◇SH3483◇フィリピン:小売業に関する外資規制の概要と改正動向(2) 坂下 大(2021/02/12)

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フィリピン:小売業に関する外資規制の概要と改正動向(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 坂 下   大

 

 前稿において紹介したとおり、現在、外国投資家がフィリピンでの小売業に参入するハードルは相当に高い。かかる規制の緩和への外国投資家の期待は高く、また外資誘致に積極的な姿勢を有すると評されるドゥテルテ大統領も、小売業に関する外資規制の緩和を重要な政策課題の1つとして捉えているように思われる。これは、2017年の大統領通達16号において、小売業を含む8つの事業分野における外資規制の緩和を早急に検討すべき旨の指示が大統領から関係当局になされている点にも顕れている。このような規制緩和の機運を受けて、2020年3月には小売自由化法の改正法案が下院で承認されるに至り、現在は上院において改正法案が審議されている。上院において審議中の改正法案(第1840号)の内容は、大要以下のとおりである。

  1. ・ 外資が出資するために必要な払込資本金額の要件は、現行の250万米ドル(約2億6,000万円)から30万米ドル(約3,100万円)に引下げ。但し、2つ以上の店舗を設ける場合には1店舗あたり15万米ドルの投資が必要。この最低資本金要件については5年毎に当局による適否の検討がなされる。
  2. ・ 前稿にて紹介した、外国投資家に求められる要件(主に、フィリピン国外で小売業の実績がある大規模な事業者を想定)、株式公開義務、国内調達義務は、いずれも撤廃。

 

 現行制度よりも少ない資金での参入が可能となることに加えて、これまで多くの投資家が充足困難であった「外国投資家に求められる要件」が撤廃される等、小売業の門戸を外資に大きく開放する内容の改正法案であるといえる。上記はあくまでも上院で審議中の法案であり、また下院で承認済みの法案(第59号)とも若干異なる内容が含まれていることから、今後さらに内容の変更が生じる可能性はあり得(なお、上院承認法案と下院承認法案の内容が異なる場合には、両院における内容調整のプロセスに進むが、本件に関しては下院は上院案を受け入れる姿勢である旨の報道もある。)、また今後の法案審議のスケジュールについて確たる予想をすることは難しいものの、現在の上院案に近い内容で法律として成立、施行されることとなれば、小売業に関する外資規制の大きな改正となるため、今後も同法案の国会審議の状況を注視する必要がある。

 


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(さかした・ゆたか)

2007年に長島・大野・常松法律事務所に入所し、クロスボーダー案件を含む多業種にわたるM&A、事業再生案件等に従事。2015年よりシンガポールを拠点とし、アジア各国におけるM&Aその他種々の企業法務に関するアドバイスを行っている。

慶應義塾大学法学部法律学科卒業、Duke University, The Fuqua School of Business卒業(MBA)。日本及び米国カリフォルニア州の弁護士資格を有する。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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