特許出願非公開基本指針(案)の公表について
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 白 根 信 人
1 はじめに
2022年5月11日に成立した経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(以下「経済安全保障推進法」という。)により、特許出願の非公開に関する制度が創設され、経済安全保障推進法のうち特許出願の非公開制度に関する部分は2024年5月17日までに施行される予定である(附則1条5号)。
特許出願の非公開制度については、保全審査の対象となる特定の技術分野などの多くの事項について政令に委ねられているが、経済安全保障推進法では、政府が閣議決定により、特許出願の非公開制度に関して以下の4つの事項について基本指針を定めて公表することを求めている(65条1項ないし5項)。
- ① 特許出願の非公開に関する基本的な方向に関する事項
- ② 特定技術分野に関する基本的な事項
- ③ 保全指定に関する手続に関する事項
- ④ その他特許出願の非公開に関し必要な事項
基本指針については、経済安全保障推進法の上記の規定を受け、内閣官房および内閣府において検討が進められていたが、このたび、経済安全保障法制に関する有識者会議の第5回会議(2023年2月8日)の議事次第が公開される[1]とともに、2023年2月11日付で「特許法の出願公開の特例に関する措置、同法第三十六条第一項の規定による特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明に係る情報の適正管理その他公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明に係る情報の流出を防止するための措置に関する基本指針(案)」(以下「基本指針(案)」という。)が公表され[2]、パブリックコメントの募集が開始された[3]ため、以下、基本指針(案)の内容のうち、実務上も重要と思われる点について概観する。
2 特許出願の非公開に関する基本的な方向に関する事項
経済安全保障推進法では、明細書等に記載された発明について、内閣総理大臣が保全審査を行い、審査の結果、保全指定をすることとされているが、保全指定は、以下の要件を満たす場合にされることとされている(70条1項)。
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(しらね・のぶと)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2000年早稲田大学法学部卒業。2009年東京大学法科大学院卒業。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2017年コロンビア大学・ロースクール(LLM)修了。2019年ニューヨーク州弁護士登録。知的財産に関する紛争解決、ライセンス、共同開発などの知財取引についてクライアントに助言している。
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