SH4818 米国連邦取引委員会が「米国製」表示規則に基づいて提訴し、日系企業との間で約3億円の制裁金を課す等の内容で和解した事例 井上乾介/福井佑理/田村允(2024/02/19)

取引法務表示・広告規制

米国連邦取引委員会が「米国製」表示規則に基づいて提訴し、
日系企業との間で約3億円の制裁金を課す等の内容で和解した事例

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介

弁護士 福 井 佑 理

弁護士 田 村   允

 

1 はじめに 

 米国連邦取引委員会(Federal Trade Commission、以下「FTC」という。)は、2024年1月26日、トラクターなどの農業機械を生産するKubota North America Corporation (以下「対象企業」という。)が、「米国製」表示規則(Made in USA Labeling Rule)および連邦取引委員会法(以下「FTC法」という。)違反の件について、和解合意(stipulated order)の一部として200万ドル(約3億円)の制裁金を支払うと発表した[1]

 本稿では、FTCの「米国製」表示に対する姿勢と、2021年に発効した「米国製」表示規則に触れたうえで、本事例を紹介し、実務上の示唆について検討する。

 

2 FTCの「米国製」表示規則とその内容

⑴ 「米国製」表示規則の概要

 FTC法は、FTCに対し、米国の消費者を保護するため、米国を原産地とする表示に関して、「不公正または欺瞞的な行為または慣行」(unfair or deceptive acts or practices)を防止するためのルールを制定する権限を与えている[2]。1997年に発表されたFTCの米国を原産地とする主張に関するエンフォースメントポリシーについての声明(Enforcement Policy Statement on U.S. Origin Claims)は、FTC法の5条(a)により、広告や表示における「米国製」という表現についても、当然に「不公正または欺瞞的な行為または慣行」が禁じられるとした[3]。この声明のとおり、これまでもFTCは、無限定の「米国製」という表示にあたっては製品のすべてまたは実質的にすべての製造が米国内で行われている(all or virtually all made in the United States)ことにつき、証拠による裏付けを求めてきた[4]

 さらにFTCは、2021年7月1日に「米国製」表示規則を採択し、同規則は同年8月13日に発効した[5]

 本規則は、以下の条件が満たされない限り、製品にMade in USA(米国製)と表記することを禁じることを明文化した[6]

 

この記事はプレミアム向け有料記事です
続きはログインしてご覧ください

(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(ふくい・ゆり)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2007年一橋大学法学部卒業。国内出版社勤務。2013年東京大学法科大学院卒業。2014年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2020年King’s College London(LLM)修了。

 

(たむら・じょう)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2022年パリ政治学院公共政策大学院(Master in European Affairs)・シンガポール国立大学リークアンユー公共政策大学院(MPP)修了。2023年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

タイトルとURLをコピーしました