SH4060 リーガルテックと弁護士法72条――第5回・完 弁護士法72条とODR(オンライン紛争解決システム) 松尾剛行(2022/07/13)

契約書作成・管理そのほか

リーガルテックと弁護士法72条
第5回・完 弁護士法72条とODR(オンライン紛争解決システム)

桃尾・松尾・難波法律事務所

弁護士 松 尾 剛 行

 

1 はじめに

 5回に渡って弁護士法72条とリーガルテックに関して検討する本連載の最終第5回として、以下、第1回(弁護士法72条とAIを利用した契約業務支援サービス)、第2回(弁護士法72条と法律文書等作成サービス)、第3回(弁護士法72条とチャットボット法律相談)及び第4回(弁護士法72条とリーガルリサーチツール)に引き続き、弁護士法72条とODR(オンライン紛争解決システム)について説明したい。

 この連載では、①これまでの通説的見解や法務省がそのグレーゾーン回答等で示してきた見解から導き出される範囲でどのような類型のリーガルテックが適法に行われ得るか、及び②そのような範囲では適法とまで言い切れないリーガルテックについてのルールメイキングの展望を説明してきた。

 かなり多くの類型のリーガルテックが①に該当するものの、今後の技術の進展に応じて、②の領域が増加し得るところであり、そのようなルールメイキングについては、ルールメイキング経験豊富な専門家と協業して解決を図るべきであろう。

 そして、ODRについても、①の類型が多いと考えられるものの、ODRを適法に行っていく上での実務上の留意点につき、以下説明していきたい。

 この原稿を書き上げた2022年7月8日に、新たなグレーゾーン回答が公表された[1]弁護士法72条のみについてわずか約1ヵ月程度の短期間に4つものグレーゾーン回答が公表されるというのは「異例」と言わざるを得ない。同時に、これは商事法務ポータルのこの連載の掲載という判断がまさに時宜に適ったものであることを示すものとも言えるだろう。よって、第1回の末尾に追記をすることとした。

 

2 ODRとは

 ODRは多義的な概念ではあるが、一般的には、IT・AI等の先端技術を用いたオンラインでの紛争解決手続を指すものと理解されている[2]

 新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、訴訟についてオンライン化が進んでいる。そして、仲裁や調停等のADRも、ウェブ会議形式で実施されることが増加しており、2021年11月1日付で「裁判外紛争解決手続きの利用促進に関する法律の実施に関するガイドライン」が、期日の実施方法として対面の方法に加えてウェブ会議等の方法を追加することが軽微な変更に該当する場合を示している[3]。また、2022年3月には「ODRの推進に関する基本方針~ODRを国民に身近なものとするためのアクション・プラン〜」(以下「ODR推進基本方針」という。)が公表され[4]、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」改正案に関する意見募集[5]の結果も公表された[6]

 弁護士法72条は「仲裁若しくは和解」も規制しており、ODRの特にADRフェーズはこれらの問題を孕むものの、ADR法に基づく認証を受けたADR機関が例えば和解斡旋をすることができること等は弁護士法72条の重要な例外である[7]

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(まつお・たかゆき)

桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー弁護士(第一東京弁護士会)、NY州弁護士
慶應義塾大学、中央大学、学習院大学、九州大学非常勤講師(2022年現在、就任順)

主な著書に
松尾剛行=西村友海『紛争解決のためのシステム開発法務――AI・アジャイル・パッケージ開発等のトラブル対応』(法律文化社、2022) ほか

主な論文に
「リーガルテックと弁護士法に関する考察」情報ネットワーク・ローレビュー18巻(2018)、「AIとガバナンス――企業統治の高度化・効率化にAIを役立てるという観点からの検討」商事法務2297号(2022) ほか

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