◇SH3520◇法務省民事局参事官室が民事訴訟制度のIT化で中間試案を公表、5月7日まで意見募集――法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会による取りまとめ、計8項目の規律に関しては複数案を併記 (2021/03/09)

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法務省民事局参事官室が民事訴訟制度のIT化で中間試案を公表、
5月7日まで意見募集

――法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会による取りまとめ、計8項目の規律に関しては複数案を併記――

 

 法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会(部会長・山本和彦一橋大学大学院教授)は2月19日、同日開催した第9回会議で「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」の取りまとめのための審議を行った。中間試案は2月26日に公表され、5月7日までの意見募集に付されている。併せて、中間試案の理解の一助とする趣旨で「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」が公表されている。

 民事訴訟法(IT化関係)部会は、2020年2月21日に開催された法制審議会総会(第186回会議)において法相から民事訴訟法制の見直しに関する諮問がなされ、これを受けて設置された。諮問は「近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに、時代に即して、民事訴訟制度をより一層、適正かつ迅速なものとし、国民に利用しやすくするという観点から、訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、情報通信技術を活用した口頭弁論期日の実現など民事訴訟制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」(諮問第111号)とするもので、第1回会議は同年6月19日に開かれた(審議経過を紹介するものとして、SH3256 法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会、第2回会議において訴えの提起及び送達に関する規定の見直しについて調査審議 石川裕彬(2020/07/30)SH3362 情報通信技術を活用した民事訴訟制度の見直しを審議する法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会 第4回会議 蛯原俊輔(2020/10/30)SH3407 法務省、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第5回会議(2020年11月6日開催) 日下部真治(2020/12/01)参照)。

 今般公表された中間試案は「第1 総論」から「第18 障害者に対する手続上の配慮」までにより構成され、全体で27ページ。同時公表の「補足説明」は法務省民事局参事官室および法務省大臣官房司法法制部の責任において作成しており、全123ページ建ての大部のものとなる。意見募集に際しては「IT化前後の民事訴訟事件の流れ」と題する2ページの資料も公表しており、IT化前後の民事訴訟のイメージを図示。IT化前における「書面で提出/書面を受領」「裁判所に出頭」といった各表記が、IT化後において「データアップロード/データダウンロード」「ウェブ会議」と置き換えられている点が特徴的である。

 中間試案の「第1 総論」は民事訴訟手続をIT化しようとする際に共通の課題となってくるものと捉えられ、その細目は「1 インターネットを用いてする申立て等によらなければならない場合」「2 インターネットを用いて裁判所のシステムにアップロードすることができる電磁的記録に係るファイル形式」「3 訴訟記録の電子化」の3項目である。たとえば上記1では、インターネットを用いて訴えの提起などの裁判所に対する申立てをすることができることを前提として、(1)インターネットを用いて申立てをしなければならない場合を設けるか否か、(2)設けるとして、その範囲をどうするかについて【甲案】【乙案】【丙案】の3つの考え方を示すこととした。インターネットを用いた申立てに多くの利点が見込まれる一方、インターネットを利用していない者の存在が現にあり、インターネットを利用することができない環境にある者の存在も想定しうるからである。わが国においては本人訴訟の割合が比較的高く、このようなユーザーへのサポート体制の構築が不可欠であることなども考慮された。

 各案を具体的にみると、要するに、【甲案】は民事裁判手続の利用者がインターネットを用いて申立てをすること(書面を用いた申立てをすることはできないこと)を原則としつつ、やむを得ない理由によりできないもの(インターネットの環境から物理的に遮断されている者による申立てなどが想定される)については書面等を用いた申立てをすることができることとする案である。

 【乙案】は「委任を受けた訴訟代理人があるとき」にはインターネットを用いた申立てをしなければならないが、一方、これ以外の場合にはインターネットを用いるか書面等を用いるかを任意に選択することができるとする案。委任を受けた訴訟代理人はインターネットを用いた申立てによらなければならず、本人訴訟などの場合には本人による選択を可能とする。

 この点、【丙案】は民事裁判手続を利用するすべての者が訴訟代理人の有無にかかわりなく、インターネットを用いるか書面等を用いるかを任意に選択することができるという案である。

 中間試案が、ある規律の提案に際して複数の案を格別併記することとしたのは①上述の第1・1のほか、②第6:新たな訴訟手続、③第7・2(4):書面による準備手続における協議、④第7・4:争点整理手続の在り方、⑤第11・2(3):新たな和解に代わる決定、⑥第12・2(3):利害関係のない第三者による閲覧、⑦第16・4(1):費用法2条所定の当事者等または代理人が期日に出頭するための旅費、日当および宿泊料、⑧第16・4(2):費用法2条所定の訴状その他の申立書等の書類の作成および提出の費用ーーの計8項目となる。

 なお、「ウェブ会議」に関する規律は「第5 口頭弁論」中の「1 ウェブ会議等を用いて行う口頭弁論の期日における手続」において「裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、口頭弁論の期日における手続を行うことができるものとする」とした。この場合、「裁判長がその期日における手続を行うために在席する場所以外の場所にいる者が、裁判長の許可を得ないで、その送受信された映像又は音声について、写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為をしたときの制裁を設ける」と、無断での写真の撮影等は禁止される(第5・2参照)。口頭弁論の公開については引き続き裁判長が手続を行うために在席する現実の法廷において行うこととし、裁判所がこれをインターネット中継等によって行うことを許容する規律も禁止する規律も設けないこととした(第5・3参照)。

 また、判決については「電磁的記録により作成」され、判決の言渡しは「電子判決書に基づいて」なされるとしている(第11・1(1)参照)。

 民事訴訟法(IT化関係)部会においては今後、中間試案に対して寄せられた意見を踏まえ、要綱案の取りまとめに向けて引き続き調査審議を行う予定である。

 

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