2020年5月15日号
ベトナム:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
はじめに
政府対策本部により緊急事態宣言が5月31日まで延長される一方で、都道府県レベルでは地域ごとの感染状況に応じた社会経済活動の再開に向けた方針の発表が相次いでいます。海外においても、各国において経済活動の再開に向けた具体的なロードマップの発表が続いており、一部の国や地域では既に緩和措置が開始されていますが、その判断基準や緩和手順は一様ではなく、また、感染拡大の第二波の兆候が顕れている国もあり、引き続き企業にとってはビジネス再開の見通しが不透明な状況が続いています。
本記事では速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年5月13日夜時点で判明している情報に基づいています。
全体概況 死亡者:0人、感染者数(累計):288人(5月13日現在) ベトナム国内での感染者数は抑えられており、日本及びUAEからの帰国者数人を除き、4月16日以降5月13日までの27日間にわたり、市中での新規感染者は出ていない。ベトナム政府は4月1日から全土での「社会隔離」の実施を指示し、全ての国民に自宅待機を求めていたが、4月16日以降段階的に緩和がされており、既にカラオケとディスコ以外の店舗の営業再開、国内交通機関の制限解除も認められ、ベトナム国内は平穏を取り戻している。外国人の入国については、引き続き原則として認められていない。 |
主な政府発表
- ・ ①公共スペース、事務所ビル・学校の周辺、公共交通機関におけるマスクの着用、手指の消毒、個人衛生確保の義務付けの継続、②公共交通機関における便数制限の撤廃、間隔・座席数の制限の解除、③一定の感染防止措置を前提とした(a)商業・サービス施設(ディスコ及びカラオケを除く。)の営業、(b)スポーツ活動、大人数が密集する活動の再開を許容(5月8日付首相府通知177号)
- ・ 新型ウイルス感染症の流行により影響を受けた企業に対して、労働組合費や社会保険料の支払期限を延期する公文書が発行されている[1]。また、同様に税金や土地賃借料の支払期限の延期を定める政令第41/2020/ND-CP号も公布されている。
渡航情報
- ・ 2020年3月22日以降の全ての外国人の入国の原則停止措置(政府官房通知第118/TB-VPCP号)は継続中である。但し、例外的に入国が許可される例もある。また、5月8日付首相府通知177号では、投資家、専門家、高技能労働者に該当する外国人の入国については、14日間の「集中隔離」(病院・ホテル等、国が指定した施設での隔離)ではなく、「適切な隔離措置」は必要なものの「企業の経営者及び当該地方の医療機関がその隔離を監視し、絶対にコミュニティへ感染を拡大させないことに責任を負う」としている。在ベトナム日本大使館が11日の時点で関係当局に聴取したところでは、これにかかわらず、当面、投資家、専門家、高技能労働者に対しても、集中隔離を要求するとの回答であったとのことである[2]が、首相府通知177号の内容からすれば、投資家、専門家、高技能労働者に該当する外国人については、遠からず、自宅での隔離が認められることになるのではないかと期待される。
- ・ ハノイ市及びホーチミン市では、日本人の労働許可証の新規発行申請は、原則受理を拒否されている。
- ・ 4月1日から実施されている、ベトナム着の全国際旅客便の原則運行停止は継続中。ベトナム航空は日本路線の全区間を6月末まで運休[3]。日系航空会社も日越間の航空便を運休又は減便し、5月末までの期間はベトナムから日本への復路便のみ運行している。
[1] 労働組合費につき、ベトナム労働総同盟によるオフィシャルレター第245/TLD号、社会保険料につき、ベトナム社会保険庁によるオフィシャルレター第860/BHXH-BT号
[2] https://www.vn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/corona0511.html
[3] https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2020/05/20200430-JP-NOOP-notice-till-30JUN-1.pdf
(さわやま・けいご)
2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。
現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。
当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。
詳しくは、こちらをご覧ください。