SH3489 商業登記規則等の一部を改正する省令が施行 盛里吉博(2021/02/16)

組織法務商業・法人登記

商業登記規則等の一部を改正する省令が施行

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 盛 里 吉 博

 

1 はじめに

 商業登記規則等の一部を改正する省令(令和3年法務省令第2号)が、令和3年2月15日(一部は同年3月1日)に施行される。会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)および会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和元年法律第71号)により、会社や法人(以下「会社等」という。)の代表者等に登記所への印鑑提出(いわゆる「代表印の届出」)を義務付けていた規定が削除されること等に伴う改正である(上記一連の改正を合わせて、以下「本改正」という。)。

 本改正により、商業登記にかかわるオンライン申請の利便性が向上することが期待される。

 

2 本改正の概要

 本改正による変更点のうち、重要なものは以下のとおりである。

 

  ⑴ 登記の申請をオンラインで行う場合に、登記所への印鑑の提出が任意になる。

 本改正前は、登記の申請に際し、その方法がオンラインか否かにかかわらず、登記所への申請者等(典型的には会社等の代表者)の印鑑の提出が必須とされていた。このため、登記の申請をオンラインで行う場合であっても、申請書情報をオンラインで送信することに加え、印鑑届出書に提出する印鑑を押印した上で登記所まで郵送または持参することが必須であり、登記の申請がオンラインで完結せず、また、実務的には(典型的には設立時において)代表印の発注業務が必須になるという不便があった。

 本改正により、会社等の代表者による印鑑の提出を義務付けていた商業登記法20条が削除され、登記の申請をオンラインで行う場合には印鑑の提出が任意となる。これにより、登記の申請が、申請書情報等のオンラインによる送信のみにより完結し得ることとなる。

 もっとも、本改正後であっても、登記の申請に際し、申請書情報以外に添付書類の提出が必要な場合で、当該添付書類を電磁的記録にて準備できない場合(たとえば、実務的には、電子証明書の普及状況との関係で、取締役会議事録を電磁的に準備できない場合も多い。)には、これらの添付書類を登記所に郵送または持参する必要が生じる。

 なお、上記の印鑑の提出の任意化は、登記の申請をオンラインで行う場合に限られ、登記の申請を書面で行う場合には、従前どおり、印鑑の提出が必要となる点には留意が必要である。

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(もりさと・よしひろ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2003年慶応義塾大学法学部法律学科卒業。2006年東京大学法科大学院卒業。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2013年University of Virginia ロースクール(LLM)修了。2014年ニューヨーク州弁護士登録。主に国内外のM&A、一般企業法務等のコーポレート案件を取り扱っている。成蹊大学経済学部非常勤講師。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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