◇SH3553◇経産省・知的財産政策室が「外国公務員贈賄防止に関する研究会」報告書案、「外国公務員贈賄防止指針」改訂案を公表――4月22日まで意見募集、2019年OECD対日勧告を踏まえた明確化やアップデートのための追記など (2021/03/29)

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経産省・知的財産政策室が「外国公務員贈賄防止に関する研究会」報告書案、
「外国公務員贈賄防止指針」改訂案を公表

――4月22日まで意見募集、2019年OECD対日勧告を踏まえた明確化や
アップデートのための追記など――

 

 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室は3月23日、(A)外国公務員贈賄防止に関する研究会報告書(案) 、(B)外国公務員贈賄防止指針(改訂案)、(C)外国公務員贈賄防止指針のてびき(案)を公表した。4月22日まで意見募集を行う。

 上記(A)の報告書案は2020年1月7日に初会合を開催した研究会の検討内容を取りまとめたもので、研究会の委員は座長(佐伯仁志中央大学法務研究科教授。就任時は東京大学大学院法学政治学研究科教授)を始めとする大学教授3名、弁護士3名、労働組合関係者1名、複数の企業の法務・総務関係者など計11名で構成。オブザーバーとして法務省刑事局・外務省・警察庁・中小企業庁・消費者庁に加え、日本貿易振興機構・国際協力機構などのほか、主な経済団体も加わった。公表資料として確認できる第4回会合(同年7月17日開催)までの議事要旨によると、「外国公務員贈賄防止指針の改訂」を議題として初会合を開催。第2回会合(2月21日開催)では「外国公務員贈賄罪の制裁等」を議題に追加した。第3回会合(6月10日開催)からは「外国公務員贈賄防止指針のてびきについて」「外国公務員贈賄防止に関する研究会の報告書(案)について」の検討を開始している。

 なお、外国公務員贈賄罪については上記(C)の資料において「国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、外国公務員等に対して直接または第三者を通して、金銭等を渡したり約束をしたりすると、犯罪となります(不正競争防止法違反)」と説明がある。同資料は法定刑から事例・対処方法、企業等における取組みをまでを図をまじえながら簡潔に紹介したものとなっている。

 今般「令和3年3月23日版」として公表された上記(A)報告書案によると、これまでもわが国の外国公務員贈賄罪への取組みに対してはOECD贈賄作業部会で行われる相互審査において指摘がなされてきたところ、2019年に受けたフェーズ4審査を踏まえて同年7月に対日審査報告書が公表され、「外国公務員贈賄防止指針の明確化」「罰金額の引上げ」など延べ17にわたる勧告がなされた。研究会はこれを受け「外国公務員贈賄防止指針の改訂、財産的制裁、公訴時効期間、外国人従業員の管轄権、及び、外国公務員贈賄防止指針のてびきの策定について議論を行った」とされる。

 具体的な検討箇所については、まず(1)これまでの経緯および上記勧告を踏まえた外国公務員贈賄防止指針の改訂とし、次の4点が挙げられた。①外国公務員贈賄防止指針(平成29年9月改訂版。以下同様)20頁:条約コメンタリー8の訳文を正しく修正、②21頁:「自己に有利な形」が本人のみならず属する企業等も含むことの明確化、③22頁:企業への経済的損害が贈賄を正当化することはないことの明確化、④いわゆるスモール・ファシリテーション・ペイメント(通常の行政サービスに係る手続の円滑化のための少額の支払い。SFP)の定義の明確化、企業への禁止の奨励、不正競争防止法における取扱いの明確化。

 また(2)前回改訂からの情報更新の観点より、次の点の追記などが検討されたという。①社内規程の策定:エージェント等の第三者を通じた間接的な贈賄リスクが増していることを踏まえ、第三者の起用にあたって契約前に行うデュー・デリジェンスの記載の追記、②子会社の防止体制に対する親会社の支援のあり方:M&Aを通じて海外企業を子会社とする例が増え、これに伴って贈賄リスクも増えていることからM&Aの留意点に係る記載の追記、③有事における対応のあり方:捜査機関への通報や自首と併せて検察官に対する合意制度(2018年6月施行)の適用の申入れを検討することの追記、④「第3章 不正競争防止法における処罰対象範囲について」の段落構成の整理、⑤平成29年改訂以降の外国公務員贈賄罪の適用事例の追加、⑥その他国内における関連施策:上記・合意制度の説明の追記(以上、報告書案の第2章「2.外国公務員贈賄防止指針の改訂に関する議論及び修正点」参照)。

 報告書案ではまた(3)財産的制裁、(4)公訴時効期間、(5)外国人従業員の管轄権について、結果として現行方針の維持につながる研究会の検討状況を「議論のまとめ」として紹介(以上、報告書案の「第3章 罰則等について」参照)。(6)上記(C)てびきの策定については「中小企業への周知を促進するために、中小企業用に外国公務員贈賄防止指針とパンフレットの間の位置づけとなる資料を作成する」ものと説明されている(報告書案の「第4章 外国公務員贈賄防止指針のてびきについて」参照)。

 上記(1)~(5)に関する検討成果が上記(B)外国公務員贈賄防止指針(改訂案)として具体化されている。公表に際しては脚注など細部を含めた「新旧対照表」も示されており、併せて適宜参考とされたい。

 

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