育児・介護休業法の改正案を閣議決定、国会に提出(2)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 神 尾 有 香
弁護士 安 藤 翔
弁護士 津 田 桃 佳
1 はじめに
前回の記事では、2024年3月12日に閣議決定・国会提出された、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」という。)及び次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」という。)の一部を改正する法律案[1](以下「本改正案」という。)のうち、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充について解説した。本稿では、本改正案のうち、①育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化および②介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等に関する主な改正点[2]について解説する。
2 改正点の解説1
(育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化)
厚労省が公表した2023年7月31日付け「令和4年度雇用均等基本調査」[3]によると、2022年度の育児休業取得率は、女性が80.2%、男性が17.13%、短時間勤務制度の利用率は、正社員の女性が51.2%、正社員の男性が7.6%であり、いまだ男女間で、仕事と育児の両立支援制度の利用状況に大きな差が見られる。また、女性に育児負担が偏りがちであるという現状もある。このような現状の下、「こども未来戦略」[4]においては、男性の育休取得率を、2025年に50%、2030年に85%とする「男性育休の取得促進」等の政府目標が盛り込まれている[5]。
このような問題意識から、本改正案においては、次の【表1】のとおり、育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策が推進・強化されている。
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(かみお・ゆか)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2006年慶應義塾大学法学部卒業。2007年弁護士登録(第一東京)。2013年University of Pennsylvania Law School(LL.M., Certificate in Business and Law The Wharton School)修了。2014年ニューヨーク州弁護士登録。
労働案件を中心として、国内外の企業・組織に対し、訴訟対応、ハラスメント調査、コンプライアンス、その他人事・労務に関する諸問題についてのアドバイス等、幅広いリーガルサービスを提供しており、日本の労働法制に知見のない依頼者へのアドバイスも日常的に行っている。
(あんどう・しょう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2010年早稲田大学法学部卒業。2013年慶應義塾大学法科大学院卒業。2014年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2019年~2020年に米国ニューヨークの大手総合商社・コンプライアンス部門に出向。2022年University of Virginia(LL.M)卒業。経営法曹会議会員。使用者側の労働法務を中心に個人情報保護法等の領域も取り扱い、国内外のクライアントに対し、多数のアドバイスを行っている。
(つだ・ももか)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年東京大学法学部卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主に、労働案件、訴訟案件、コーポレート案件等に携わっている。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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