SH3459 金融庁、第9回 金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会 宮川賢司(2021/01/26)

そのほか契約書作成・管理

金融庁、第9回 金融業界における書面・押印・対面手続の
見直しに向けた検討会

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 宮 川 賢 司

 

1 はじめに

 2020年以降の新型コロナウィルス感染症による在宅勤務の拡大を受けて、「書面・押印・対面手続の見直し」は「デジタル化の必要性」と接合され、金融業界のみならず日本社会における重要テーマの一つとなりつつある。このような流れを受けて、金融庁は、2020年12月25日に開催された上記検討会[1]において、「書面・押印・対面手続の見直しに向けた論点整理」[2](以下「本論点整理」という)を公表した。本稿では、他の業界においても重要な検討課題となっている「法人間で電子署名を用いて締結される電子契約の証拠力」という側面に絞って検討する。

 

2 本論点整理の評価

 「法人間で締結される電子契約の証拠力」という観点から、以下の2点が注目される。

 ⑴ 電子署名(事業者署名型)に対する前向きな評価

  電子署名及び認証業務に関する法律(以下「電子署名法」という)の適用可能性がある電子署名については複数のタイプがあるが、近時は、「事業者署名型」[3]が広く普及している[4]

  この「事業者署名型」に関する電子署名法の適用に関しては、法務省等により、2020年7月17日に「電子署名法2条に関するQ&A」[5](以下「2条Q&A」という)が公表され、さらに同年9月4日に「電子署名法3条についてのQ&A」[6](以下「3条Q&A」という)が公表され、電子署名法2条[7]および3条[8]の適用に関する一定の解決策が示されている。これらの2条Q&Aおよび3条Q&Aを踏まえ、本論点整理では、「事業者型署名」について、「ローカル署名型」[9]等と比べて、「法的効力の面(電子署名法第2条および第3条の適用の有無の面)では相違がないと言い得る環境が整備された」と結論付けており[10]、このような前向きな評価は金融業界における「事業者署名型」の利用拡大を後押しするものといえる。

この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください


(みやがわ・けんじ)

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業スペシャル・カウンセル。1997年慶應義塾大学法学部卒業。2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2004年ロンドン大学(University College London)ロースクール(LLM)修了。2019年から慶應義塾大学非常勤講師(Legal Presentation and Negotiation)。国内外の金融取引、不動産取引、気候変動関連法務および電子署名等のデジタルトランスフォーメーション関連法務を専門とする。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

タイトルとURLをコピーしました