SH4143 「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」策定 横井傑/秋野博香(2022/09/27)

組織法務経営・コーポレートガバナンス

「責任あるサプライチェーン等における人権尊重の
ためのガイドライン」策定

アンダーソン・毛利・友常法律事務所

弁護士 横 井   傑

弁護士 秋 野 博 香

 

1 はじめに

 日本政府は、2022年9月13日、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」[1](以下「人権尊重ガイドライン」という。)を策定した。

 人権尊重ガイドラインは、経済産業省が主導して同年3月より有識者を集めて検討が進められ、同年8月8日に原案が公表されてパブリックコメントに付された後、最終的に日本政府のガイドラインとして発行された。3週間という限られたパブリックコメント期間で、131の個人・団体から意見が寄せられており[2]、人権尊重ガイドラインに対する各界からの高い関心が伺える。

 本稿では、①日本企業にとっての人権尊重ガイドラインの意義、②人権尊重ガイドラインの全体像、③企業が進むべき方向性について解説を加える。

 

2 日本企業にとっての人権尊重ガイドラインの意義

 人権尊重ガイドラインは、あくまでガイドラインであって法令ではなく、法的拘束力は持たない。その策定の目的は、「ビジネスと人権」分野における既存の国際スタンダード、特に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」[3]、OECD多国籍企業行動指針[4]、ILO多国籍企業宣言[5]につき、日本で事業活動を行う企業の実態に即してわかりやすい解説をし、企業の理解の深化を助け、その取組を促進することにある(人権尊重ガイドライン1.1)。したがって、人権尊重ガイドラインは、新しく法律上または事実上のルールを設定したり、既存の実務に変更を迫ったりするものではなく、すでにこの分野の取組が進んでいる企業にとっては確認的な意味合いしかない。

 他方で、人権尊重ガイドラインは、日本政府として、2020年10月に定めた「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)[6]からさらに一歩具体的な指針を示すものであり、これから「ビジネスと人権」問題の取組を勧めていく企業にとっては参考となる有益な示唆が数多く含まれた資料といえる。

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(よこい・すぐる)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2005年慶大法学部卒業。2009年早大ロー修了。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2020年Georgetown Law(LL.M)修了。元AMT北京オフィス・上海オフィス代表。2021年より香港提携事務所Nakamura & Associates外国法登録弁護士。主な取扱分野は、中国・香港法務、経済安全保障・通商法務等。

 

(あきの・ひろか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2018年慶應義塾大学法学部卒業。2019年東京大学法科大学院中退。2020年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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