◇SH3815◇新生銀行、SBIホールディングスらによる公開買付けに対して賛同のための条件を提示する反対意見を表明――買収防衛策に係る株主意思確認総会の3営業日前までの要件充足で対抗措置発動せず (2021/11/04)

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新生銀行、SBIホールディングスらによる公開買付けに対して
賛同のための条件を提示する反対意見を表明

――買収防衛策に係る株主意思確認総会の3営業日前までの要件充足で対抗措置発動せず――

 

 新生銀行(本店・東京都中央区、東証第一部上場)は10月21日、SBIホールディングス(本店・東京都港区、東証第一部上場。以下「SBIHD」という)らが9月10日に開始した新生銀行普通株式の公開買付けについて反対の意見を表明すると発表した。併せて(a)本公開買付けを買付予定数の上限のない公開買付けとすることなど、(b)本公開買付価格を一定の価格水準まで引き上げること(以下「賛同要件」という)を条件とし、これらが11月19日までに満たされた場合には賛同の意見を表明するとしている。

 本公開買付けはSBIHDが9月9日、同社の完全子会社であるSBI地銀ホールディングス(本店・東京都港区。以下「SBI地銀HD」という)を公開買付者、9月10日を公開買付開始公告日とし、9月10日~10月25日の30営業日、買付予定数の上限を58,211,300株として1株当たり2,000円(前日の終値1,453円に対して37.65%のプレミアム)で買い付けることをSBI地銀HD側とともに決定、公表したものである。公表時点においてSBIHDは42,737,700株(所有割合20.32%、以下同様)、SBI地銀HDは100株(0.00%)を所有しており、両者合わせて42,737,800株(20.32%)。買付予定数の上限設定により、本公開買付けの成立後にSBIHDらが所有することとなるのは最大で100,949,100株(48.00%)にとどまり、引き続き東証第一部における上場が維持される見込みである。なお、3月31日現在の大株主として、預金保険機構が26,912,000株、整理回収機構が20,000,000株を所有する。

 SBIHDらによると「①対象者の主要株主としての立場から、対象者の業績を改善し、企業価値を回復・向上すべく、適切な施策を早期に実施することが急務であると判断するに至り、②かかる施策の早期実施のためには、(i)対象者株式の所有割合を高めて対象者をSBIHDの連結子会社とし、現状の所有割合では実現できていない対象者との真摯な議論を通じて対象者グループとの事業上の提携関係を構築・強化する必要があるとともに、(ii)対象者の役員の全部又は一部を変更し、最適な役員体制を実現することを可能とする議決権を確保する必要があると判断し」たなどと本公開買付けに至った理由を表明するとともに、公開買付けの成立後の経営方針として役員構成の変更について言及し「SBIHDらからも独立した独立社外取締役を対象者の取締役総数の3分の1以上にする」として具体的な取締役候補者名を複数挙げるなどしている。

 新生銀行は本発表を受けて9月9日のうちに「事前の連絡を受けておらず、本公開買付けは当行取締役会の賛同を得て実施されたものではありません」と発表。9月17日には「当行は、本公開買付けは当行の企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化を妨げるものであるおそれが否定できないと考えております」などと表明するほか、SBI地銀HDが提出した9月10日付公開買付届出書の記載を踏まえて反論。同日開催の取締役会で「会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」を決定するとともに、「本基本方針に照らして不適切な者によって当行の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み(本プラン)」につき、いわゆる買収防衛策として、すでに具体化している本公開買付けを含む大量買付行為への対応を主たる目的とし、導入の決議を行ったと発表した。

 同日公表のリリース「SBI地銀ホールディングス株式会社による当行株式に対する公開買付けに関する意見表明(留保)のお知らせ」においても「本公開買付けは、当行の総株主の議決権の過半数を取得することなく投資額を節減し、実質的に当行の経営を支配しようとする提案にほかならない」などと指摘、「本公開買付けを含む大量買付行為が当行の企業価値やその価値の源泉に対してどのような影響を及ぼし得るかについて、株主の皆様が適切なご判断を下すための情報と熟慮のための時間を確保するため、かかる大量買付行為は、当行取締役会の定める一定の手続に基づいてなされる必要がある」と判断したものである。本リリースにおいて新生銀行は、SBIHDらに対し、同日付の書簡により、9月30日の正午を期限として、公開買付期間の終了日を12月8日(法令上認められる最長の公開買付期間である60営業日に当たる日)まで延長することを内容とする公開買付届出書の訂正届出書の提出を要請したと明らかにした。「公開買付者に対する質問」も併せて公表している。

 本プランによる対抗措置は、株主意思確認総会による承認が得られた場合かつ大量買付者が大量買付行為を撤回しない場合(公開買付者が本公開買付けを撤回しない場合)にのみ発動される。大量買付者等が本プラン所定の手続を遵守せず、株主意思確認総会を開催する以前に大量買付行為を実行しようとする場合には(公開買付けの期間を延長し60営業日に延長するようにとの新生銀行からの要請に応じず、株主意思確認総会の開催前に本公開買付けを終了させる場合を含む)、新生銀行は「やむを得ず取締役会決議により新株予約権の無償株主割当てを先行して行う予定ですが、その場合であっても、当行株式を対価とする当該新株予約権の強制取得(すなわち、非適格者の保有する当行議決権の希釈化)については、株主意思確認総会による承認が得られた場合にのみ発動されます。株主意思確認総会による承認が得られなかった場合には、当行は、当該新株予約権の全部を無償で強制取得する予定であり、その場合、希釈化は生じません」(編注・括弧内について一部略。以下同様)と説明。

 具体的なスキームとしては「一般株主と大量買付者等とで行使条件及び取得条項が異なる甲種新株予約権の、全株主への無償割当てを行います。全株主に対して取得条項を発動し、一般株主には普通株式、大量買付者等には乙種新株予約権を対価として交付」するもので、もって「本プランに従って甲種新株予約権の無償株主割当てがなされ、当行による甲種新株予約権の取得と引換えに、非適格者以外の株主の皆様に対して当行株式が交付される場合には、非適格者の有する当行株式の議決権割合は、一定程度希釈化される」ことになる。乙種新株予約権については、さらに「大量買付者等が大量買付行為を実施しないことを誓約し、大量買付者等の議決権割合が20%を下回った場合に限り、大量買付者等の議決権割合が20%に満たない範囲でのみ行使可能」となることから「大量買付者等が権利行使を行う場合には、大量買付者等の議決権割合が20%近くまで戻る可能性があ」るとする説明がなされている。

 新生銀行はこれらの発表と同日の9月17日、株主意思確認総会となる臨時株主総会で議決権を行使することができる株主、甲種新株予約権の無償割当てを受ける株主を確定するための基準日を10月13日に設定したと発表。新株予約権無償割当てに係る発行登録については9月22日、同日付で行ったとした。

 SBIHDらにおいては9月24日、新生銀行から9月17日付で受領した「公開買付期間終了日の延長の要請」と題する書面を巡り、これに対する回答書および質問を送付したとし、公表した。公開買付期間の延長について回答書では「貴行が当社らに公開買付期間の延長を行うための期限として要請してきた2021年9月30日の2営業日前である2021年9月28日までに、貴行において、貴行の全ての株主の保護と株主利益に資する以下の4つの項目の遵守を貴行プレスリリースにて公表した場合においては、公開買付期間を2021年11月24日まで(50営業日まで)延長することといたします」などと提案し、当該「4つの項目」の筆頭には「貴行株主の皆様が当社らによる本公開買付けに応募するかを判断する上で重要性の低い追加質問等は行わず、いたずらに検討の期間を延ばさないこと」を挙げるものである。

 新生銀行は9月27日、これを「新たな提案であり、当行の延長要請に同意するものではありません」として、公開買付期間を60営業日まで延長する要請を引き続き維持すると表明。SBIHDらの3件の質問に対しては「公開買付者らは一方的に短期間の回答期限を設定していますが、株主の皆様によるご検討・ご判断に資するという観点からは、公開買付けにおける手続き外で回答を行うのではなく、公開買付けにおける法定の手続に従い公開買付者から当行の質問に対する回答を受領した後、その内容とも合わせ、当行取締役会が本公開買付けを検討・評価し最終的な意見を取りまとめるにあたって、貴重なご指摘として参考にさせていただきます」と述べた。

 SBIHDらは9月28日、対質問回答報告書を提出したとして公表。リリースでは、60営業日まで延長を求める要請に対し「当該要請に応じるか否かを追って回答する」としつつ、上記「4つの項目」の遵守を要請するとともに、SBIHDらの質問についても「対象者の現経営陣による企業価値向上策とSBIHDらが提供する施策のいずれが対象者の全てのステークホルダーの皆様にとって望ましいものであるかを対象者の株主の皆様に適切にご判断いただく上で必須の情報」であるとし、当初要請どおり10月1日正午を目途に回答するよう「引き続き対象者に強く要請する」などとした。

 翌9月29日には、公開買付期間の終了日を12月8日まで延長することを同日付で決定したと発表。「対象者らが一方的に提示した期限内に当社らが公開買付期間の延長に応じないことを以て、対象者によって買収防衛策に基づく対抗措置の一部が暫定的に発動される可能性がある」などとして「対象者の株主をはじめとしたステークホルダーの皆様に無用な混乱を生じさせないためにも、止むを得ず」新生銀行の要請どおり延長するとするもので、一方では上記「質問」につき、新生銀行において10月1日正午を目途とした回答がなされるよう引き続き強く要請していくなどとした。

 新生銀行は9月30日、SBI地銀HDにより9月30日付でなされた買付け等の期間の変更を案内するなかで、「質問」につき重ねて「公開買付けにおける手続き外で回答を行うのではなく、公開買付者が提出した対質問回答報告書の内容とも合わせ……参考にさせていただきます」とする表明を行った。

 SBIHDらは10月1日、「当社らからの質問項目に対する株式会社新生銀行(証券コード:8303)からの回答状況に関するお知らせ 」と題するリリースを発表。「当社らが要請した期限内にご回答をいただけなかったことについては合理的な理由を見出しがたく、かかる対象者の姿勢は、対象者の株主の皆様のために十分な時間と情報を確保すべく公開買付期間を延長することを要請してきた対象者自身の立場と矛盾するものと言わざるを得ません」と指摘しつつ可及的速やかに回答するよう求めるとともに、これまでの要請を継続。なかでも「対象者が買収防衛策に係る対抗措置を発動する場合に割り当てられる甲種新株予約権及び乙種新株予約権1個あたりの目的となる株式の数」については、SBIHDらだけでなく株主の判断上も重要な情報であるとして「明確かつ早急にお示しいただくよう引き続き対象者に強く要請してまいります」と述べている。

 新生銀行においては10月1日、「10月13日(水曜日)を基準日とする当行の買収防衛策上の暫定措置としての甲種新株予約権の無償割当ての実施を行わない」こととした旨を発表。併せて「臨時株主総会は引き続き開催をする可能性があ」るとした。追って10月6日には「引き続き、本公開買付けに対する対応を慎重に検討しております」とするなか、新生銀行の独立社外取締役5名が、同行経営陣から独立した立場の同人ら5名のみをメンバーとする「独立社外取締役協議会」を組成したと発表。独立社外監査役2名もオブザーバーとして参加するほか、独立社外取締役が協議を行うに当たって助言を得られるよう同協議会において同行取締役会から独立した外部専門家(フィナンシャル・アドバイザーおよびリーガル・アドバイザー)も選任することとした。なお、同行にあっては取締役7名中5名が独立社外取締役、監査役3名中2名が独立社外監査役とされている。

 独立社外取締役協議会では、①本公開買付けが企業価値ないし株主の共同の利益の最大化を妨げるものでないかについて調査・検討および評価を行うこと、②以上の調査、検討および評価を踏まえたうえで、本公開買付けに対する賛否および本プランに規定する対抗措置の発動の是非について検討を行うこと、③以上のほか、独立社外取締役協議会として取締役会に対して勧告または意見すべきと考える事項――について評価・検討し、その結果を踏まえて取締役会に勧告・意見を述べるものとされた。

 なお10月18日、「本プランに基づき、SBIHDらから提出された情報に基づき、本公開買付けがなされることに賛同するか反対するか、また、反対する場合に対抗措置を発動すべきかの評価」を巡り、30日程度として定めた取締役会評価期間を当初「9月17日~10月18日」(初日・最終日を含めて計32日)としていたところ、当該期間の延長が発表されている。「本評価のための検討項目が多数にわたり時間を要する」として「やむをえず……10月21日まで3日間延長する」と表明するもので、本プランにおいては「やむを得ない事情がある場合、必要な範囲内で取締役会評価期間を最長30日間延長することができる(なお、当該延長は 1 度に限る。)とされて」いるとの付記がある。

 新生銀行が10月21日に行った反対意見の表明は、同行が同日開催の取締役会において、上記・独立社外取締役協議会の勧告・意見を最大限尊重したうえで取締役全員の一致により反対の意見を表明することが決議されたものという。独立社外取締役協議会の意見・勧告は10月21日付でなされた。「本公開買付けは実質的な支配権の取得を企図していながら買付数に上限のある部分買付けであり、残存株主に不利益が生じるおそれがあること」「本公開買付価格は、プレミアムを加重平均した場合には低水準であり、また当行の本源的価値を反映した価格と考えられないこと」をその理由とする。

 本稿冒頭に記したように賛同のための条件が付されており、11月19日までに賛同要件が満たされた場合、具体的にはすなわち、SBIHDらが次の賛同要件(a)および(b)の遵守を表明し、新生銀行とSBIHDらが賛同要件(a)および(b)を盛り込んだ覚書を締結した場合、同行は賛同の意見を表明する。(a)「本公開買付けについて買付予定数の上限のない公開買付けとすること(又は、買付予定数の上限及び下限のない第2回公開買付けを2022年6月8日(又は、SBIHDらとの協議の上、2022年6月8日以降の日で当行が指定する日)までに開始すること)」、(b)「本公開買付価格(第2回公開買付けが開始する場合には当該公開買付けにおける公開買付価格を含む。)を、当行取締役会がフィナンシャル・アドバイザーの価値算定結果等に照らし当行の本源的価値を反映した価格であると評価・判断できる水準まで引き上げること」。

 上記・賛同要件の提示は6回の会議が開催されたという独立社外取締役協議会の勧告に基づくものであり、また「現状のままでは、本公開買付けは、当行の企業価値ないし株主の皆様の共同の利益の最大化を妨げるものと判断せざるをえない」ことから、株主意思確認総会としての臨時株主総会についても招集すべきとされた。勧告では「但し、賛同要件がいずれも満たされたと当行が考える場合には、臨時株主総会の招集については、撤回すべき」こと、「SBIHDらとの協議の結果、賛同要件の一部の充足、又は賛同要件とは異なる当行取締役会が合理的と認める条件が充足されることにより、当行の企業価値ないし株主の皆様の共同の利益の最大化を妨げることにはならないと認められる場合には、本公開買付けに賛同し、株主意思確認総会の招集も撤回すべき」ことも織り込まれた。

 10月21日にはこれを踏まえ、株主意思確認総会となる臨時株主総会を11月25日に開催することも取締役会で決議、公表した。「本プランに基づく対抗措置としての新株予約権の無償割当ての件」が唯一の決議事項となる。賛同要件を充足する一定の条件が満たされた場合には中止される。賛同要件充足の期日とされた11月19日は本臨時株主総会の3営業日前の日となる。

 新生銀行では併せて、賛同要件の充足が同行の一般株主にとって利益になるとし、10月21日以降、SBIHDらに対して同行から協議の申入れを行うと表明。また、企業価値向上の観点からの要望事項として「(ア)当行の顧客と従業員ひとりひとりが、当行グループの価値の源泉であることから、独立した上場会社としての当行グループの価値観、顧客との関係及び従業員の立場を最大限尊重すること」、「 (イ) 本公開買付けの結果次第によっては、実質的な親子上場となり、利益相反のリスクが払拭しきれないことから、SBIHDら以外の一般株主の利益を尊重すること」の各事項を遵守することを公表するよう求めた。なお、これらは賛同要件ではなく要望事項に留まる。

 SBIHDらはこれらの発表を受けて同日、新生銀行が反対意見の根拠とした理由について反論を表明。上記(a)の上限設定の撤廃につき「受け入れることはできません」とするとともに、(b)についても「本公開買付価格を引き上げるつもりはありません」とした。そのうえで、9月24日付の「質問」について引き続き具体的な回答を強く要請、「対象者が買収防衛策に係る対抗措置を発動する場合に割り当てられる甲種新株予約権及び乙種新株予約権1個あたりの目的となる株式の数」についても明確かつ早急に提示するよう重ねて要請している状況にある。

 

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