☆タイ:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 佐々木将平(2020/04/24)

2020年4月23日号
タイ:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 佐々木  将平

はじめに

 当初5月6日までとされていた緊急事態宣言につき、大型連休以降も延長する可能性につき政府内で議論が開始されたほか、自治体の休業要請に応じない事業者に対しより強い措置を講ずる場合のルール作りが始まるなど、新型コロナウイルスの事業への影響は長期化・深刻化しています。多くの海外地域においては引き続き厳格な外出制限や営業禁止等のロックダウン措置が継続している一方、一部地域においては行動制限の軽減・解除に向けた議論が始まるなど出口戦略の模索も始まりつつあります。

 本記事では速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年4月22日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者48人、感染者数(累計):2,811人(4月21日現在)

 3月中旬以降急速に感染が広がったが、直近1週間は1日あたりの新規感染者数が30人以下の日が続いている。3月25日の非常事態宣言の発令後、商業施設(スーパーマーケット及びテイクアウト向けのレストラン営業を除く。)の閉鎖、夜間外出禁止等の措置がとられているが、工場閉鎖や外出禁止等を伴う完全なロックダウンには至っていない。

 

主な政府発表

  1. ・ 首相による非常事態宣言の発令(3月25日):感染の危険のある場所の閉鎖、県境を越えた移動の中止・延期の勧告、買いだめの禁止、集会の禁止、虚偽情報の流布の禁止等が規定されている。当初4月末までの予定であったが、1か月の延長が見込まれている。
  2. ・ 夜間外出禁止令(午後10時から午前4時まで)
  3. ・ バンコク及び周辺県の商業施設(スーパーマーケット及びテイクアウト向けのレストラン営業を除く。)における閉鎖命令(3月22日以降閉鎖)及びタイ全土における教育機関の休校(新学期は7月1日開始予定)。
  4. ・ 各県における酒類販売の禁止(バンコクの場合、4月10日から4月20日までの期間であったが、4月30日まで延長されている。)
  5. ・ 3月26日以降にビザの滞在許可の期限が到来する全ての外国人について、滞在期間が4月30日まで自動的に延長されていたが、さらに7月末までの自動延長が承認された。また、入国管理局への90日毎の居住報告(90日レポート)の免除も7月末まで延長される。

渡航情報

  1. ・ 非常事態宣言の発令に伴い、3月26日以降、外国人の入国が原則として禁止されている。
  2. ・ 例外的に、労働許可証の保有者は健康証明書(Fit-to-Fly、搭乗に適した体調であることの証明書。)の提示により入国が認められる。また、タイ外務省の4月12日付けの通知により、出発国のタイ大使館又はタイ総領事館が発行したタイへの入国許可証も求められることとなった。他方、在タイ日本大使館の情報によれば、就労ビザのみ保有している者(労働許可証の未取得者)や労働許可証保有者の同伴家族の入国は、原則通り認められていないということである。
  3. ・ 4月2日付けの当局の対応策に基づき、日本を含むリスク地域からの渡航者で、バンコク及び近隣地域の居住者に対しては、ホテルや軍施設等の指定施設での隔離が義務付けられることとなっている。自宅での隔離を希望する場合には、陰性証明書の提示が求められる。
  4. ・ タイ国際航空は5月31日まで国内線及び国際線の全便の運休を決定しており、日系航空会社も日タイ間の国際線を減便している。
  5. ・ 4月30日まで、国際旅客便のタイへの飛行が一時的に禁止されており、タイ人も含めタイへの渡航は原則不可能な状況となっている。

その他

  1. ・ 感染拡大に伴い多くの民間企業が定時株主総会の延期を余儀なくされている状況等に鑑み、4月19日付けで、各種会議体の会議について、電話会議又はテレビ会議による開催を容易にするための、「通信を利用した会議に関する勅令」が公布された。同勅令においては直接明示されていないが、株主総会のみならず、取締役会の開催にも適用があると解される。従前の規則(2014年6月27日付け)においては、通信を利用した開催のための要件として、全ての会議の参加者がタイ国内に所在していること及び出席者の3分の1以上が同じ場所にいることが求められており、柔軟性を欠く規制となっていたが、それらの要件は撤廃された。株主総会については委任状を通じた出席が認められているものの、取締役会については委任状による出席や書面決議は認められておらず、電話会議又はテレビ会議での開催要件が厳格であることが実務上の支障となっていたが、日本からの電話会議等による出席が認められるようになったことは歓迎すべき改正と言える。なお、当該勅令においては、通信を利用した会議において充たすべき一定の条件が定められており、原則として出席者の音声又は音声及び映像を記録すること、並びに、出席者全員のログデータを記録することが求められている点には、特に留意が必要と思われる。

 

(ささき・しょうへい)

長島・大野・常松法律事務所バンコクオフィス代表。2005年東京大学法学部卒業。2011年 University of Southern California Gould School of Law 卒業(LL.M.)。2011年9月からの約2年半にわたるサイアムプレミアインターナショナル法律事務所(バンコク)への出向経験を生かし、日本企業のタイ進出及びM&Aのサポートのほか、在タイ日系企業の企業法務全般にわたる支援を行っている。タイの周辺国における投資案件に関する助言も手掛けている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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