SH4129 「SNS」プラットフォームに関する文献調査と日本への示唆(3・完) 福永啓太/後藤晃(2022/09/09)

電子商取引・プラットフォーム取引法務

「SNS」プラットフォームに関する文献調査と日本への示唆(3・完)

アリックスパートナーズ ディレクター
福 永 啓 太

東京大学名誉教授
アリックスパートナーズ アカデミックアドバイザー
後 藤   晃

 

目 次

1    要旨

2    はじめに
2.1  本稿の目的と構成
2.2  筆者について
2.3  用語の定義

3    「SNS」プラットフォームの競争を制限する力に関する検討
3.1  ネットワーク効果について得られる示唆
3.2  需要者のマルチホーミングについて得られる示唆
3.3  市場画定・市場シェアについて得られる示唆
3.4  個人情報保護と競争
3.5  「SNS」プラットフォームとイノベーション

4    「SNS」プラットフォームに関する日本の当局による調査の検討
4.1  内閣官房・デジタル市場競争会議「デジタル広告市場の競争評価 最終報告」
4.2  公取委「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」
4.2.1    SNS等のユーザーを需要者とする事業分野についての検討
4.2.2    事業者を需要者とする事業分野についての検討
4.3  日本の当局による調査についての批判的検討

5    結論

文献リスト

 

(承前)

4 「SNS」プラットフォームに関する日本の当局による調査の検討

 本章では、前章で検討したプラットフォームの競争を制限する力に係る考慮要素に照らし、日本の当局によって行われたいわゆる「SNS」プラットフォームに関する調査を批判的に検討する。まず、「SNS」プラットフォームに関する日本の当局による調査として、内閣官房・デジタル市場競争会議によるものと公取委によるものの概要を説明した後、続く4.3節でそれらの批判的検討を行う。

 

4.1 内閣官房・デジタル市場競争会議「デジタル広告市場の競争評価 最終報告」[33]

 内閣官房・デジタル市場競争本部が主催するデジタル市場競争会議は、広告主、パブリッシャー、アドテク、プラットフォームなどの関係者へのヒアリングを実施し、「デジタル広告市場」における市場構造、競争実態や課題を内閣官房最終報告としてまとめた(デジタル広告「市場」とされているが、必ずしも独禁法上の一定の取引分野が「デジタル広告市場」で画定されるとしている訳ではないようである)。

 同報告書は、大きく、取引の透明性に関する課題、データ取得・利用・提供に係る課題、利益相反・自社優遇に係る課題、取引条件の変更等、手続の公正性に関する課題などを取り上げている。その背景として、以下のように、デジタル広告市場が寡占になってきているという認識があることを強調している[34]

  1.  a.  プラットフォームが有する自社メディアの強さがレバレッジとなって、当該プラットフォームの広告主のカバレッジが拡大することにつながり、また、広告主のカバレッジの強さがOpen Display Market におけるパブリッシャーの獲得にもつながるという両面でのネットワーク効果が働き、寡占になってきている。
  2.  b.  プライバシー保護の意識の高まりから、企業間のユーザーデータの流通に対する制約が高まる中で、結果として、データが特定のプラットフォームに集中して、当該プラットフォームの比較優位につながり、上記の傾向の加速が懸念されている。
  3.  c.  以上のような状況の下、広告主、パブリッシャーなどのユーザーの多くが一部のプラットフォームを利用せざるを得ないと考えている中で、そうしたプラットフォームによる市場の設計や運用における影響力が強まっている。

 こうした認識は、上述の通り、主に関係者へのヒアリングに基づくものと考えられるが、別の根拠として、公取委「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」が挙げられている。例えば、「公取委最終報告においては、大きく以下3つの類型のプラットフォーム事業者がデジタル広告市場に存在することが指摘されており、こうしたプラットフォーム事業者は多くのユーザーを引き付けることで、膨大なデータを蓄積し、各市場において独占・寡占的な地位や有力な地位にあると評価されている。」としている[35]。そこで、次に、公取委の同報告書を取り上げ、いわゆる「SNS」に焦点を当てて検討する。

 

4.2 公取委「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」[36]

 2021年2月に公表された公取委報告書は、広告主、広告代理店、広告仲介事業者、媒体社などの事業者に対するアンケート調査、検索サービス利用者や「SNS」等利用者などの消費者に対するアンケート調査、事業者へのヒアリング調査に基づいて、デジタル広告分野におけるプラットフォームを取り巻く取引実態や競争の状況を明らかにし、指摘される問題及びそれに対する独占禁止法又は競争政策上の考え方を示すことを目的としている[37]。ここでは、市場における地位や優越的地位に関して公取委報告書が述べている主要な点を整理する。

 

4.2.1 SNS等のユーザーを需要者とする事業分野についての検討

 まず、SNS等のユーザーを需要者とする事業分野については、公取委報告書は、消費者の無料サービスや表示される広告に対する受け止め、ユーザーデータの利活用の理解の程度を、調査会社の消費者モニターに対するアンケート調査に基づいて分析している。そこでは、例えばSNS等の利用規約の認知や、どのような情報が広告表示の目的の下に収集・利用されているかの認識などについて調査されている[38]。しかし、消費者に対してプラットフォームが支配的地位や優越的地位を有しているか否かは明らかにされていない。代わりに、同報告書は、令和元年12月に公表された「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」に沿って、独占禁止法上の問題の有無を検討する際の次のような枠組みを提示する。

 同報告書は、「デジタル・プラットフォーム事業者がサービスの利用者である消費者に対し優越した地位にある場合とは,消費者がデジタル・プラットフォーム事業者から不利益な取扱いを受けても,消費者が当該デジタル・プラットフォーム事業者の提供する検索サービスやSNS等を利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合である」として、具体的に次のような場合を挙げる[39]

  1. (a) 代替可能なサービスが存在しない場合
  2. (b) 代替可能なサービスが存在するとしても当該サービスの利用をやめることが事実上困難な場合
  3. (c) 当該サービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者が,その意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の取引条件を左右することができる地位にある場合

 このうち(c)については、デジタル・プラットフォーム事業者が、当該サービスの分野において競争を実質的に制限できる地位にあるかどうかなど、当該デジタル・プラットフォーム事業者の市場における地位等を考慮して判断するとしている[40]

 そして、公取委報告書は、「SNS」等サービスにおいて,写真や書き込みなどのデータの移転が事実上困難であったり、当該サービスを利用する他の消費者と形成したネットワークを他の同種のサービスで代替することが事実上困難であったりする場合は、上記(b)に当たる可能性が高く、当該サービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者は,消費者に対し優越した地位にあると認められる蓋然性が高い、とする。また、利用者数等に照らし、検索サービスや「SNS」等において独占・寡占的な地位にあるデジタル・プラットフォーム事業者は、(c)に当たるとして、消費者に対し優越した地位にあると認められる蓋然性が高い、とする[41]

 さらに、消費者に対する濫用行為については、利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得する場合や、利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得又は利用する場合などを挙げ、個人情報の取得・利用の方法に着目している[42]

 このように公取委報告書は、消費者に対する支配的地位や優越的地位の有無を検討する際の考慮要素について説明するものではあるが、特定のプラットフォームに関して支配的地位や優越的地位の有無を認定するものではない。しかし同報告書は、以下で説明するように、複数のいわゆる「SNS」プラットフォームの利用実態についての情報を与えており、それによれば支配的地位や優越的地位がないことが示されているように思われる。

 公取委中間報告別紙2の70頁によれば、普段利用している「SNS」等[43]として、最も利用されているものはLINEで、その利用割合(回答者数のうち、普段、利用している「SNS」等として回答された数の比率)は83.6%に上る。次にTwitter、YouTubeが挙げられており、その割合はそれぞれ54.5%、57.5%である。さらにFacebook、Instagramが挙げられており、その割合はそれぞれ38.5%、37.8%である[44]。その次に多く利用されているのはニコニコ動画(12.7%)である。他のサービスとしてはPinterestやmixi、TikTok等があるが、これらの利用割合は4%、5.2%、4.0%等となっており、利用割合に較差が見られる。

 また、公取委中間報告別紙2の74頁によれば、普段利用している「SNS」等について、特定の利用目的に対して複数のサービスの使い分け(例えば、友人AとのメッセージングにはサービスA、家族とのメッセージングにはサービスB等)をしているかという問いに対して、複数のサービスを使い分けていると回答した消費者の割合は52.2%、複数のサービスを使い分けていない(1つの「SNS」等のみを利用している場合を含む)と回答した消費者の割合は47.8%という結果が得られている。つまり、およそ半分の割合の消費者が「SNS」の使い分けをしていると回答しており、「SNS」のマルチホーミングが行われている様子が窺える(ただし、ここでの質問では、特定の利用目的の内容を具体的に指摘していないことから、詳細なプラットフォームの利用目的ごとにマルチホーミングの状況を確認することはできない)。

 

4.2.2 事業者を需要者とする事業分野についての検討

 次に、広告主、広告代理店、広告仲介事業者、媒体社などの事業者に対する優越的地位に関する公取委の分析を見てみる。公取委報告書は、プラットフォームの取引の相手方の、プラットフォームに対する取引依存度、プラットフォームの市場における地位、当該取引の相手方にとっての取引先変更の可能性、その他プラットフォームと取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮して、優越的地位の有無を判断する、としている[45]

 プラットフォームの市場における地位については、ディスプレイ広告全体を分母としたとき、Google、Facebook及びYahoo!は、いわゆる所有・運営型の媒体としていずれも10-20%のシェアを占めており、これら3社は少なくとも所有・運営型市場における有力な地位にあるとする[46]。「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」第1部の3(4)で、市場における有力な地位と認められるかどうかについて、当該市場におけるシェアが20%を超えることが一応の目安とされていることがその理由のようである[47]。なお、ディスプレイ広告は販売チャネルの違いから、所有・運営型とオープン・ディスプレイに分類されるとしている[48]

 広告主等の需要者にとっての取引先変更の可能性、その他プラットフォームと取引することの必要性を示す具体的事実については、特に公取委報告書の中で詳しく触れられていない。しかし、公取委が行ったデジタル広告の取引実態に関する事業者向けアンケート調査結果[49]を見てみると、次のような結果が目を引く。

  1. (a) ほとんどの広告代理店にとって、売上割合上、Meta[50]が占める割合は低く、取引依存度は高くない。具体的には、広告代理店のデジタル広告事業による売上額に占める、Metaとの取引における売上額の割合は、0%が15.4%、0%超10%以下が61.5%、10%超30%以下が12.8%となっている。つまり、75%強の広告代理店についてMetaとの取引における売上額の割合が1割以下であり、約90%の代理店についてMetaとの取引における売上額の割合が3割以下となっている[51]
  2. (b) ほとんどの広告主にとって、デジタル広告費の割合上、Metaが占める割合は低く、取引依存度は高くない。具体的には、広告主のデジタル広告費に占める、Metaとの取引における支出額の割合は、0%が28.2%、0%超10%以下が39.4%、10%超30%以下が26.8%となっている。つまり、広告主の70%弱についてMetaとの取引における支出額の割合が1割以下であり、広告主の90%強についてMetaとの取引における支出額の割合が3割以下である[52]

 

4.3 日本の当局による調査についての批判的検討

 前章で見たように、海外当局による報告書等では、実証的分析が不足している面が否めないものの、プラットフォームの市場支配力の有無に関係するマルチホーミングなどの要因は認識されており、実際に検討もされている。さらに、CMA報告書やAkman (2021)、PPMI (2021)のように、マルチホーミング等の状況に関して、アンケート調査や需要者の実際の行動に関するデータなどを用いて実証的分析を行うものも見られる。

 これに対して、プラットフォームが独占・寡占的な地位や有力な地位にあることの根拠として内閣官房最終報告が参照する公取委報告書は、消費者や広告主のマルチホーミングやスイッチングの実態を分析することよりも、消費者・広告主等のステークホルダー間の取引関係などについて一般的な理解を深めることや、消費者や広告主の認識を調査し整理することに特に力点を置いているように見受けられる。しかし、そうした需要者の実際の利用方法や振る舞いを客観的な方法で理解するためには、需要者の「認識」の調査だけでは不十分で、例えばマルチホーミングやスイッチングに関して、需要者の実際の利用方法や振る舞いについての詳細な実証的分析が必要である。

 公取委中間報告別紙2などで、限定的ながらも明らかにされた実態からは、SNSのユーザーに対しては、Metaの日本におけるプレゼンスが限定的である可能性が示唆される。4.2.1で説明したように、普段利用している「SNS[53]」として、日本で最も利用されているものはLINEで、その利用割合(回答者数のうち、普段、利用している「SNS」等として回答された数の比率)は83.6%に上る。次にTwitter(54.5%)、YouTube(57.5%)が挙げられており、Facebook(38.5%)、Instagram(37.8%)と続く。LINEのプレゼンスが大きいことは日本の一つの特色である。また、Iansiti (2021)も指摘するように[54]、Twitterのプレゼンスが比較的大きいことも日本の特色である。このように、いわゆる「SNS」についてMetaよりも競争力がある可能性があるプラットフォームが複数存在し、Metaに競争圧力を与えている可能性がある。

 さらに、4.2.1で説明したとおり、特定の利用目的に対して、複数のサービスを使い分けていると回答した消費者の割合は52.2%という結果が得られている。詳細なプラットフォームの利用目的ごとのマルチホーミングの状況を確認することはできないものの、SNSのマルチホーミングが相当程度行われている様子が窺える。

 以上のように、現在利用可能な調査結果に基づけば、有力な競争事業者の存在、ユーザーによるマルチホーミングの程度などから、日本において、Metaが競争を制限する力や優越的な地位を有しているといえるかどうかは議論の余地がある。今後、ユーザーにとって利用可能な代替的サービスの有無や代替の程度、マルチホーミングやスイッチングの容易性といった点について、さらなる調査・分析が望まれる。

 次に、広告主、広告代理店、広告仲介事業者、媒体社などの事業者を需要者とする事業分野を検討する。公取委中間報告別紙1の17~18頁によれば、Meta[55]と取引する広告主において、自社のデジタル広告費に占めるMetaへの支出額の割合が10%以下である広告主の割合が67.6%、30%以下である広告主の割合が94.4%に上った。回答数が71と小さいという難点はあるが、広告主のMetaに対する取引依存度が小さいことを窺わせる結果といえる。なお、広告代理店についての結果も同様にMetaに対する取引依存度が限定的であることを窺わせる結果が得られている[56]

 Metaの市場シェアについては、ディスプレイ広告全体を分母としたとき、所有・運営型の媒体として10-20%のシェアを占めており、Metaは少なくとも所有・運営型市場における有力な地位にあるとしている[57]。ただし、公取委報告書の図8-2によれば、Google、Yahoo!といった有力な事業者のほか、「その他」が30-40%、TwitterとLINEがそれぞれ5-10%含まれており、また、「その他」には、例えば楽天[58]やAmazon[59]のような、より顧客の購買行動に近いオンラインショッピングの分野で多数の顧客を擁する事業者が含まれていると考えられる[60]。楽天やAmazonは、ディスプレイ広告に関してはMetaなどよりも後発かもしれないが、自らの顧客基盤を生かして強い競争力を有し、Metaのような既存の広告サービス事業者に対して競争圧力となる可能性がある。

 また、そもそも、所有・運営型とオープン・ディスプレイで市場を分けることの理由について、販売チャネルが異なることが指摘されているだけで、特に広告主等の需要者にとっての代替性の観点から詳細に検討されているとはいえない。このため、上記の市場シェアの状況を競争の程度を示す指標として用いることには疑問がある。

 以上のように、現在利用可能な調査結果に基づけば、広告主、広告代理店、広告仲介事業者、媒体社などの日本における事業者についても、①有力な競争事業者が存在すること、②広告主や広告代理店のMetaに対する取引依存度が小さいことから、Metaが競争を制限する力や優越的な地位を有しているとは結論できない。内閣官房最終報告は、公取委報告書に依拠しながらデジタル広告分野が寡占化されていると結論づけているが、その根拠は薄弱ということになる。今後、広告主等にとって利用可能な代替的サービスの有無や代替の程度、マルチホーミングやスイッチングの容易性といった点について、さらなる調査・分析が望まれる。

 

5 結論

 本稿では、Metaのようないわゆる「SNS」プラットフォームが日本において競争を制限する力を有するといえるか否かを検討するために、検討の際の重要な考慮要素を中心に、海外当局による調査報告書や経済学文献について文献調査を行った。

 デジタル分野はビジネスモデル、技術などで他の産業と異なる点があり、これらについての研究、事例の蓄積も行われている途上である。デジタル分野における競争に関して蓄積されてきた知見を、デジタル分野における競争法執行の枠組みに当てはめ、従前から競争法における分析で使われてきた市場シェアなどの分析ツールをプラットフォームの競争実態に合わせて適切に調整したり、新たな分析ツールの開発の必要性を検討したりする必要がある。

 デジタル分野における競争状況を評価するに当たっては、マルチホーミング(消費者が複数のプラットフォームを並行して利用すること)が重要な考慮要素と理解されている。しかし、他の要素(例えば、いわゆるネットワーク効果やスイッチングコスト)も含め、こうした重要な考慮要素についての理論的な検討は進められてきたものの、実証面では未だわかっていないことが多い。こうした点に関する実証的な研究は理論的な検討を確認するために必要である。とりわけ、有力な競争者の存在やマルチホーミングの程度に鑑みれば、日本の「SNS」に関して、ネットワーク効果が強く働くことや、ひいてはそれによりMetaが競争を制限する力を有することを、一般的な前提として想定するべきではない。少なくとも、現在利用可能な調査結果に基づけば、日本においては、「SNS」のユーザーに対しても、広告主、広告代理店、広告仲介事業者、媒体社などの事業者に対しても、Metaが競争を制限する力や優越的な地位を有していることを支持しない。

 日本における市場画定、市場における支配的地位や優越的地位の有無、競争の実質制限の有無は、オンラインプラットフォームに関する個別の実態調査に基づいて判断されるべきである。その際には、日本でビジネスを行う多様なプラットフォーム間の競争関係や需要者の利用実態に関し、理論的検討から得られる示唆に基づいて、マルチホーミングやスイッチングの状況、ネットワーク効果の程度や働き方を中心に、客観的な調査・実証分析が行われるべきである。

以 上

 

文献リスト

  1. 英文
  2. Acquisti, Alessandro, Curtis Taylor, and Liad Wagman. “The economics of privacy.” Journal of Economic Literature 54, no. 2 (2016): 442-92.
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  6. Crémer, J., Yves-Alexandre de Montjoye, and Heike Schweitzer. Competition Policy for the Digital Era, Europe Commission, 2019, https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/kd0419345enn.pdf(2022年9月5日閲覧).
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  9. Iansiti, Marco. “Assessing the Strength of Network Effects in Social Network Platforms.” Working Paper 21-086, Harvard Business School, 2021.
  10. Katona, Zsolt, Peter Pal Zubcsek, and Miklos Sarvary. “Network effects and personal influences: The diffusion of an online social network.” Journal of marketing research 48, no. 3 (2011): 425-443.
  11. Mandel, Michael. “The Declining Cost of Advertising. Progressive Policy Institute.” 2019.
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  14. Scott Morton, Fiona M., Pascal Bouvier, Ariel Ezrachi, Bruno Jullien, Roberta Katz, Gene Kimmelman, A. Douglas Melamed, and Jamie Morgenstern. Market Structure and Antitrust Subcommittee Report, Stigler Committee on Digital Platforms, Stigler Center for the study of the Economy and the State, The University of Chicago Booth School of Business, 2019,
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  15. Varian, Hal R. “Seven deadly sins of tech?.” Information Economics and Policy 54 (2021): 100893.

 

  1. 和文
  2. 経済産業省、「デジタルプラットフォーム取引透明化法の対象追加(デジタル広告市場)について①」、内閣官房・デジタル市場競争会議 ワーキンググループ配布資料1、令和3年7月(https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/siryou1.pdf(2022年9月5日閲覧)
  3. 公正取引委員会「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」、令和3年2月17日(https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/210217_hontai_rev.pdf)(2022年9月5日閲覧)
  4. 公正取引委員会「【詳細版】デジタル広告の取引実態に関する 事業者向けアンケート調査結果」、令和2年4月28日(「デジタル広告の取引実態に関する中間報告書」の別紙1)(https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/200428besshi1.pdf)(2022年9月5日閲覧)。
  5. 柴田潤子=東條吉純「オンラインプラットフォームにおける搾取型濫用行為規制の理論~フェイスブックケース(ドイツ連邦カルテル庁決定)を手掛かりとして~」公正取引委員会競争政策研究センター CPRCディスカッション・ペーパーCPDP-82-J(2021)
  6. 島村健太郎「ドイツ競争制限禁止法における市場支配的なデジタルプラットフォーム事業者の濫用行為規制について」一橋法学18巻2号(2019)
  7. 内閣官房・デジタル市場競争会議「デジタル広告市場の競争評価 最終報告」、令和3年4月27日(https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/siryou3s.pdf)(2022年9月5日閲覧)
  8. 舟田正之「ドイツ・フェイスブック事件――濫用規制と憲法・民法(詳細版)」(https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/funadagermanyFBdetail.pdf)(2022年9月5日閲覧)

 

  1. ウェブサイト
  2. Amazon「Amazon DSPの紹介」
    https://advertising.amazon.com/library/courses/introduction-to-amazon-dsp?ref_=a20m_us_p_dsp_rs_lbr_crs_introdsp(2022年9月5日閲覧)
  3. Body of European Regulators for Electronic Communications. “What is BEREC?”
    https://berec.europa.eu/eng/about_berec/what_is_berec/(2022年9月5日閲覧)
  4. Bugajski, Milosz. “Japan’s Top Social Media Networks for 2021,“ Humble Bunny、2021年3月1日(https://www.humblebunny.com/japans-top-social-media-networks/#facebook)(2022年9月5日閲覧)
  5. MeWe https://mewe.com/(2022年9月5日閲覧)
  6. Mickle, Tripp and Georgia Wells「アップル、デジタル広告事業拡大へ 成長戦略をシフト」Wall Street Journal、2018年6月2日(https://jp.wsj.com/articles/SB12595519692601324368904584260481287407594)(2022年9月5日閲覧)
  7. Snapchat https://www.snapchat.com/
  8. Wakefield, Jane, “Google moves to make Android apps more private,” BBC News, February 16, 2022(https://www.bbc.com/news/technology-60403963)(2022年9月5日閲覧).
  9. アイティメディア「ソーシャルサービス「Path」終了へ」、2018年09月19日(https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1809/19/news106.html)(2022年9月5日閲覧)
  10. 公取委取引委員会「デジタル・プラットフォーム事業者の取引慣行等に関する実態調査(デジタル広告分野)について(中間報告) 」、令和2年4月28日(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/apr/200428_1.html)(2022年9月5日閲覧)
  11. 公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」、平成29年6月16日(https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/ryutsutorihiki.html)(2022年9月5日閲覧)
  12. 公正取引委員会「令和3年 委員長と記者との懇談会概要(令和3年10月)」、令和3年11月19日更新(https://www.jftc.go.jp/houdou/kouenkai202009-/211028kondan.html)(2022年9月5日閲覧)
  13. 楽天「RMP – Display Ads」、2021年11月11日更新(https://adsales.rakuten.co.jp/products/rmp_display_ads/)(2022年9月5日閲覧)

 


[33] 内閣官房・デジタル市場競争会議「デジタル広告市場の競争評価 最終報告」令和3年4月27日(https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/siryou3s.pdf)。以下、「内閣官房最終報告」という。

[34] 内閣官房最終報告 26~27頁。

[35] 内閣官房最終報告 33頁。なお、後述するように、公取委最終報告においても需要者の代替性の観点から一定の取引分野の画定が十分検討されているとはいえないと筆者らは考える(4.3参照)。

[36] 公正取引委員会「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」令和3年2月17日
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/210217_hontai_rev.pdf)。以下、「公取委報告書」という。

[37] 公取委報告書 6~8頁。

[38] 公取委報告書 110~114頁。

[39] 公取委報告書 117頁。

[40] 公取委報告書 117頁。

[41] 以上、公取委報告書 117頁。

[42] 公取委報告書 117頁。

[43] LINE、Facebook、Instagram、Twitter、YouTube、Pinterest、LinkedIn、WhatsApp、WeChat、カカオトーク、Snapchat、TikTok、mixi、ニコニコ動画、が明示的に含まれる。

[44] Facebook Messengerについては、選択肢に明示的に含まれていないが、Q12で、「普段利用しているSNS等について,特定の利用目的に対して複数のサービスの使い分け(例えば,友人AとのメッセージングにはサービスA,家族とのメッセージングにはサービスB等)をしていますか。」と質問がされていることから、Facebook Messengerを使っているユーザーは、「Facebook」か「その他」を選択したと思われる。

[45] 公取委報告書 48頁。

[46] 公取委報告書 23頁。

[47] 以上、公取委報告書 46頁。

[48] 公取委報告書 11頁。

[49] 公正取引委員会「【詳細版】デジタル広告の取引実態に関する事業者向けアンケート調査結果」令和2年4月28日(「デジタル広告の取引実態に関する中間報告書」別紙1)(https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/200428besshi1.pdf)。

[50] 公正取引委員会・前掲注[49] 調査結果で、回答者が取引している取引先としてFacebookを挙げている場合の数字。以下同様。

[51] 公正取引委員会・前掲注[49] 調査結果 16頁。

[52] 公正取引委員会・前掲注[49] 調査結果 18頁。

[53] 公取委報告書の定義による。脚注[43] 参照。

[54] Iansiti (2021)、11~12頁。

[55] 調査時はMetaへの社名変更前であり、報告書の中ではFacebookと表記されている。以下同様。

[56] 公正取引委員会・前掲注[49] 調査結果 15~16頁。

[57] 4.2.2参照。

[60] また、The Wall Street Journalの記事によれば、アップルもデジタル広告事業を拡大するとのことである(https://jp.wsj.com/articles/SB12595519692601324368904584260481287407594)。

 


(ふくなが・けいた)

コンサルティング会社、公取委企業結合課を経て、現在、アリックスパートナーズの日本における法規制関係のコンサルティングチームのリーダーを務める。独禁法事案や商事紛争事案を中心に経済分析コンサルティングサービスを提供している。

 

(ごとう・あきら)

一橋大学経済学部教授、東京大学先端科学技術研究センター教授などを経て、2007年から2012年まで公正取引委員会委員を務める。その後、政策大学院大学教授を経て、現在、アリックスパートナーズのアカデミックアドバイザーとして独禁法事案を中心に経済分析に関するアドバイスを行っている。
主要な日本語の著作は、『日本の産業組織と技術革新』(東京大学出版会、1993)、『イノベーションと日本経済』(岩波書店、2000)、『独占禁止法と日本経済』(NTT出版、2013)、『イノベーション 活性化のための方策』(東洋経済新報社、2016)など。

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