SH3805 消費者庁、消費者裁判手続特例法等に関する検討会による報告書を公表 左髙健一/早川晃司(2021/10/26)

取引法務消費者法

消費者庁、消費者裁判手続特例法等に
関する検討会による報告書を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 左 髙 健 一

弁護士 早 川 晃 司

 

1 報告書作成の背景

 消費者庁が設置した消費者裁判手続特例法等に関する検討会は、2021年10月に報告書を公表した。本報告書は、同年10月8日から11月7日まで、意見募集(パブリック・コメント)に付されている。

 消費者裁判手続特例法(正式には、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律)が設けた訴訟制度は、下記の通り、内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体が、消費者契約に関して被害を受けた被害者(消費者)のために、集団的な損害の回復を求めること、2段階の手続を経ることなどを特色とする制度(本制度)であり、2016年10月1日に施行された。

 

*消費者庁作成パンフレット「守ります。あなたの財産 消費者団体訴訟制度」より引用

 

 第1段階(共通義務確認訴訟手続)では、特定適格消費者団体が、事業者を相手取り、事業者が被害者(消費者)に、消費者契約に関する損害賠償義務などの金銭支払義務を負うことの確認を求める訴訟を提起する。そして、第1段階において、事業者に対する勝訴判決が確定した場合には、第2段階に移行する(第1段階の過程で、和解が成立する場合もある。)。

 第2段階(簡易確定手続)では、個々の被害者(消費者)の債権額を確定する手続が行われる。被害者(消費者)は、特定適格消費者団体による呼び掛けに応じる形で、同団体に債権届出の授権をすることができ、それを受けた同団体が債権届出を行う。そして、債権額が確定すると、金銭が特定適格消費者団体に対して交付され、そこから同団体が要した費用および報酬を差し引いた金額が個々の被害者(消費者)に対して交付される。

 本制度の施行当初は、米国等の諸外国で行われているクラス・アクションに類似する制度として、「日本版クラス・アクション」と呼ばれることもあったが、その内実は大きく異なる。たとえば、米国のクラス・アクションとは次のような差異がある。

この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください


(さだか・けんいち)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。1990年東京大学法学部卒業。1992年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主に国内外の訴訟、商事仲裁、その他紛争解決案件を手がける訴訟弁護士として活躍している。

 

(はやかわ・こうじ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2011年東京大学法学部卒業。2013年東京大学法科大学院修了。2014年弁護士登録(東京弁護士会)。2020年Queen Mary University of London(LLM)修了。訴訟・仲裁その他の紛争解決案件を主要な業務分野とする。英国等での留学・研修経験を活かし、専門性の高い海事・物流案件も取り扱っている。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

タイトルとURLをコピーしました