SH3964 経産省、「グリーン社会の実現に向けた競争政策研究会」の初会合を開く――欧州で一定の共同行為を認容する動きなど、脱炭素化に大きく資する取組みは「後押し」する方向 (2022/04/06)

組織法務サステナビリティ

経産省、「グリーン社会の実現に向けた競争政策研究会」の初会合を開く
――欧州で一定の共同行為を認容する動きなど、脱炭素化に大きく資する取組みは「後押し」する方向――

 

 経済産業省は3月25日、「グリーン社会の実現に向けた競争政策研究会」(座長・大橋弘東京大学公共政策大学院院長)の初会合を開催した。

 開催に先立って3月17日、本研究会を新たに設置する旨がアナウンスされた。設置・審議の視点や目的を明らかにするもので、(a)諸外国では欧州を中心として気候変動対策などサステナビリティに配慮した企業の取組みを競争政策上どのように考慮すべきか、活発な議論が行われていること、(b)わが国としても2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組みを進めるうえで、これを後押しするための競争政策上の方策が重要な論点であること、(c)a・bを踏まえ、グリーン社会の実現に向けた取組みを後押しするうえでの競争政策上の論点について広く知見を集めて整理し、共有するために開催に至ったことを説明。上記bに関しては「イノベーションを不当に抑制しようとする企業の合意等に対しては厳正に対処する一方、複数の企業が共同で行う自律的な取組であって、炭素中立の産業構造への転換に資するものについては、強く後押しすべき」とする方向性が示された。

 経産省・競争環境整備室を事務局とする本研究会の委員は計7名。経済学・法学の大学院教授といった座長を始めとする学識経験者が4名、シンクタンク研究員が1名、法律実務家が2名という構成で、会合ごと必要に応じてゲストを招聘し、ヒアリングを行う。会合資料の公開について「資料は、資料提出者と相談して対応を決定する」とされている。議事録については原則として公開される。

 3月25日に開かれた第1回会合における事務局提出資料「グリーン社会の実現に向けた競争政策について」では上記bの視点がより仔細に述べられており、炭素中立型社会の実現に向けては複数企業が連携して脱炭素化に取り組むことも想定され、このような取組み(共同行為、企業結合)が競争法の規制対象となりうるところ、(ア)炭素中立に向けたイノベーションを不当に抑制しようとする企業間の合意についてはこれまでどおり厳正に対処し、是正を図る必要がある一方で、(イ)「脱炭素化に大きく資する生産設備の集約やサプライチェーンの脱炭素化に向けた企業間の大規模な合意など、複数の企業が共同で行う自律的な取組であって、炭素中立の産業構造への転換に資するもの」については強く後押しすべきではないか、とする。

 6月ころに予定される第3回会合までの当面の審議に当たっては、検討が先行している海外の事例などが参考になるものとし、海外有識者を含むゲストを招いたヒアリングをかさね、広く知見を集める。上記・事務局提出資料には、まずは欧州各国の動きとして①オランダ、②ドイツ、③オーストリア・ギリシャの取組みを掲げるとともに、欧州委員会の動きとして(1)自動車メーカーによる技術カルテルの認定(編注・欧州委員会としてカルテルの存在を認定)ほか、(2)「水平的協力協定に関するガイドライン」の改正動向を織り込んで紹介。

 (2)のガイドラインを巡っては改正案が公表され、2023年1月1日の施行に向けて意見募集中であるという。改正案で新設を図る章「サステナビリティ協定」について一定の要件下、①「競争制限的協定の禁止行為」には該当しない場合、②禁止行為に該当するものの「適用除外の対象となり得る場合の評価方法に関する指針」を示すものとなっており、わが国における議論に際して今後の動向が注目される。

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