SH4058 公取委、「クラウドサービス分野の取引実態に関する報告書」を公表 臼杵善治/西野有紀(2022/07/12)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

公取委、「クラウドサービス分野の取引実態に関する報告書」を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 臼 杵 善 治

弁護士 西 野 有 紀

 

1 はじめに

 公正取引委員会(以下「公取委」という。)は、令和4年6月28日、「クラウドサービス分野の取引実態に関する報告書」[1](以下「本報告書」という。)を公表した。本報告書は、公取委がデジタルプラットフォーム事業者の事業活動に関する取引実態調査の一環として行ってきた、クラウドサービス[2]分野に関する取引実態調査の結果を取りまとめたものである。

 本報告書では、クラウドサービス市場について詳細な検討がなされているが、その中でも、競争政策の観点から、クラウド提供事業者および利用者により実施されることが推奨される取組みを紹介し、また、一方で、クラウド事業者の行為のうち、独占禁止法上問題となり得る行為が紹介していることが注目される。

 以下では、本報告書で指摘された、クラウド提供事業者の独占禁止法上問題となり得る9つの行為について紹介する。

本報告書の概要(出典:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jun/digital/gaiyou1.pdf

 

2 独占禁止法上問題となり得る行為

 ⑴ データ転送料の設定

 クラウドサービス利用時のデータ転送料が、入力時は無料、出力時は高額に設定されている場合がある。

(出典:本報告書79頁)

 

 クラウドサービスの市場において有力なクラウド提供事業者が、不当に高額なデータ転送料を設定することは、利用者がほかのクラウド提供事業者のクラウドサービスを利用することを妨げ、これによりほかのクラウド提供事業者が排除されるまたはこれらの取引機会が減少するような状態をもたらすおそれがある場合、独占禁止法上問題となる(不公正な取引方法・一般指定14項(競争者に対する取引妨害)、私的独占)。

 ⑵ 独立して取引される異なる機能の統合

 クラウド提供事業者が、同社の提供する機能に競争事業者の提供する機能を統合し新たなクラウドサービスとして利用者に提供する場合がある。

(出典:本報告書81頁)

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(うすき・よしはる)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2003年慶應義塾大学法学部卒業。2006年慶應義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(第一東京)。2015年University of London, LL.M. in Competition Law修了。
公正取引委員会による審査手続対応、海外当局による調査手続対応、国内外の競争法当局に対する企業結合届出のサポート、競争法コンプライアンスマニュアル作成・競争法コンプライアンストレーニング等の多数の案件を取り扱っている。

 

(にしの・ゆき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2015年東京大学法学部卒業。2017年東京大学法科大学院卒業。2018年弁護士登録。
国内外の競争法当局に対する企業結合届出のサポートの案件を取り扱っている。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用。

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