☆フィリピン:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 坂下 大(2020/05/15)

2020年5月14日
フィリピン:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

                                                                               長島・大野・常松法律事務所

弁護士 坂 下   大

はじめに

 政府対策本部により緊急事態宣言が5月31日まで延長される一方で、都道府県レベルでは地域ごとの感染状況に応じた社会経済活動の再開に向けた方針の発表が相次いでいます。海外においても、各国において経済活動の再開に向けた具体的なロードマップの発表が続いており、一部の国や地域では既に緩和措置が開始されていますが、その判断基準や緩和手順は一様ではなく、また、感染拡大の第二波の兆候が顕れている国もあり、引き続き企業にとってはビジネス再開の見通しが不透明な状況が続いています。

 本記事では速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年5月13日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:751人、感染者数(累計):11,350人(5月12日現在)

 フィリピンではこの数週間ほど1日あたり200人前後の規模での新規感染者の確認が続いている。3月中旬から開始された外出禁止やオフィス閉鎖を含むコミュニティ隔離措置は、現在は一定の地域を対象に5月31日までその期間が延長されている。

 

主な政府発表

  1. ・ 労働雇用省が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた柔軟な働き方に関するガイドラインを発表(3月4日)
  2. ・ 国内感染の増加を受けて、COVID-19アラートシステムをCode Red sublevel 1(5段階のうち上から2番目)に引き上げ(3月7日)
  3. ・ 大統領による公衆衛生上の非常事態宣言(3月9日発表)
  4. ・ 大統領によるウイルス対策の追加措置の発表、COVID-19アラートシステムを最高レベルのCode Red sublevel 2に引き上げ(3月12日)
  5. ・ 大統領府、官房長官によるウイルス対策の追加措置に関するメモランダム(3月14日)
  6. ・ ルソン全域(マニラ首都圏含む。)に「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」の措置(3月16日)
  7. ・ 大統領による国内全土の災害事態宣言(3月16日)
  8. ・ 「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」に関するガイドライン(3月18日)
  9. ・ COVID-19対策法(Bayanihan to Heal As One Act)に大統領が署名(3月24日)。向こう3か月間にわたり、大統領に一定の措置をとる権限が付与されている。
  10. ・ 「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」の期間を4月30日まで延長(4月7日)
  11. ・ コミュニティ隔離措置の期間を5月15日まで延長(4月24日)
  12. ・ コミュニティ隔離措置の期間の5月31日までの延長、及び隔離措置の一部緩和を発表(5月12日)

 

渡航情報

  1. ・ 3月22日より、全ての外国人へのビザ発給及びビザ免除措置が停止され、また既発行のビザも無効とされている(フィリピン国民の配偶者及び子等の一定の例外を除く。また、既にフィリピンに滞在している外国人のビザは引き続き有効。)。これから外国人がフィリピンに入国することは原則としてできない状況にある。

 

その他

  1. ・ 一定の地域に適用されているコミュニティ隔離措置の内容は、地域により「強化されたコミュニティ隔離措置」(enhanced community quarantine: ECQ)と「一般コミュニティ隔離措置」(general community quarantine: GCQ)に分かれており、ECQの対象地域においては、原則的な外出禁止、生活に必要な事業以外のオフィスの閉鎖等、GCQの対象地域に比して厳格な措置がとられている。マニラ首都圏及びセブ市はECQの対象地域である。なお、5月16日以降、ECQの対象地域における隔離措置が一部緩和される予定である。
  2. ・ 3月12日に、証券取引委員会(SEC)より、遠隔的手法(電話、ビデオ会議等)による株主総会開催に関するガイドラインが策定されている。
  3. ・ 2019年の年次報告書、計算書類のSECへの提出期限の延長が認められている(3月12日)。また、一定の条件の下で、これらを電子メールで提出することも認められている(3月26日)。
  4. ・ COVID-19対策法の施行規則により、金融機関その他ローン取引における貸主は、上記隔離措置期間中に期限を迎えるローンの支払について、遅延損害金等(元本について生じる利息を除く。)のペナルティを課することなく、30日間の猶予を認めるべき(隔離措置期間が延長される場合には猶予期間も延長される。)とされている。
  5. ・ 3月12日に、証券取引委員会(SEC)より、遠隔的手法(電話、ビデオ会議等)による株主総会開催に関するガイドラインが策定されている。
  6. ・ 2019年の年次報告書、計算書類のSECへの提出期限の延長が認められている(3月12日)。また、一定の条件の下で、これらを電子メールで提出することも認められている(3月26日)。
  7. ・ COVID-19対策法の施行規則により、金融機関その他ローン取引における貸主は、上記隔離措置期間中に期限を迎えるローンの支払について、遅延損害金等(元本について生じる利息を除く。)のペナルティを課することなく、30日間の猶予を認めるべき(隔離措置期間が延長される場合には猶予期間も延長される。)とされている。
  8. ・ 貿易産業省の回状(memorandum circular)により、住宅や中小企業に対するオフィス、商業施設の貸主は、上記隔離措置期間中に期限を迎える賃料について、利息その他の負担を課することなく、30日間の支払猶予を認め(複数回期限が到来する場合にはその最後のものから起算)、また隔離措置期間終了後6か月にわたり分割して支払うことを認めるべきとされている。

 

(さかした・ゆたか)

2007年に長島・大野・常松法律事務所に入所し、クロスボーダー案件を含む多業種にわたるM&A、事業再生案件等に従事。2015年よりシンガポールを拠点とし、アジア各国におけるM&Aその他種々の企業法務に関するアドバイスを行っている。

慶應義塾大学法学部法律学科卒業、Duke University, The Fuqua School of Business卒業(MBA)。日本及び米国カリフォルニア州の弁護士資格を有する。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

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