SH3480 社債に利息制限法1条は適用されるか(最三小判令和3年1月26日) 粟田口太郎(2021/02/09)

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社債に利息制限法1条は適用されるか(最三小判令和3年1月26日)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 粟田口 太 郎

 

1 はじめに

 利息制限法1条は、「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約」について、その利息が、同条各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする旨を定めている。

 それでは、利息の定めのある社債に、利息制限法1条の規定は、適用されるのだろうか。

 この古くて新しい問題について、最高裁は、特段の事情がある場合を除き、社債には利息制限法1条の規定は適用されない旨の判断を示した[1]

 きわめて重要な判例である。

 

2 何が問題だったのか

 社債に利息制限法1条の適用があるか否かについては、古くから対立があり、その決着が長く望まれていた。

 利息制限法1条は、「金銭を目的とする消費貸借」の利息に関する規定であるから、社債は「金銭を目的とする消費貸借」に当たるのかが、まず問題となる。そこで、社債の法的性質は何であるかが論じられ、ある学説は、社債は有価証券の売買であるから利息制限法の適用はないとし、ある学説は、社債は実態をみれば諾成的な金銭消費貸借に近いものであるから利息制限法の適用があるとしてきた。

 古い通達は、社債には利息制限法の適用がない旨を述べており(昭和29年12月24日法務省民事甲第2625号法務省民事局長回答)、実務はこれに依拠してきたが、学説上は近年も肯定説が有力に展開され、さらに後述のとおり、下級審判例で肯否の判断が分かれるに至っていた。

 今般、この問題について、最高裁は、社債と金銭消費貸借との違いをふまえ、利息制限法の制度趣旨にも照らして、原則として利息制限法1条の適用を否定する立場を採用した。

 そこで、最高裁が判断した内容を見てみよう。

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(あわたぐち・たろう)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。1995年早稲田大学法学部卒業。2002年弁護士登録(東京弁護士会)。社債に関しては、わが国初のカバードボンド(デュアルリコース型の実質的な信託社債)発行案件、公募社債発行企業の事業再生ADR手続における買収及び社債リストラクチャリング案件、社債発行企業の法的整理案件などに携わる。事業再生・危機管理を含む企業法務について、会社法・金融法・倒産法の横断的な対処・検討を得意とし、2019年より商事法務研究会「動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会」委員として譲渡担保法制の立法論的検討に関与している。ABL協会理事・運営委員長、武蔵野大学大学院法学研究科(ビジネス法務専攻)特任教授、一橋大学大学院法学研究科(ビジネスロー専攻)非常勤講師。

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