☆タイ:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 佐々木将平(2020/04/17)

2020年4月16日号
タイ:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

              長島・大野・常松法律事務所

弁護士 佐々木  将平

はじめに

 緊急事態宣言の発令以降、大都市圏の多くの企業が急速なテレワークへの切替えや事業体制の見直しに追われる一方、3月決算企業では決算・監査対応を中心に多くの課題が生じるなど、事業への影響は日々拡大しています。多くの海外地域においては引き続き厳格な外出制限や営業禁止等のロックダウン措置が継続している一方、一部地域においては行動制限の軽減・解除に向けた議論が始まるなど出口戦略の模索も始まりつつあります。

 本記事では速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年4月15日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者41人、感染者数:2,613人(4月14日現在)

 3月中旬以降急速に感染が広がったが、直近1週間は1日あたりの新規感染者数がほぼ50人以下の日が続いている。3月25日の非常事態宣言の発令後、商業施設(スーパーマーケット及びテイクアウト向けのレストラン営業を除く。)の閉鎖、夜間外出禁止等の措置がとられているが、工場閉鎖や外出禁止等を伴う完全なロックダウンには至っていない。4月13日から15日の予定であったタイ正月(ソンクラン)の祝日は延期となった(延期後の日程は未定)。

 

主な政府発表

  1. ・ 2020年3月26日以降にビザの滞在許可の期限が到来する全ての外国人について、滞在期間が4月30日まで自動的に延長された。また、入国管理局への90日毎の居住報告(90日レポート)も4月30日まで一時的に免除される。
  2. ・ 各県における酒類販売の禁止(バンコクの場合、4月10日から4月20日までの期間)。
  3. ・ 夜間外出禁止令の適用除外業種の明確化(4月10日付け勅令)。「シフト制で働く者、公務、民間、工場もしくは警備といった従来から夜間に交代する必要のある勤務に従事する者」は対象外であることが明記されている。
  4. ・ 社会保険の支払期限の延長に関する労働省布告(4月9日付け布告、10日付け官報掲載)。3月から5月分の保険料支払期限を3か月延長。
  5. ・ 社会保険拠出金の引き下げに関する労働省布告(4月10日付け布告、13日付け官報掲載)。3月から5月分の保険料率を、雇用者負担分は4%、被雇用者負担分は1%に引き下げる(現状はいずれも5%)。6月から8月分については、いずれも4%に引き下げる。過払分は還付請求可能。

 

渡航情報

  1. ・ 非常事態宣言の発令に伴い、3月26日以降、外国人の入国が原則として禁止されている。
  2. ・例外的に、労働許可証の保有者は健康証明書(Fit-to-Fly。搭乗に適した体調であることの証明書)の提示により入国が認められる。また、タイ外務省の4月12日付けの通知により、出発国のタイ大使館又はタイ総領事館が発行したタイへの入国許可証も求められることとなった。他方、在タイ日本大使館の情報によれば、就労ビザのみ保有している者(労働許可証の未取得者)や労働許可証保有者の同伴家族の入国は、原則通り認められていないということである。
  3. ・ 4月2日付けの当局の対応策に基づき、日本を含むリスク地域からの渡航者で、バンコク及び近隣地域の居住者に対しては、ホテルや軍施設等の指定施設での隔離が義務付けられることとなっている。自宅での隔離を希望する場合には、陰性証明書の提示が求められる。
  4. ・ タイ国際航空は5月31日まで国内線及び国際線の全便の運休を決定しており、日系航空会社も日タイ間の国際線を減便している。
  5. ・ 4月4日以降、国際旅客便のタイへの飛行が一時的に禁止されており、タイ人も含めタイへの渡航は原則不可能な状況となっている。当該措置の期限は4月18日までであったが、4月30日までの延長が発表された。

 

その他

  1. ・ 4月1日以降、商務省事業開発局に対する財務諸表及び株主リストの登録は、オンラインシステム(DBD e-Filing)を通じた申請のみが認められることとなった。従来は、提出期限後7日以内にDBD e-Filingでの登録を行うことを条件に、ハードコピーでの提出が認められていたが、今後は提出期限(年次株主総会における財務諸表の承認後1か月以内)までにDBD e-Filingで登録を行う必要がある。

 

(ささき・しょうへい)

長島・大野・常松法律事務所バンコクオフィス代表。2005年東京大学法学部卒業。2011年 University of Southern California Gould School of Law 卒業(LL.M.)。2011年9月からの約2年半にわたるサイアムプレミアインターナショナル法律事務所(バンコク)への出向経験を生かし、日本企業のタイ進出及びM&Aのサポートのほか、在タイ日系企業の企業法務全般にわたる支援を行っている。タイの周辺国における投資案件に関する助言も手掛けている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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