◇SH2416◇中国:外商投資法の成立と草案からの変更点(下) 鹿はせる(2019/03/20)

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中国:外商投資法の成立と草案からの変更点(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 鹿 は せ る

 

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6. 行政機関及び職員の秘密保持義務

 成立法案では第23条が新設され、「行政機関及びその職員は、職務を履行する過程において知った外国投資者、外国投資企業の営業秘密について、法に従い秘密を保持するものとし、漏洩又は不法に他者に提供してはならない」と規定している。また、この変更に併せ、法的責任を定める第38条にも、行政機関の職員が職務を履行する過程で知った営業秘密を漏洩又は不法提供した場合に、行政処分及び(犯罪行為を構成する場合には)刑事処罰を行う規定が追加されている。

 

7. 外商投資制限措置の制定権者の限定

 一次草案第23条は「各級人民政府及びその関係部門の制定する外商投資に関わる規範性文書は法律法規の規定に合致しなければならず、違法に外商投資企業の適法な権益を損害し、又はその義務を増加してはならず、違法に市場参入及び退出条件を設置してはならず、違法に外商投資企業の正常な経営活動を妨げてはならず、又は影響を与えてはならない」と規定していたが、二次草案及び成立法案(第24条)では、「各級人民政府及びその関係部門の制定する外商投資に関わる規範性文書は法律法規の規定に合致しなければならず、法律及び行政法規の規定がない場合には、外商投資企業の適法な権益を損害し、又はその義務を増加してはならず、市場参入及び退出条件を設置してはならず、外商投資企業の正常な経営活動を妨げてはならない」と変更された。

 本変更の趣旨は、本項1と同様、外商投資への制限を「法律及び行政法規」の根拠がある場合に限定することで、国家部門及び地方政府が独自に制限法規を設けることはできないとした点である。

 

8. 外商投資企業の不服処理の申請主体及び申請方法の拡張

 二次草案第25条第2項は、「外商投資企業は行政機関及びその職員の行政行為が自身の合法的な権益を侵害したと認める場合、外商企業通報制度を通じて解決を申請できる」と規定していたが、成立法案(第26条)では第3項が新設され、「外商投資企業及びその投資者は行政機関及びその職員の行政行為が自身の合法的な権益を侵害したと認める場合、前項の外商企業通報制度を通じて協議による解決を申請できるほか、法に従い行政不服申立てを行う又は行政訴訟を提起することができる」と規定されている。

 追加の趣旨は、外商投資企業だけでなくその投資者も通報できるとされた点、及び、通報のほか、通常の行政不服申立て及び行政訴訟を提起できるとされた点である。なお、外商企業通報制度自体は、第26条1項で国がこれから設立すると規定されており、まだその詳細は明らかではない。

 

9. 商会設立、参加からの「外国投資者」の削除

 二次草案第26条は、「外国投資者、外国投資企業は法により商会、協会を設立し、又は自由意思により参加できる」と規定していたが、成立法案(第27条)では「外国投資者」は削除された。

 外商投資法では、「外国投資者」は「外国の自然人、企業及びその他の組織」を指すが、「外商投資企業」は外国投資者の一部又は全部の投資により中国で設立登記された企業を指す(同第2条)。実際に中国で設立されている外国商会は全て外商投資企業により構成されていることから、構成者を広げる必要はなく、より幅広い概念である「外国投資者」は削除されたとみられる。

 

10. 外商投資企業の行為に関する国内法の適用

 二次草案第30条は、「外商投資企業の組織形態、組織機構は、『中華人民共和国会社法』、『中華人民共和国合作企業法』の規定を適用する」と規定していたが、成立法案(第31条)では、「外商投資企業の組織形態、組織機構及びその活動準則は、『中華人民共和国会社法』、『中華人民共和国合作企業法』等法律の規定を適用する」と変更された。

 会社法及び合作企業法以外の法律の範囲は明らかではないが、基本的には、外商投資企業のガバナンス機構だけではなく、企業の行為についても、内資・外資の区別を設けず同様に扱う趣旨と考えられる。

 

11. 外商投資企業のガバナンス機構変更

 二次草案第41条第2項は、「本法の実施前に『中華人民共和国中外合資経営企業法』、『中華人民共和国外資企業法』及び『中華人民共和国中外合作経営企業法』に基づいて設立された外商投資企業は、本法の実施後5年以内に原企業組織形態を継続して保持することができる」と規定していたが、成立法案(第42条第2項)では、「本法の実施前に『中華人民共和国中外合資経営企業法』、『中華人民共和国外資企業法』及び『中華人民共和国中外合作経営企業法』に基づいて設立された外商投資企業は、本法の実施後5年以内に原企業組織形態を継続して保持することができる。具体的な実施方法は国務院が定める」と変更された。

 現在外商投資企業は会社の類型及び適用される外資三法によって組織形態が異なり(例えば最高機関について、中外合弁企業は董事会であるが、外商独資企業は株主総会である)、外商投資法の成立及びそれに伴う外資三法の廃止によって定款変更等の措置が必要になると考えられるが、それをどのように行うべきかについての方針は示されていなかった。本変更は、外商投資企業の組織変更等の具体的方法及びルールを国務院が定めることを明らかにした。

以上

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