契約の終了
第20回 使用貸借契約の諾成化と借用物受取前の貸主の解除権(上)
明治大学法学部准教授
有 賀 恵美子
Ⅰ はじめに
改正前民法では、消費貸借、使用貸借および寄託は要物契約として規定されていたが、2017年の改正により使用貸借と寄託は諾成契約に改められ(593条、657条)、消費貸借については、要物契約としての消費貸借(587条)と要式契約としての諾成的消費貸借(587条の2第1項)[1]が併置された。これにより、使用貸借と寄託は当事者の合意のみによって契約が成立するが、いずれも書面によらない場合には、借用物受取前の使用貸主の解除権(593条の2)と寄託物受取前の無償受寄者の解除権(657条の2第2項)がそれぞれ新たに認められることになった。つまり、改正前から認められている書面によらない贈与の撤回権(改正により解除権、550条)と同様に、契約成立後であっても無理由解除の余地があるという意味で、その法的拘束力が緩和されている。
このように要物契約の諾成化に伴って新たな解除権を規定したことについて、改正法は、使用貸借については贈与の550条の規律に倣ったものとし、無償寄託については使用貸借との整合性を図ることを1つの理由として解除権を認めたものとする。しかし、贈与、使用貸借、無償寄託は、無償性という点では共通するものの、それぞれ「財産の移転」、「物の使用」、「物の保管という役務」を給付内容とする全く異なる契約類型である。したがって、贈与に関する規律を無償契約一般の原則規定であるかのように捉えて、これを当然のように他の無償契約に及ぼしていくという発想は適切ではなく、個々の契約毎にその規律構造を明らかにしていくことが必要と言える。本稿では紙幅の関係で、使用貸借契約が諾成化されたことに伴って新設された借用物受取前の貸主の解除権に焦点を絞り、550条の書面によらない贈与の解除権と対比しつつ、その規律構造と問題点を明らかにしていくことにしたい。
Ⅱ 書面によらない贈与の解除権
1 贈与契約の成立
わが国では、旧民法時代に贈与は公証によらなければならないとされていたものの、改正前民法から現在に至るまでは一貫して諾成契約であり(549条)、比較法的には珍しい立法とされる。贈与に方式を必要とせずに諾成契約とした理由として、民法修正案理由書は、⑴わが国は公証制度に慣れていないため、このような手数を要することは従来の慣習に反すること、⑵特別の方式によって贈与者の熟慮を促そうとすることは、殆どその効がないと考えられたことを挙げている[2]。
改正民法も、実際になされている贈与は口頭によるものが非常に多いという現実に配慮して、贈与を要式契約ないし要物契約に改めることはしなかった。
2 書面によらない贈与の解除権
- ⑴ 改正前民法
- わが国の民法は贈与を諾成契約としつつ、書面によらない贈与については未履行部分についてのみ当事者双方からの取消権(平成16年改正により「撤回権」)を認めるという、これもまた独自の立法を採用した(改正前民法550条)[3]。その理由は、「後日の争訟を予防し、法律行為を確実ならしめ、併せて幾分か贈与者の熟慮を促すには、書面によって贈与を為さしむることが固より立法上至当の方法」と考えられたためである[4]。しかし、たとい書面によって贈与をしなかったとしても、既にその一部を履行したときは、その部分まで取り消すことができるとする理由はないとして、未履行部分についてのみ取り消すことができるとされた。
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判例(大判明40・5・6民録13輯503頁)は、改正前民法550条の趣旨が贈与者の意思の明確なことを期し、軽率な贈与を防止しようとすることにあると捉えていたので、同条の書面については贈与者の意思が表示されていれば足り、当事者双方の意思表示について書面を作成する必要はないとされた[5]。また、意思表示の問題である以上、贈与の意思表示が書面によって受贈者に対して表示されることが最低限必要と考えられるものの(たとえば、自分の日記に記載しただけでは書面性は認められない)、第三者に宛てた書面でかつその書面作成について受贈者の関与・了解がないときですら、当該書面作成の動機や経緯といった書面外の事情を考慮したうえで、贈与者の意思を確実に看取しうる書面であると判断した最高裁判例(最判昭和60・11・29民集39巻7号1719頁)もある。つまり、判例は書面という形式自体よりも贈与者の意思を重視していることが窺われ、その意味では広く書面性を認める傾向にあるといえる。さらに、贈与の既履行部分について撤回が認められない理由も書面性が必要とされる理由と同様に捉えられたことから、同条の「履行」についても贈与者の意思が明確に表現されていれば足りるとして、履行行為の完了ではなく、贈与者の債務の主要な部分が実行されていればよいと解されていた[6]。
- ⑵ 改正民法
- 改正により、550条の書面によらない贈与の「撤回」は「解除」に改められた[7]。しかし、部会の審議では「撤回」を「解除」に改めることの当否については全く議論されず、解除に改めることは、「要物契約が諾成契約化されたことに伴う引渡し前の解除という制度とも、おそらく平仄が合っている」との指摘があっただけである。その実質的な内容についての改正は意図されていないため、同条の「書面」性や「履行」の内容に関する判例の判断は、改正後も引き継がれるものと考えられる。
3 考察
- ⑴ 贈与者の意思の内容
- 従来の議論では、「贈与者意思の明確化」とは言うものの、その「意思」の内容が明らかにされてこなかったきらいがある。諾成契約が成立するためには契約成立に向けられた意思が明確であることが必要とされており、贈与の場合もその意思が明確でなければ549条の贈与契約の成立は認められないはずである。したがって、549条の贈与契約の成立を前提としつつ、550条でその意思が不明確である場合があることを想定することは、そもそも論理的に矛盾する[8]。
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かかる矛盾を解消するためには、549条で要求される意思(契約成立に向けられた意思)と550条で考慮される意思の内容が、それぞれ質的に異なることを論証する必要がある。この点については、カフェー丸玉事件判決(大判昭10・4・25新聞3835号5頁)が、女給に対する多額の金員供与の約束をもって、客が裁判上の請求権を付与する趣旨であったと速断するのは相当でないと判断していることが参考になる。つまり、本判決は、贈与契約の訴求力を肯定するためには、「裁判上の請求権を付与する意思」が必要であることを示しているのではないか。本件ではこの意思の存在が否定されたことにより、訴求力のない自然債務[9]が作り出された場合と評価することが可能である。かかる理解が許されるのであれば、書面によらない贈与を解除できるのは、契約成立に向けられた意思(契約上の債権債務を発生させる意思ということもできようか)はあるが、裁判上の請求権を付与する意思が欠けている場合ということができるのではないか。550条の書面は、この後者の意思の必要性を表しているものと捉えることはできないか。
- ⑵ 贈与約束の多様性
- 改正前において贈与についてのみ550条のような規定が存在していたのは、無償契約である贈与では贈与者が完全な法的拘束力のある債務を負担する意思を常に有しているとは限らないからと考えられる。つまり、これを理論的に整理すれば、贈与は、①徳義上の合意にすぎない場合、②自然債務を発生させる場合、③完全な契約として法的拘束力が認められる場合があると考えられる。
- ①徳義上の合意とは、いかなる意味においても私法上の効果を生じない合意であり、債権債務は発生せず、給付保持力、請求・訴求力のいずれも認められない合意である。これに対して、②自然債務とは、訴求力はないが給付保持力はある点で、法的債務と評価することが可能である。550条は、549条を前提としているのだから、債権債務を発生させる意思すらない場合は、①徳義上の合意にすぎない。もはや契約とは呼べず、その終了も問題にならない。債権債務を発生させる意思はあるが、書面がなく、裁判上の請求権を付与する意思が認められない場合は、②にあたる。つまり、訴求力はないが、債権債務は存在する。550条の解除は、この意味での贈与の終了について定めていると考えることはできないか。
Ⅲ 書面によらない使用貸借の貸主の解除権
1 使用貸借契約の成立
- ⑴ 改正前民法―要物契約とされていた理由―
- 改正前民法593条は使用貸借を要物契約としていたが、起草者はその積極的理由については明らかにしていなかった。未だ物の引渡しを受けていない借主に返還義務を認めるのは普通の観念に反するとの説明はあるものの[10]、理論的には諾成契約とする方が相応しいとし、ただローマ法以来の諸国の慣習に従って要物契約にしたとするのみであった[11]。
- 末弘見解は当初は要物契約否定論に賛同していたが[12]、その後に立場を改め、有償契約とは異なり無償的に約束をする場合には、法律的に拘束力ある債務を負担する意思を常に有しているとは限らないから、その意思の判定基準として、贈与では書面の有無が問題とされ、使用貸借では物の引渡しが必要とされると主張した[13]。広中見解も、有償契約と無償契約との違いに着目している点は末弘見解と同じだが、ローマ法における契約法の発展に関する考察に基づいて有償契約と無償契約とを区別し、諾成契約の承認は有償契約に直結したものであることを明らかにしたうえで、未履行の無償契約に対する法的保護は未履行給付の請求という形では存立しえないものとする[14]。ただ、無償契約であっても、既に給付がなされているという既成事実に立脚してその法的保護を受けることは可能であるとして、使用貸借の要物契約性を説明している[15]。
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起草者とは異なり、要物契約の根拠を無償性と結びつけて理解する末弘・広中両見解は、その後のわが国の学説に大きな影響を与えることになる[16]。もっとも、両見解とも、書面による諾成的使用貸借の法的拘束力を否定するものではなく[17]、改正前民法下においても諾成的使用貸借の成立を認めたうえで、贈与に関する550条を準用して書面によらない使用貸借の貸主には取消権を認めるとする見解は有力に主張されていた[18]。
- ⑵ 改正民法―諾成契約化の理由―
- 改正民法593条は、使用貸借を要物契約から諾成契約に改めた。その理由としては、まず第1に、借主が貸主との間で交わした合意を前提として行動することも考えられるため、使用貸借の合意に一律に法的な拘束力を与える必要がないとは言い切れないことが挙げられた[19]。この点については、法制審議会に先立つ債権法改正検討委員会の「基本方針」において、社宅が具体例として挙げられ、赴任先で1年間については無償で住宅を提供するという約束があり、実際に赴任したところ、利用できないとされた場合の借主側の不利益が指摘されていた[20]。第2の理由としては、従来、使用貸借は、親族などの情義的な関係によるものが多かったと考えられるが(以下、「情義型」と呼ぶ)、現代社会においてはそのような情義型によるものだけではなく、経済的な取引の一環として行われることも多くなっており、目的物が引き渡されるまで契約上の義務が生じないのでは取引の安全が害されてしまうことが挙げられている[21]。具体的には、ソフトウェアの無償ライセンス、企業から下請けに対する金型の無償貸与、特約店に対する販売促進用の設備の貸与、石油会社からサービスステーションに対する施設の無償貸与等が、その例とされる[22](このように何らかの有償取引契約の一環として締結される使用貸借契約について、以下では「ビジネス型」と呼ぶことにする)。
2 借用物受取前の使用貸主の解除権の新設
- ⑴ 解除権新設の理由
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要物契約から諾成契約に改められたことにより、使用貸借の貸主は、合意の成立時から目的物の引渡債務を負担することになる。しかし、改正法は、「貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。」として、借用物受取前の貸主の任意解除権を認める規定を併せて新設した(593条の2)[23]。その理由は、諾成的使用貸借の合意にも拘束力を認める必要があるが、他方で、無償の合意には軽率に行われるものも少なくないため、贈与の550条と同様に、使用貸借についても貸主保護の見地から軽率な使用貸借を予防し、貸主の意思の明確を期して後日紛争を生じることを避ける必要があると考えられたことによる[24]。これに対して、書面による使用貸借の場合には、貸主の意思は明確であるとして解除権は否定された。つまり改正法は、使用貸借について無償性という贈与との共通点に着目したうえで、書面によらない贈与と同様に、貸主の意思の明確性を期するための規律を設けたものといえる。
- ⑵ 「書面」の意味
- このような改正法の趣旨からすれば、ここで必要とされる書面とは、貸主の意思の明確性を期するためのものであるから、貸す意思が明らかにされていれば足りるということになろう[25]。
- これに対し、「基本方針」及び中間論点整理までの検討案は、使用貸借を諾成契約としたうえで、両当事者が書面による合意をもって解除権を排除しないかぎり、各当事者は引渡しまでは解除できるという内容であった。書面で明らかにすべきは引渡前の解除権排除の合意であり、改正法と比較すると、引渡前の解除の範囲がより広く考えられていたのである。その理由として「基本方針」は次の2点を挙げる。第1は、既に贈与についてはこれを諾成契約としつつ、書面によらない贈与については解除権を認めるという扱いが確立しているのに対し、使用貸借は改正前民法では要物契約とされ、その拘束力が生じる場合がより限定されているから、このような両者の相違について配慮する必要があるという点である。第2は、使用貸借の多様性からすると、法と非法の境界は贈与の場合以上に不明確であることから、使用貸借を諾成契約とするとしても、その拘束力が確定的に生ずる場合をより慎重に限定すべきと考えられたことが挙げられている。以上の理由から、「基本方針」は、拘束力を確定的に生ぜしめる当事者の意思を、書面によって解除権が排除された場合に限定しようとしたのである[26]。情義型の使用貸借の場合を考えると、貸主の解除権を可能な限り尊重する必要があるとして、この「基本方針」を基礎とする中間論点整理案を支持する意見もあったが、実際のビジネスにおいて使用貸借は多く使われており、また、解除権排除のための書面性判断についての無用の紛争を嫌ったためか、この検討案は改正593条の2の内容へと変更された[27]。
- なお、同条に関しては、電磁的記録によってなされたときに書面によってなされたものとみなされる規定は設けられていない。贈与についてもそうであるが、そのような規定を設けてまで、使用貸借の解除をすることができる場面を狭くする必要性に乏しいと考えられたためであるとされる[28]。
(下)につづく
[1] 「要式契約としての諾成的消費貸借」という表現は、審議会でも用いられている。中田裕康『契約法〔新版〕』(有斐閣、2021)350頁参照。
[2] 広中俊雄『民法修正案(前三編)の理由書』(有斐閣、1987)528頁以下。梅謙次郎『民法要義巻之三』(和佛法律学校ほか、1897)456頁以下も、方式を必要とすることは有益な贈与を妨げることが多いのに対して、有害な贈与を妨げうるかは疑いがあるとして、贈与が要式契約ではないことを強調していた。
[3] 詳細については、拙稿「書面によらない贈与の撤回――民法550条の『撤回』の意義」明治大学社会科学研究所紀要56巻2号(2018)187頁以下も参照。
[4] 広中・前掲注[2] 528頁以下。550条の趣旨に関する学説の理解については、拙稿・前掲注[3] 191頁以下参照。
[5] 550条の書面性判断に関する詳細な判例分析として、池田清治「民法550条(贈与の取消)」広中俊雄=星野英一編『民法典の百年Ⅲ』(有斐閣、1998)255頁参照。
[6] 動産について大判明43・10・10民録16輯673頁、不動産については最判昭31・1・27民集10巻1号1頁、最判昭40・3・26民集19巻2号526頁。
[7] 「部会資料84-3」15頁によると、平成16年の民法改正で「取消」が「撤回」に改められたのは、その当時における同条についての学説上の一般的な理解にしたがったもの(「取消」は、意思表示に瑕疵があることを理由として効力を消滅させるもの、「撤回」は、それ以外の理由により効力を消滅させるもの)であった。もっとも、この改正の結果として、意思表示に瑕疵があることを理由としないで契約の効力を消滅させる行為を意味する語として、「解除」と「撤回」が併存することとなったが、この意味での「撤回」は550条においてのみ用いられ、それ以外は「解除」という語が用いられている一方、「撤回」は、550条を除けば、意思表示の効力を消滅させる意味で用いられていることから、550条の「撤回」を「解除」に改めることが相当であるとされた。
[8] ここでの考察については、拙稿・前掲注[3] 202頁以下参照。
[9] ここでは一般的な理解に従い、給付保持力はあるが、訴求力と執行力を欠く債務を自然債務と呼ぶことにする。自然債務については、その内容を統一的に把握することは不可能とする見解(前田達明「『自然債務論』事始」判タ614号(1986)2頁以下)と訴求力を有しない債務がどのような本性を持つかを確定することは可能であるとする見解(石田喜久夫「『自然債務』概念の有用性」加藤一郎=米倉明編『民法の争点Ⅱ――債権総論・債権各論』(有斐閣、1985)6頁)とに分かれる。しかし、そこでの議論は主として、法律上の規定を基にして発生する、自然債務に類似する関係について、これを「自然債務」という上位概念で統一的に説明することの当否や有益性を問題としていたのであって(加藤一郎「自然債務をめぐって」法教27号(1982)62頁以下)、当事者が合意によって訴求力のない自然債務を作り出すことができることについては争う余地がない。ただ、そのようにして作り出された自然債務なるものが、徳義上の債務にすぎないか、法的債務といえるのか、という点について議論の余地を残すのみである。
[10] 梅・前掲注[2] 597頁以下。
[11] 富井政章は、理論上は諾成契約とする方が正しいかもしれないが、古来普通に行われている考えを変えるだけの勇気はなかったと説明しており(法典調査会民法議事速記録28巻130丁)、梅謙次郎は、純理からすれば使用貸借だけが践成契約で、賃貸借は諾成契約とすべき理由はないが、諸国の古来の慣習により践成契約とされたとしている(梅・前掲注[2] 597頁)。これに対して石坂見解は、消費貸借、使用貸借、寄託を要物契約とする必要はないとし、これらの契約にとって従たる義務に過ぎない返還義務の存在をもって、使用貸借等を要物契約と解することは当を得ない等と批判していた。石坂音四郎「要物契約否定論」『改纂民法研究 下巻』(有斐閣、1920(初出1914))683頁以下参照。
[12] 末弘厳太郎『債権各論』(有斐閣、1919)31頁以下。
[13] 末弘厳太郎「無償契約雑考」法時11巻4号(1939)320頁。
[14] 詳細については、広中俊雄『契約法の研究』(有斐閣、1958)3頁以下。
[15] 広中・前掲注[14] 53頁。
[16] その後の学説では、起草者が指摘していたローマ法以来の沿革という理由に加えて、使用貸借は無償契約として恩恵的な性格を有するため、既に約束があるという理由で借主に引渡請求権まで認めるのは行き過ぎである等の理解(星野英一『民法概論Ⅳ』(良書普及会、1986)176頁)が見られるようになった。詳細については、岡本詔治『無償利用契約の研究』(法律文化社、1989)411頁以下。
[17] 末弘・前掲注[13] 320頁、広中俊雄『債権各論講義〔第6版〕』(有斐閣、1994)122頁。
[18] 幾代通=広中俊雄編『新版注釈民法(15)債権(6)増補版』(有斐閣、1996)82,93頁〔山中康雄〕。これに対し、要物契約について定める改正前593条は強行法規であるとする見解として、来栖三郎『契約法』(有斐閣、1974)393頁。
[19] 「部会資料16-2」73頁。
[20] 民法(債権法)改正検討委員会編『詳解・債権法改正の基本方針Ⅳ――各種の契約(1)』(商事法務、2010)331頁。
[21] 「部会資料70A」60頁。
[22] 「部会資料70A」10頁。
[23] なお、解除権に関する総則規定が本条の解除権にも適用されるかという問題については、550条の書面によらない贈与の解除権と同様に、540条及び544条の適用可能性が考えられる。550条に対する総則規定の適用可能性については、筒井健夫=村松秀樹編『一問一答 民法(債権関係)改正』(商事法務、2018)264頁参照。
[24] 「部会資料70A」60頁以下。
[25] 潮見佳男『新契約各論Ⅰ』(信山社、2021)319頁。
[26] 民法(債権法)改正検討委員会編・前掲注[20] 336頁。
[27] なお、借主は、書面の有無や借用物受け取りの有無を問わず、いつでも契約の解除をすることができる(598条3項)。この解除権は、無償で使用収益する権利の放棄であり、返還時期を早める(継続的契約の存続期間を短縮する)という独自の意味があると言える。
[28] 筒井=村松編・前掲注[23] 303頁。