意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~
第16回 内部公益通報受付窓口(5)
森・濱田松本法律事務所
弁護士 金 山 貴 昭
Q 不正調査と公益通報者保護法
当社では、社内監査において違法行為の可能性が検知されたので、社内の調査チームを立ち上げて不正調査を実施することになりました。社内調査チームでは、調査の一環として、従業員に対してアンケート調査やホットラインを設置して、情報の収集を行うこととしました。このような調査について、公益通報者保護法上、留意すべき点はあるでしょうか。
A 【ポイント】
ホットラインについては、公益通報者保護法上の内部公益通報受付窓口の設置に該当する可能性があり、内部公益通報受付窓口に該当する場合には、ホットラインの受付担当者を公益通報対応業務従事者に指定するなどの対応が必要となります。他方で、当該ホットラインを内部公益通報受付窓口として取り扱わないようにするためには、その旨を明示する必要があります。 また、アンケート調査への回答については、形式的には内部公益通報受付窓口に対する通報には該当しないと考えられますが、アンケート調査に基づく回答も内部公益通報に該当しえますので、アンケート回答者を特定させる事項については、必要最小限の範囲を超えて共有(範囲外共有)しないように留意が必要です。 |
【解説】
1 不正調査におけるホットライン調査とアンケート調査
企業において不正が発覚した場合、不正に関する事実関係の確認や原因分析・再発防止策の策定のための調査を実施します。このような不正調査の一環として、ホットラインを設置して発覚した不正や類似する事案等の不正に関する情報提供を求めたり、一定の範囲の従業員に対してアンケート調査を実施することがあります。
このようなホットライン調査やアンケート調査は、従業員から不正に関する情報提供を求めるものであり、このようなホットラインへの通報やアンケート調査への回答が、公益通報者保護法との関係でどのような位置づけとなるのか、具体的には、不正調査におけるホットラインへの通報やアンケートへの回答が、公益通報者保護法上の公益通報に該当するか、また、内部公益通報受付窓口への内部公益通報と位置付けられるのかが問題となります。
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(かなやま・たかあき)
弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。
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