人的資本経営の実践と情報開示の実務対応
第32回・完 人的資本の可視化の実践事例
日比谷タックス&ロー弁護士法人
弁護士 堀 田 陽 平
第3部 人的資本の可視化
第32回 人的資本の可視化の実践事例
【今回の狙い】 今回は、既になされている人的資本の可視化について、実際の開示事例をいくつかピックアップしてご紹介します。
【今回の主なターゲット】
|
1 はじめに
第24回で解説したとおり、人的資本の可視化の方法(媒体)としては、まず有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書といった法定開示書類があります。
また、その他、統合報告書やサスティナビリティレポート等の任意開示書類もあり、人的資本可視化指針では、これらを組み合わせて開示することを推奨しています。
図1 情報開示書類等の累計
出典:内閣官房「人的資本可視化指針」(2022年8月)43頁
2 有価証券報告書の開示例
① 経営戦略と人材戦略との連動が分かりやすい例
まず、経営戦略と人材戦略との連動が分かりやすく示されているとしては、株式会社日立製作所の例があります。
是非本文も併せてお読みいただければと思いますが、以下の図のように、「経営戦略・事業戦略」をまず示し、そこから求められる人材(人財)・組織の形を明確に示しています。その後の本文も、この点を軸に説明されており分かりやすいです。
開示例1 株式会社日立製作所の開示
出典:株式会社日立製作所「有価証券報告書」(第155期)26頁
この記事はプレミアム向け有料記事です
続きはログインしてご覧ください
(ほった・ようへい)
2016年弁護士登録(第69期。第二東京弁護士会)。2017年鳥飼総合法律事務所入所。
2018年7月現在の事務所へ移籍。2018年10月から経済産業省経済産業政策局産業人材政策室(当時。現在は「課」)に任期付き職員として着任。
経済産業省では、兼業・副業の推進、テレワークの推進、フリーランス政策等の柔軟な働き方に関する政策立案や、人材版伊藤レポートの策定等の人的資本経営の推進に関する政策立案等に従事。経済産業省から帰任後も人的資本経営の実践・開示に関するセミナーや寄稿を行う。