個人情報保護法の「3年ごと見直し」の中間整理の公表・
検討会の設置(前編)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 後 藤 未 来
弁護士 西 村 順一郎
1 はじめに
2023年11月から、個人情報保護委員会では、個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)のいわゆる「3年ごと見直し」に関して多岐にわたる議論が繰り広げられてきた。そして、2024年6月27日には、これらの議論や検討を踏まえた現時点における個人情報保護委員会の考え方として、個人情報保護法いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理(以下「中間整理」という。)が公表された[1][2]。
中間整理では、2023年11月15日、第261回個人情報保護委員会において公開された検討の方向性に沿って、主に個人の権利利益のより実質的な保護の在り方、実効性のある監視・監督の在り方およびデータ利活用に向けた取組に対する支援等の在り方に個別検討事項を分けた上で、考え方が示されている。
また、2024年7月24日には、第296回個人情報保護委員会において、事業者、個人それぞれに与える影響が大きく、今後とも一層の意見集約作業が必要だと考えられる論点について、様々なステークホルダーとの間で制度改正の必要性を含めて議論し、具体的な方向性を得ることを目的として、個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しに関する検討会(以下「検討会」という。)が設置された[3]。検討会においては、上記の個別検討事項の中で、特に議論が必要な項目が検討事項として挙げられている。
本稿(前編)および次稿(後編)では、これらの内容を2回に分けて概観する。
2 個人の権利利益のより実質的な保護の在り方
個人の権利利益のより実質的な保護の在り方の背景として、情報通信技術等の高度化に伴い、個人の権利利益が侵害されるリスクが高まっていることおよび個人情報が不適正に利用される事案の発生が指摘されている。
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(にしむら・じゅんいちろう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2016年東京大学法学部卒業。2018年東京大学法科大学院卒業。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主な取扱い分野は、知的財産法、個人情報保護法。2022年9月から2024年3月まで個人情報保護委員会事務局に出向。官民を問わず個人情報の取扱いにかかるルールの策定等に携わる。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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