中国:ゼロコロナ政策の終焉と今後の法的問題(上)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 若 江 悠
1 青天の霹靂
中国では時として突然に、人々に準備を許さずに、必然的に生ずる混乱をいとわず、がらっと異なる政策が導入される――中国の法令と政策の動きについて日々情報収集している日本弁護士としては情けない言い訳ではあるが、2022年12月7日午後、国務院聯防聯控メカニズムが「新十条」を発表し、このタイミングで中国がゼロコロナ政策(「動態清零」)から一気に転換することになるとは、一介の法律家はおろか、内外のほとんどの識者が予想できなかったことも事実である。
「新十条」では、病院や学校などを除きPCR検査の陰性結果や健康コードの提示を求めない、濃厚接触者に加え無症状や軽症の感染者についても自宅隔離を認める(ただし、濃厚接触者は5日目のPCR検査で陰性、感染者は6日目と7日目にCt値35以上となってはじめて隔離解除とされる)、他方で、感染リスクが高い高齢者や基礎疾患をもつ「重点人群」を分類管理しワクチン接種状況などを確認し、感染したときは優先して病院で治療する、などの措置が規定された。その後、メディアやSNSなどを通じて、中国のファウチとも呼ばれる鐘南山氏はじめ、有名な専門家や医師が「オミクロン株は重症化しないから自宅で隔離していれば大丈夫」、「中国全土で今後人口の70~90%以上が感染することになる」などの見通しを表明し、政策転換にお墨付きを与え、ゼロコロナ政策が染みついた人々の意識を一気に変えようとしていることがうかがえる。
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(わかえ・ゆう)
長島・大野・常松法律事務所パートナー。2002年 東京大学法学部卒業、2009年 Harvard Law School卒業(LL.M.、Concentration in International Finance)。2009年から2010年まで、Masuda International(New York)(現 NO&Tニューヨーク・オフィス)に勤務し、2010年から2012年までは、当事務所提携先である中倫律師事務所(北京)に勤務。 現在はNO&T東京オフィスでM&A及び一般企業法務を中心とする中国業務全般を担当するほか、日本国内外のキャピタルマーケッツ及び証券化取引も取り扱う。上海オフィス首席代表を務める。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。
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