金融庁、「サステナブルファイナンス有識者会議」の初会合を開催
――CGコード・SSコードにも言及、ソーシャルボンド発行の実務指針を検討する会議体も設置へ――
金融庁は1月21日、「サステナブルファイナンス有識者会議」(座長・水口剛高崎経済大副学長/同経済学部教授)の第1回会合を開催した。政府において脱炭素社会の実現に向け、2050年までに「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」いわゆる2050年カーボンニュートラルの実現を目指す表明がなされているなか、「日本企業は、そのための高い技術や潜在力を有しており、国内外の成長資金が、こうした企業の取組みに活用されるよう、金融機関や金融資本市場が適切に機能を発揮することが重要」であるとする観点から、課題・対応案を検討し、成長戦略に反映する。
2020年12月25日に設置およびその趣旨がアナウンスされていた。座長以外の大学関係のメンバーとして、高村ゆかり東京大学未来ビジョン研究センター教授。シンクタンク理事長、NPO法人運営委員なども参画する。ほか、東京証券取引所取締役専務執行役員など市場関係者に加え、全国銀行協会企画委員長、生命保険協会一般委員長、日本損害保険協会一般委員会委員長、日本経済団体連合会常務理事・SDGs本部長、JFEスチール株式会社専門主監(地球環境)といったかたちで金融界・産業界から広く招請されており、座長を含めて計17名で臨む。財務省・経済産業省・環境省・日本銀行をオブザーバーとし、事務局は金融庁総合政策局総合政策課が務める。
案として示されるテーマには(1)金融機関によるサステナブルファイナンスの推進、(2)金融資本市場を通じた投資家への投資機会の提供、(3)企業による気候関連開示の充実がある。(1)の狙いは「投資や融資を通じて、顧客企業の高い技術・潜在力が発揮されるよう支え、カーボンニュートラル社会への移行を促進」するものであるが、初会合当日の配付資料4「事務局参考資料」により掲出項目をみると「リスク管理」の視点が織り込まれ、①気候変動と金融リスク、②NGFS(Network for Greening the Financial System.気候リスクへの金融監督上の対応を検討するための中央銀行および金融監督当局の国際的なネットワークとして2017年12月に設置)、③NGFSが公表した成果(監督関連)など、④気候関連金融リスクに関する監督上の期待を公表する動き――が確認できる。
「カーボンニュートラル社会に貢献する投資機会とその収益を、幅広く国民へ提供」しようとする上記(2)を巡っては、同様に、①グリーン・タクソノミー(分類基準)の策定とこれに基づく開示、②サステナブルファイナンス・ファイナンスに関する国際連携プラットフォーム IPSF(International Platform on Sustainable Finance.サステナブルファイナンスに関する公的機関の連携・協調を強化する国際的ネットワークとして2019年10月に設置)、③トランジションファイナンスの考え方、④金融庁・経産省・環境省が主催する「トランジションファイナンス環境整備検討会」の開催、⑤トランジションファイナンス(ICMA(グリーンボンド原則等を策定している国際資本市場協会)重要な推奨開示要素)、⑥ソーシャルボンドと国内発行事例――が挙げられた。
上記(3)の開示の充実に関しては「企業のイノベーションに向けた取組みの『見える化』を進め、有用な技術やプロジェクトの資金調達を後押し」するとされており、(1)および(2)と同様に具体的な項目を掲げると、次のとおりである。①気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、②わが国のTCFD賛同機関数、③TCFD開示義務に関する各国の動向、④コーポレートガバナンス改革と開示(コーポレートガバナンス・コードおよびスチュワードシップ・コード)、⑤スチュワードシップ・コードにおけるサステナビリティに関する記載、⑥非財務情報の開示に係る国際的枠組みの例、⑦IFRS財団による市中協議文書の概要(サステナビリティ報告)、⑧記述情報の好事例。
また今後、有識者会議の下に「企業等がソーシャルボンドの発行に当たって参照できる実務的な指針の策定を検討する会議体」を設置するとされている。