金融庁、「サステナブルファイナンス有識者会議第二次報告書」を
公表
――広範な課題と各主体の取組みを整理・集約、関係省庁など連携の重要性を強調――
金融庁は7月13日、サステナブルファイナンス有識者会議(座長・水口剛高崎経済大学学長)において「サステナブルファイナンス有識者会議第二次報告書―持続可能な新しい社会を切り拓く金融システム―」を取りまとめたとし、公表した。
有識者会議は2020年12月25日、いわゆる2050年カーボンニュートラルの実現に向け、金融庁がその設置を発表。「日本企業は、そのための高い技術や潜在力を有しており、国内外の成長資金が、こうした企業の取組みに活用されるよう、金融機関や金融資本市場が適切に機能を発揮することが重要」であるとする観点から課題・対応案を検討するものとし、2021年1月25日に初会合を開いた(SH3468 金融庁、「サステナブルファイナンス有識者会議」の初会合を開催――CGコード・SSコードにも言及、ソーシャルボンド発行の実務指針を検討する会議体も設置へ (2021/02/02)既報)。以後、6月11日までに計8回の会合を開催、6月18日には第一次となる「サステナブルファイナンス有識者会議報告書―持続可能な社会を支える金融システムの構築―」を公表したものである。
2021年9月22日の有識者会議(第9回会合)からは第一次報告書において3つの柱とした(A)企業開示の充実、(B)市場機能の発揮、(C)金融機関の投融資先支援とリスク管理について、同報告書を踏まえ「それぞれ今後具体的な検討を進めていくに当たり、特段の留意点等はあるか」といった視点を軸として審議を再開。2022年6月27日の第13回会合までに計5回の会合を重ね、今般7月13日に第二次報告書を公表する運びとなった。「昨年6月以後のサステナブルファイナンスに関する施策の実施状況、国内外の動向変化、これらを踏まえた課題と施策の方向性等を取りまとめたもの」(本報告書「1.はじめに」参照)と位置付けられる。
本報告書・第2章に相当する「2.サステナブルファイナンスを取りまく諸課題」では(1)気候変動と脱炭素をめぐる動き、(2)生物多様性と自然資本をめぐる動き、(3)ガバナンスと社会課題をめぐる動き、(4)新しい資本主義を取り上げ、最近1年間における動向をこれらの各視点から整理して紹介。第3章「サステナブルファイナンスの取組みの進捗と課題」においては、まず(1)取組みと課題の全体像として、多岐にわたる課題・対応を取組みの主体ごとに簡潔に俯瞰したのち、第一次報告書で柱とした(2)企業開示の充実、(3)市場機能の発揮、(4)金融機関の投融資先支援とリスク管理につき、第一次報告書における提言を振り返りながら近時の動向を取りまとめて案内するとともに現時点における課題を逐次指摘している。
第3章の上記(3)市場機能の発揮では(a)機関投資家(アセットオーナー・アセットマネジャー)、(b)個人に対する投資機会の提供、(c)ESG 評価・データ提供機関、(d)情報プラットフォームといった各主体に関する動きをフォローするほか、(e)ソーシャルボンドを項目建て。有識者会議のもと、2021年3月3日に設置発表がなされた「ソーシャルボンド検討会議」の取組み、同年10月26日の「ソーシャルボンドガイドライン」の確定・公表、ソーシャルボンド検討会議のもとに設置された「ソーシャルプロジェクトのインパクト指標等の検討に関する関係府省庁会議」における検討および2022年5月30日公表後6月29日まで意見募集が行われた「ソーシャルプロジェクトの社会的な効果に係る指標等の例(案)」に敷衍しつつ、「今後は、同文書を含むガイドラインのより一層の普及等を通じて、民間企業におけるソーシャルボンドの発行の促進が図られること」への期待を表明するとともに「企業、証券会社、ESG評価・データ提供機関等の市場参加者に浸透を図りつつ、課題先進国でもある日本社会の課題解決に向けた取組みを集約したものとして、国際的にも発信していくことが望ましい」と述べた。
本報告書・第3章では続いて(5)横断的課題とし、第一次報告書で「第1章 総論」中に「2.横断的論点」として取り込んだ「受託者責任」などを拡充、次の6項目を掲げた。①受託者責任、②タクソノミーとトランジション、カーボン・クレジット、③インパクト、④技術開発と中小企業、気候変動スタートアップ、⑤データの収集・公表、⑥専門知見を有する人材の育成、多様なステークホルダーとの対話。⑥に絡んでは、高校・大学・大学院の授業を通じたサステナブルファイナンスに係る知見の提供、広く若い世代を含めた様々な世代・市民などとの対話といった視座を提示している。
第3章(6)フォローアップと対外発信では、有識者会議として「サステナブルファイナンスの施策の実施状況・全体像について、継続的にフォローアップを行」うことを表明するとともに「フォローを行っている施策の全体像や実施状況については、サステナブルファイナンスを取り巻く環境変化が著しいことを踏まえて、金融庁において随時更新していくことが望ましい」と指摘。加えて「関係省庁とも連携し、政府のサステナブルファイナンス政策の全体像やロードマップを適時に更新しつつ、一体的に発信していくことが望まれる」としてEUの例を挙げている。