SH4834 水素社会推進法案とCCS事業法案 宇田川法也(2024/03/01)

組織法務サステナビリティ

水素社会推進法案とCCS事業法案

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 宇田川 法 也

 

1 はじめに

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素化が難しい分野においてもGXを推進していくことが不可欠とされ、鉄鋼・化学等の産業や、モビリティ、発電といった、脱炭素化が難しい分野においてGXを推進するため、2024年2月13日付にて、(1)低炭素水素等の供給・利用の促進を図ることを企図した「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案」(以下、「水素社会推進法案」という。)、および、(2)二酸化炭素の地中貯留(Carbon dioxide Capture and Storage)に関する事業環境の整備を企図した「二酸化炭素の貯留事業に関する法律案」(以下、「CCS事業法案」という。)が閣議決定された[1]

 これらの法律案については、今後国会で審議され、法律として制定されることが見込まれており、以下においてその概要を紹介する。

 

2 水素社会推進法案の概要

 2023年6月6日の再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議における水素基本戦略の改定を受けて、経済産業省において、総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 水素・アンモニア政策小委員会/資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会/産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 水素保安小委員会の合同会議(以下、「水素合同会議」という。)が実施され、2024年1月29日付「中間取りまとめ」(以下、「水素合同会議中間取りまとめ」という。)が公表されていた[2]。そこでは、水素社会推進のための支援制度として、価格差に着目した支援および拠点整備支援を設ける方向性が示されるとともに、水素保安の整備も行っていく方向性が示されていた。今般の水素社会推進法案はこれを踏まえて作成されたものといえる。

⑴ 対象:低炭素水素等

 水素社会推進法案においては、「低炭素水素等」を対象としている。「低炭素水素等」とは、(i)「低炭素」として、製造に伴って排出される二酸化炭素の量が一定の値以下であることなどの経済産業省令で定める要件に該当するものであり、かつ、(ii)「水素等」として、水素およびその化合物として経済産業法令で定めるものとされている(2条1項)。具体的な内容については経済産業省令を待つ必要があるが、炭素集約度に着目した定めとなっていること、および、水素以外にもアンモニア、合成メタン、合成燃料等の水素化合物も対象に含み得るものとされている点が着目される。

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(うだがわ・のりや)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2004年東京大学法学部卒業。2006年東京大学法科大学院卒業。2007年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2016年University of California, Los Angeles School of Law (LLM)修了。2017年ニューヨーク州弁護士登録。ストラクチャード・ファイナンス、プロジェクト・ファイナンス、PPP/PFI、ファンド取引等の金融取引を幅広く取り扱っており、資源・エネルギー分野においては、再生可能エネルギー発電事業に関するスキーム構築、契約交渉等に関与し、豊富な経験を有している。

 

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