SH4530 特許出願の非公開制度に関する経済安保推進法施行令の改正案の公表について 白根信人(2023/07/05)

組織法務経済安保・通商政策

特許出願の非公開制度に関する経済安保推進法施行令の
改正案の公表について

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 白 根 信 人

 

1 はじめに

 2022年5月11日に成立した経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(以下「経済安全保障推進法」という。)により、特許出願の非公開に関する制度が創設された。経済安全保障推進法のうち特許出願の非公開制度に関する部分は2024年5月17日までに施行される予定である(附則1条5号)。

 特許出願の非公開制度は、保全審査の対象となる特定の技術分野などの多くの事項について政令に委ねられているが、このたび、経済安全保障法制に関する有識者会議の第7回会議(令和5年6月12日)の議事次第が公開される[1]とともに、令和5年6月15日付で経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)(以下「施行令(案)」という。)が公表され[2]、パブリックコメントの募集が開始された[3]。本項では、以下、施行令(案)による改正のうち、重要と思われる点について概観する。

 なお、施行令(案)では、特許出願の非公開制度に加えて、特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度についても関連する規定の策定が予定されているが、本稿では、施行令(案)のうち特許出願の非公開制度に絞って解説する。

 

2 特定技術分野及び付加要件に関する事項

⑴ 特定技術分野に関する考え方

 経済安全保障推進法では、すべての特許出願について、第一段階として特許庁が国際特許分類(IPC)を用いて、特定技術分野に属する発明が明細書等に記載されているかどうかについて定型的な審査を行い、審査の結果、内閣総理大臣に送付された特許出願について、第二段階として内閣総理大臣が保全審査を行うという、2段階の審査の仕組みが採用されている。

 明細書等に特定技術分野に属する発明が記載されている特許出願については、保全審査の対象となるほか、日本でなされた発明については第一国出願義務の対象ともなる(経済安全保障推進法78条1項)ことから、特許出願人にとっても重要な点であるが、その範囲は政令に委ねられていた。

 今回、施行令(案)は、特定技術分野として、IPCにより、47の技術分野を指定している(施行令(案)による改正後の経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令(「新施行令」)12条1項)。特定技術分野を、経済安全保障法制に関する有識者会議(第7回)の資料に従って整理すると、以下のとおりである[4]

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(しらね・のぶと)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2000年早稲田大学法学部卒業。2009年東京大学法科大学院卒業。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2017年コロンビア大学・ロースクール(LLM)修了。2019年ニューヨーク州弁護士登録。知的財産に関する紛争解決、ライセンス、共同開発などの知財取引についてクライアントに助言している。

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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