SH4041 リーガルテックと弁護士法72条――第3回 弁護士法72条とチャットボット法律相談 松尾剛行(2022/06/29)

そのほか契約書作成・管理

リーガルテックと弁護士法72条
第3回 弁護士法72条とチャットボット法律相談

桃尾・松尾・難波法律事務所

弁護士 松 尾 剛 行

 

1 法律相談と弁護士法72条

 5回に渡って弁護士法72条とリーガルテックに関して検討する本連載の第3回として、以下、第1回(弁護士法72条とAIを利用した契約業務支援サービス)及び第2回(弁護士法72条と法律文書等作成サービス)に引き続き、チャットボット法律相談サービスと弁護士法72条について検討していきたい。

 なお、2022年6月24日付で2つのグレーゾーン回答が公表された。この分野は昨年までのグレーゾーン解消制度の利用が3件と低調であったが、今年6月だけで3件ものグレーゾーン回答が公表されており、動きが速い分野である。読者の便宜のため、第2回の末尾に補記を付すことでキャッチアップを試みたことから、ご活用頂きたい。

 「鑑定」は「法律上の専門的知識に基づき法律事件について法律的見解を述べること」[1]であるところ、2018年論文において、一般に法律相談が「鑑定」に該当し得ること等を踏まえ、法律相談システムの弁護士法72条との抵触の可能性自体を一律に否定することは困難であると述べた。しかし、既にチャットボット法律相談サービスはリリースされている。

 ここで、ODR活性化検討会が2020年3月16日に公表した「ODR活性化に向けた取りまとめ」[2]22頁は「相談対応者による適法な相談業務の前段階として、相談者の相談内容の概要を把握・整理するために、チャットボット等の自動応答方式のIT・AI技術を活用することは、弁護士法との関係で、直ちに禁止されるものではないと考えられる。」とする。法務部門におけるチャットボットの利用の文脈においても、法律相談対応のDX化のためこのようなチャットボット等を利用することができるとされる[3]。ただし、これらはいずれも第三者に法律相談サービスを提供するという状況を念頭に置いたものではなく、自己利用の文脈の議論と思われる[4]

 以下では、自己利用ではなく、第三者に対してチャットボット法律相談サービスを提供する場合、つまり、弁護士法72条のリスクが大きい場合を念頭に置いて検討する。そして、結論としては、いくつかの類型のチャットボット法律相談サービスは適法なものであり得ると考える。

この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください


(まつお・たかゆき)

桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー弁護士(第一東京弁護士会)、NY州弁護士
慶應義塾大学、中央大学、学習院大学、九州大学非常勤講師(2022年現在、就任順)

主な著書に
松尾剛行=西村友海『紛争解決のためのシステム開発法務――AI・アジャイル・パッケージ開発等のトラブル対応』(法律文化社、2022) ほか

主な論文に
「リーガルテックと弁護士法に関する考察」情報ネットワーク・ローレビュー18巻(2018)、「AIとガバナンス――企業統治の高度化・効率化にAIを役立てるという観点からの検討」商事法務2297号(2022) ほか

タイトルとURLをコピーしました