SH4339 ベトナム:不動産事業法改正草案(下)――外資企業にはより高い障壁か? 井上皓子(2023/03/03)

不動産法

ベトナム:不動産事業法改正草案(下)

ー外資企業にはより高い障壁か?ー

 

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 井 上 皓 子

(承前)

5 不動産取引契約ひな形の導入

 改正草案では、不動産事業及び不動産サービス事業に用いる契約は書面によらなければならないとし、政府がひな形を定めるとしている。対象となる具体的な契約類型やひな形については規定はない。ただし、不動産事業に関する契約にかかるひな形は、政令02号ですでに導入されており、2022年3月1日以降このひな形が適用されている。改正草案の下で定められることになるひな形も、政令02号に定められているものと同様となるものと推測される。なお、政令02号では、ひな形はあくまでも標準様式であり、当事者間での異なる合意も認められているとされるが、特にプロジェクト譲渡等、当局承認が必要なものについては、ひな形に則っていない契約では承認が得られない可能性が残されており、改正草案の検討過程においても今後課題が出てくることが予想される。

 

6 不動産サービス事業の種類・条件

 現行法と同じく、改正草案でも、外資企業は、内資企業と同様に、法に定める①不動産仲介、②不動産取引所、③不動産コンサルティング、④不動産管理の全ての不動産事業サービスを行い得る(ただし外資規制には服する)。

 これらのうち、①不動産仲介については、2案が提示されパブリックコメントが求められている。案1としては、個人が仲介する場合にはライセンスを取得したうえで仲介所を通した取引のみを認めるというものを新たに提案するものであり、案2は現行法の規制の維持(原則として2名以上の有資格者を有する法人を設立した者のみ仲介業を行うことができるが、個人がライセンスを取得し、あらかじめ税務当局に租税納入登録をしなければならない)である。

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(いのうえ・あきこ)

2008年東京大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院修了。2011年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2018~2020年、長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス勤務。日本における人事労務対応、紛争・不祥事対応、ベトナムにおける日本企業の事業進出・人事労務問題等への法的アドバイス、現地における企業活動に関する法務サポートを行っている。

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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