SH4702 我が国初となる「CCS事業法」案 大槻由昭(2023/11/24)

組織法務サステナビリティ

我が国初となる「CCS事業法」案

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 大 槻 由 昭

 

 既報のとおり、わが国でもCCS(二酸化炭素の回収・地中等への貯留)の事業化に関して政府の検討会でも検討されてきているところ、近時、CCS事業にかかる法制化の動きが加速されている。直近では、本年11月6日に、経済産業省 総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会カーボンマネジメント小委員会・産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 産業保安基本制度小委員会の合同会議が開催され、CCSの実施にかかるわが国で初となる法律として「CCS事業法」(仮称)の具体化に向けた検討が開始されている[1]。本稿では、かかる「CCS事業法案」構想について、すでに公表されている政府資料をもとに、CCS事業にかかる若干の前提となる情報を加えつつ、一定の考察を加えるものである。

 

1 はじめに

 CCSは、排出された二酸化炭素(CO₂)を分離回収し、地中または海底下の貯留層に貯留する技術であり、現行の第6次エネルギー基本計画でも、カーボンニュートラル社会の実現のカギとして位置づけられている。CCSは、特にわが国において2050年カーボンニュートラルの達成のために実現することが必須の技術であるとされる。そのため、第6次エネルギー基本計画では、長期のロードマップを策定した上で、事業化に向けた環境整備等を検討するとされた。これを受けて、2022年1月に資源エネルギー庁において「CCS長期ロードマップ検討会」が組織され、今年(2023年)3月10日に、「CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ」と題する報告書が、すでに公表済みである[2]。かかる「CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ」の別冊として、「CCS事業法(仮称)のあり方について」(以下「ロードマップ」という。)が、合わせて公表済みである[3]。これによれば、CCS事業法の立法の必要性(いわゆる立法事実)として、以下の記載がある:

CCUSを国策として進め、二酸化炭素の大気中への放散を抑制するという国の公共的課題を解決するためには、地下という不確実性のある区域において二酸化炭素を貯留することが不可避であり、地下構造に習熟する民間事業者の技術を、国が事業化を支援し、最大限活用する必要がある。このため、国による監督の下で、一定の条件、一定の区域(貯留区)について、二酸化炭素の貯留が可能となる地下構造(貯留層)を独占排他的に使用し、二酸化炭素を貯留する権利を「貯留事業権」として創設するとともに、長期間にわたる事業の安定操業と資金調達の円滑化の観点から、これを物権としてみなし、二酸化炭素の貯留事業を円滑化する必要がある。

 そして、上記の立法事実を踏まえて、CCS事業を実施するための法的権利としての「貯留事業権(貯留区)」の新設が提言されている[4]

 特に、経済産業省 総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会カーボンマネジメント小委員会・産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 産業保安基本制度小委員会の合同会議の事務局資料のうち「CCSに係る制度的措置について(案)」と題する書面[5](以下「事務局資料」という。)に、今後の検討課題(論点)がわかりやすく整理されており、とても参考となる。

 以上の「CCS事業法」の構想について、当職らの私見ではあるが、以下に一定の考察を加える。

 

2 ロードマップの「CCS事業法」構想について

⑴ 「貯留事業権」の位置付けについて – 鉱業権との相違

 まず、ロードマップおよび事務局資料でも想定されているとおり、また、諸外国(とくに、CCS法制が進んでいるとされるEUや英国、ノルウェー、豪州など)の先例を見れば明らかなとおり、CCS事業のうち貯留事業を実施する権利としての「貯留事業権」については、鉱業法に基づく鉱業権に類似の法制によることが合理的なアプローチであると思料される。

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(おおつき・よしあき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャルカウンセル。2004年東京大学法学部卒業。同年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2011年 南カリフォルニア大学(USC)・ロースクール(LLM)修了。2012年 ニューヨーク州弁護士登録。主に資源エネルギー分野を中心に取り扱っており、とりわけ、外資系の鉱山会社による日本での鉱業権(試掘権及び採掘権)の取得案件や、それに関連するM&A取引等の案件を多く取り扱っている。また、LNG(液化天然ガス)を海外から調達する取引をはじめ、電力ガス会社が関与するM&A取引等についても有数の実績を有する。独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の案件等に多く関与しており、資源の上流開発案件についての知見を多く有している。

 

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