SH4299 「担保法制の見直しに関する中間試案」について 粟田口太郎(2023/02/01)

取引法務担保・保証・債権回収

「担保法制の見直しに関する中間試案」について

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 粟田口 太 郎

 

1 はじめに

 わが国では、金融機関・貸金業者の貸付債権や、動産売主の売買代金債権等を担保するために、古くから、動産・債権譲渡担保や所有権留保が活用されている。しかし、これらの担保手法は、「非典型担保」と総称されるとおり、その実務上の重要性にもかかわらず、明治以来、実体法・手続法に成文の具体的な規定を欠いたまま、今日に至っている。このため、かねてより動産・債権担保法制の必要性が繰り返し指摘されていたところ、このような規定の欠如は、わが国の資金調達インフラに対する国際的な低評価をも招くに至っていた。

 このような背景の下で、ついに2019年に立法に向けた動きが始動し、2021年に法務省法制審議会に担保法制部会が設けられ、2022年12月に「担保法制の見直しに関する中間試案」(以下「中間試案」という。)[1]がとりまとめられた。中間試案は、2023年1月20日に「担保法制の見直しに関する中間試案の補足説明」(以下「補足説明」という。)[2]とともに公表され、同年3月20日までを期限とするパブリックコメントに付された。

 中間試案で提案されている事項には、「倒産手続開始後に生じ、又は取得した財産に対する担保権の効力」(第19)を始め、実務および理論上激しく争われてきた重大な未解決論点に決着を付けようとする内容も含まれているほか、金融庁・中小企業庁において並行して進められていた新たな担保法制のあり方に関する検討および提言をも受けて、企業担保とも財団抵当とも異なる、事業そのものに対する新たな包括担保権(事業担保権)の創設に関する内容が含まれている。

 このため、このたびの立法は、広く事業者(特に担保に携わる事業者)にとって、近時の民事立法のなかでもとりわけ影響の大きいものとなることが予想され、このたびのパブリックコメントにおいて事業者各位が担保制度のあり方につき自ら悔いなく積極的に意見を表明しておくことの重要性は極めて大きいと思われる。

 本稿は、中間試案の速報として、ポイントを絞って概観するものである。

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(あわたぐち・たろう)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー弁護士。2019年から2021年まで、公益社団法人商事法務研究会「動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会」委員。会社法務、金融法務、事業再生・倒産法務に横断的に従事。ABL協会理事・運営委員長。武蔵野大学大学院法学研究科(ビジネス法務専攻)特任教授。

 

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