SH4260 文化審議会著作権分科会法制度小委員会、著作権法改正案に関する報告書(素案)を公表 後藤未来/鷲見彩奈(2022/12/29)

取引法務特許・商標・意匠・著作権

文化審議会著作権分科会法制度小委員会、
著作権法改正案に関する報告書(素案)を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 後 藤 未 来

弁護士 鷲 見 彩 奈

 

1 はじめに

 筆者らの別稿[1]でも紹介したとおり、現在、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(以下「本委員会」という。)では、以下の4つの事項について著作権法改正の検討が進められている。今般、令和4年12月付で「文化審議会著作権分科会法制度小委員会報告書(素案)」(以下「本報告書(素案)」という。)[2]が公表された[3]ため、以下その内容を概観する。

  簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化について
 ② 立法・行政・司法のデジタル化に対応した著作物の公衆送信等について
 ③ 損害賠償額の算定方法の見直しについて
 ④ 研究目的にかかる権利制限規定の検討について

 

2 簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化について

 ⑴ 新制度創設に向けた議論の背景

 メタバースといった新たなデジタル空間におけるコンテンツの利用可能性の増大等、昨今、著作物の円滑な利用の必要性が一層高まりをみせている。現行法上、著作権が有効に存続する著作物を適法に利用するためには、原則としてその権利者の許諾を得る必要がある。しかし、権利化に登録を要する特許権等と異なり、著作権は登録を要しないため、権利者の探索が容易でないケースも少なくない。また、権利者を特定できて連絡した場合であっても、応答がなく利用の諾否が分からない等、許諾を得ることが実際上困難なケースもあり得る。そこで、権利者の探索の負担を軽減し、許諾の取得が困難な場合でも著作物の適法な利用を実現することで円滑な著作物の利用を図るための、新しい権利処理の仕組み(以下「新制度」という。)について、検討が重ねられてきた。

 新制度のイメージ図は、以下のとおりである。

※出典:本報告書(素案)4頁

 

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(ごとう・みき)

 

 

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。

 

(すみ・あやな)

 

 

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2014年東京大学法科大学院卒業。2015年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主な取扱い分野は、知的財産法、個人情報保護法。

 

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