◇SH3873◇カンボジア:新投資法の制定(2) 松本岳人(2022/01/12)

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カンボジア:新投資法の制定(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 松 本 岳 人

 

(承前)

4. 事業の中断、譲渡、合併等

 新投資法では、優遇措置が拡充された一方で、監督当局としての権限の強化も図られている。具体的には、投資家が関連法令に基づく義務を履行しなかった場合等の一定の事由が生じた場合に、CDCにQIPの登録を取り消す権利を付与することを明確にしている。

 また、組織再編を行う場合の取扱いについての規定も設けられているが、QIPの登録をしたことにより得られる優遇措置等に係る権利等は原則として譲渡、合併等により承継することは認められていない。但し、CDC又はPMISの事前承認その他の関係当局の承認を得た場合には、例外的に譲渡等が可能とされている。

 

5. 紛争解決手続

 紛争解決の手続については、旧投資法及び旧改正投資法から変更はないものの、投資家間で紛争が生じた場合、紛争当事者からの書面による要請に基づき、CDC又はPMISによる調停手続を実施するものとされている。かかる調停で解決されない場合には、当該紛争は、仲裁又は裁判にて解決されることになる。

 

6. おわりに

 カンボジアでも他国同様、新型コロナウイルスの蔓延によりロックダウンに追い込まれる等経済的にも大きな影響を受けたものの、2回のワクチン接種を終えた国民が75%を超えるなど、経済活動も回復に向けて動き出している。さらに昨年からデジタル通貨の運用が開始されているなど、独自のデジタル経済発展がみられる部分もあり、今後も高い経済成長が見込まれている。新投資法の詳細な政令が定められていないなど、運用面ではまだ不透明な部分もあるが、カンボジアは比較的政権が安定しており、ミャンマーでの軍事クーデターのような政治リスクは比較的低いとみられていることもあり、今後新投資法の下での投資が加速することが期待される。

 


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(まつもと・たけひと)

2005年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2007年慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2008年に長島・大野・常松法律事務所に入所後、官庁及び民間企業への出向並びに米国留学を経て、2017年から2020年まで長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。現在は、日本及び東南アジア地域での不動産・インフラ関係の案件を中心に企業法務全般についてアドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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