SH3626 「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究」報告書を公表 山内真之(2021/05/19)

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「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究」
報告書を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士  山 内 真 之

 

1 はじめに

 2021年4月21日に、特許庁は「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究」について、報告書を公表した。

https://www.jpo.go.jp/support/general/chizai-jobobunseki-report.html

 同報告書は、わが国におけるIPランドスケープの取組みの現状を可視化し広く共有することを目的に、関連するデータを集約するとともに、すでに試行錯誤を繰り返しながらIPランドスケープを実施している企業の事例等を調査の結果をまとめたものである。

 調査内容は、

 Ⅰ. 公開情報調査
 Ⅱ. アンケート調査
 Ⅲ. ヒアリング調査
 Ⅳ. 委員会による検討

から構成されている。

 調査研究報告書は本文のみでも151頁、資料を含めると350頁に及ぶ大部なものであるが、ここでは、その概要に限って紹介し、実務的観点から若干のコメントを加える。

 

2 調査研究報告書の概要

 ⑴ IPランドスケープの定義・目的

 本調査研究において、「IPランドスケープ」とは、「経営戦略又は事業戦略の立案に際し、①経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、②その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること」と定義される。

 IPランドスケープ導入時における活用場面の想定に関するアンケート回答としては、「経営戦略・事業戦略の策定」の選択が最も多く、「新たな研究開発テーマの検討」や、「新たな製品・商品・サービスの検討」、「既存事業の市場優位性の向上」、「新規事業分野の探索」等が続いた。

 そして、IPランドスケープの導入後に得られた成果については、活用場面の想定と傾向は類似するものの、「年間計画や中期計画の検討」が相対的に増加し、「新規事業分野の決定」が減少していた。

 報告書においては、ヒアリング調査を通して得られた印象として、「M&Aや協業先の発掘等、現在展開が拡大しているオープンイノベーションに関わるIP ランドスケープの活用が有効に機能するとの声が複数者から聴取でき、……アンケート調査結果以上にこれらの活用への期待が高いという印象を受けた。」と指摘されている。

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(やまのうち・まさゆき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2002年慶應義塾大学理工学部卒業。2004年慶應義塾大学大学院理工学研究科卒業。2007年東京大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2013年スタンフォード・ロースクール(LLM)修了。主に知的財産関連業務及びライフサイエンスをはじめとする先端技術に関する法律業務に携わっており、医薬関係を中心としつつ、農薬、半導体、液晶表示技術、印刷技術、3Dプリント技術、通信関連技術、ゲーム技術を含めた種々の技術分野の侵害訴訟案件・ライセンス交渉案件・共同開発案件・技術移転案件を取り扱っている。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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