SH3992 最三小判令和4年4月19日(長嶺安政裁判長)、相続税の課税価格に算入される不動産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反しないとされた事例 下尾裕/津江紘輝(2022/05/10)

取引法務家族・相続・成年後見そのほか不動産法

最三小判令和4年4月19日(長嶺安政裁判長)、相続税の課税価格に算入される不動産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反しないとされた事例

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 下 尾   裕

弁護士 津 江 紘 輝

 

1 本最高裁判決の概要

 ⑴ 事案の概要

 本最高裁判決は、相続税申告において被相続人が相続発生約3年前後に借入れを主な原資として取得した各不動産(以下「本件各不動産」という。)につき、相続人らが「財産評価基本通達」(昭和39年4月25日直資56。直審(資)17国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)に基づく評価額を用いて申告したところ、課税庁において相続税評価額を上回る相続発生時の不動産鑑定評価額により更正処分を行ったことの当否が争われたものである。

 評価通達における不動産の評価については、原則として、土地については路線価、建物については固定資産税評価額が用いられるが、これらは一般に実勢価格よりも低く設定されている。こうした事情を踏まえ、金融機関等から資金を借り入れて、不動産を取得することにより、不動産の実勢価格(=不動産取得のための借入れの金額)と相続税評価額の差額に相当する金額分、相続税の課税標準を圧縮する、という方法が、従前より相続対策として用いられていた。

 本最高裁判決は、こうした相続対策の一環として取得された不動産の相続税評価額が問題とされたものであり、その結論および判断基準について実務家の注目を集めていた。

 

 <主な時系列>

平成20年8月19日 被相続人が相続人らのうち1名と養子縁組
平成21年1月30日 信託銀行から6億3000万円借入れ
本件甲不動産を8億3700万円で購入
平成21年6月26日 被相続人、上記会社の代表取締役を辞任(相続人の一人が代表取締役に就任)
平成21年10月16日 被相続人、公正証書遺言作成
平成21年12月21日 相続人らのうちの1名から4700万円を借入れ
平成21年12月25日 信託銀行から3億7800万円借入れ
本件乙不動産を5億5000万円で購入
平成24年6月17日 被相続人死亡

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(しもお・ゆたか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所)スペシャル・カウンセル。2004年京都大学法学部卒業。2006年弁護士登録(大阪弁護士会)。2012年7月~2014年7月東京国税局(調査第一部調査審理課 国際調査審理官)勤務。税務、ウェルスマネジメントおよび紛争解決を中心に、一般企業法務を広く取り扱う。

 

(つえ・ひろき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2015年東京大学法学部卒業。2017年3月東京大学法科大学院卒業。2019年弁護士登録(第一東京弁護士会)。税務、金融規制法、情報法を中心に、一般企業法務を広く取り扱う。

 

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