への対応:予め読者が関心分野として登録しておいた記事だけが毎号配信される(又は太字又は赤字で表示される)ようにする。
  2. ❷「纏読(まとめよみ)」への対応:読者が過去の全ての記事の中から一定のカテゴリーに属する情報だけをキーワード又は生成AIでまとめて読めるようにする。
  3. ❸「耳読(みみどく)」への対応:リンクの文字列を表に出さずにクリックだけができるようにして、自動音読の際に自然言語部分だけが読み上げられるようにする。

 児島も澁谷も、長年の感謝とこれからへの期待の気持ちが溢れすぎて、長文となってしまいましたが、最後に、これまでバトンリレーや作業分担などを通じて商事法務メルマガに心血を注いでくださったすべてのご担当者に、改めて心からの感謝と敬意を表しつつ、拙文の締めくくりとさせていただきます。

以 上

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