SH5361 「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」の閣議決定 宮川賢司/香川遼太郎(2025/03/18)

組織法務サステナビリティ

「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」の閣議決定

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 宮 川 賢 司

弁護士 香 川 遼太郎

 

1 はじめに

 2025年1月の米国トランプ政権の誕生により脱炭素(カーボンニュートラル)重視の考え方と化石燃料重視の考え方が再び交錯しており、その一例として、国内外の大手金融機関によるネットゼロ・バンキング・アライアンスからの脱退等のニュースが続いている。しかし、脱炭素(カーボンニュートラル)またはグリーントランスフォーメーション(以下「GX」という。)について、狭義の気候変動対策ではなく中長期的な産業構造の転換だと考えれば、脱炭素の世界的な潮流について短期的な停滞はあるものの、中長期的にはEUおよびわが国を中心としてその流れは止まらないものと思われる。より具体的に言えば、ヨーロッパを中心とするESG重視の投資家は、引き続き気候変動対策を含む日本企業のESG対策に注目するであろう。

 政府は、2025年2月25日、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「2025年GX推進法改正案」という。)を閣議決定している[1]。これは、2026年4月からEUにおける排出量取引市場類似の義務的な排出量取引制度の導入を目指すものであり、わが国におけるGXの潮流が止まらないことの一つの証左と評価することができる。

 グローバルなビジネスを展開する日本企業としては、現状の世界情勢の下においては、米国を中心とする化石燃料重視の規制と、EUおよび日本を中心とする脱炭素重視の規制を分けて、地域毎に対応することが現実的であると考えられる。そのような観点から、本稿では、日本企業のわが国における経済活動への影響という観点および企業の脱炭素投資を後押しするわが国のカーボン関連市場の展望という観点から、2025年GX推進法改正案を概説する。

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(みやがわ けんじ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル弁護士。1997年慶應義塾大学法学部卒業。2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2004年ロンドン大学(University College London)ロースクール(LL.M.)修了。2019年から慶應義塾大学非常勤講師(Legal Presentation and Negotiation)。国内外の金融取引、不動産取引、気候変動関連法務および電子署名等のデジタルトランスフォーメーション関連法務を専門とする。

 

(かがわ・りょうたろう)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。早稲田大学法学部卒業。2022年弁護士登録(東京弁護士会)。執筆として「非化石証書の制度と実務」(NBL2023年11月1日号)等。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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