SH4258 商標法のコンセント制度の導入に向けた議論――令和4年11月28日の不正競争防止小委員会会合 後藤未来/相澤思絵(2022/12/28)

取引法務特許・商標・意匠・著作権

商標法のコンセント制度の導入に向けた議論

(令和4年11月28日の不正競争防止小委員会会合)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 後 藤 未 来

弁護士 相 澤 思 絵

 

1 はじめに

 令和4年11月28日、産業構造審議会不正競争防止小委員会(以下「本委員会」という。)の第20回目の会合(以下「本会合」という。)が開催され、主として、①商標法のコンセント制度導入と関連する諸規定の整備、②営業秘密使用等の推定規定の拡充、および③営業秘密・限定提供データに関するライセンシーの保護制度の創設について議論がされた。本稿では、このうち、①に関する議論の内容について概観する。

 

2 商標法のコンセント制度の導入に関する議論

 ⑴ 議論の背景

 現行の商標法上、先願にかかる他人の登録商標またはこれに類似する商標であって、その商標登録にかかる指定商品もしくは指定役務またはこれらに類似する商品もしくは役務について使用をするものは、商標登録を受けることができない(商標法4条1項11号(以下「本規定」という。))。

 現行法の下で、審査官から本規定に基づく拒絶理由が通知された場合、後願の出願人の対応としては、①引用された他人の先願商標(以下「引用商標」という。)と抵触する指定商品・役務の削除(手続補正書の提出)、②引用商標と出願商標が非類似との主張、③引用商標権者との譲渡交渉またはアサインバック[1]、④引用商標権に対する不使用取消審判等が選択肢となる。

 他方、これらの対応には金銭的・時間的コストを要する等の理由から、ユーザーからは、より簡便・低廉な選択肢として、引用商標の商標権者の同意(コンセント)に基づき、本規定の適用を除外して後願の商標登録を認める制度(以下「コンセント制度」という。)の導入を求める声がある。コンセント制度は、米国、欧州等の諸外国ではすでに導入されており、わが国においてもその導入の是非が議論されていたが、平成18年2月、産業構造審議会知的財産政策部会において、「さらに検討を行うことが必要」とされ[2]、いったんの収束をみせた。その後、「類似商品・役務審査基準」の見直しや、商標審査基準における出願人と引用商標権者に支配関係がある場合の取扱いの変更等を経て、令和4年9月の商標制度小委員会において、コンセント制度の導入に向けた再検討が進められることとなった[3]

 ⑵ コンセント制度の枠組み

 商標制度小委員会で検討されているコンセント制度の枠組みは下図のとおりである。

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(ごとう・みき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。

 

(あいざわ・しえ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。2019年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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