SH4789 インドネシア:正副大統領候補者の資格要件に関する憲法裁判所の判決(3・完)――ジョコウィ大統領長男の出馬に道を拓く 前川陽一(2024/01/30)

そのほか

インドネシア:正副大統領候補者の資格要件に関する
憲法裁判所の判決(3・完)
――ジョコウィ大統領長男の出馬に道を拓く――

長島・大野・常松法律事務所

弁護士  前 川 陽 一

 

(承前)

⑵ 憲法裁判所の法律解釈権限に限界はないか

 違憲審査請求に対する判決の種類は、合憲判決、違憲判決、又は条件付きの違憲判決に分類できる。

 本判決は、本件年齢制限規定について「満40歳以上の者又は地方自治体の首長選挙その他の総選挙で選出された公職者若しくはそれらの経験者」と解釈されなければ違憲と判示していることから、形式的には条件付きの違憲判決の類型に属するものである。しかし、本判決により補充された解釈部分は、公職への選出とその経験という年齢制限とは一見無関係な事項に関するものであり、単なる条件付けというより、むしろ新たな規範を定立している。本判決は、三権分立を採用するインドネシア憲法の下で、憲法裁判所が判決を通じて実質的な立法作用を行うことが憲法適合的かという問題をはらんでいる。この点について、反対意見は、本件年齢制限規定といった公職への立候補に係る資格要件の見直しは、立法のメカニズムを通じて行うべきもので、そもそも憲法裁判所の判断の対象とすべきものではなかったと批判する。

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(まえかわ・よういち)

1998年東京大学法学部卒業。2006年東京大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2013年Northwestern University School of Law卒業(LL.M.)。2013年~2016年長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・デスク(Soemadipradja & Taher内)勤務。2019年~2023年長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。2024年~長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・オフィス(IM & Partners in association with Nagashima Ohno & Tsunematsu)勤務。

ジャカルタの業務提携先法律事務所に3年間駐在し、日本企業のインドネシア進出及び投資、進出後の労務問題、危機管理等に関して豊富な経験を有する。2019年から2023年までのシンガポール・オフィスでの執務を経て、2024年1月からジャカルタを拠点として、日本企業のインドネシアにおけるJV案件、M&A案件、不動産取引、既進出企業の現地での日々のオペレーションに伴う法務面のアドバイスを行っている。

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

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