中国:改正「不正競争防止法」(2)
商業賄賂
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 川 合 正 倫
中国の改正「不正競争防止法」が2018年1月1日から施行された。前稿では、不正競争行為及び混同行為について紹介した。本稿では、外国企業の関心が高い商業賄賂に関する改正点ついて解説する。
3. 商業賄賂に関する規定(改正法第7条)
改正法においては商業賄賂に関しても行為の目的、贈賄行為の相手方、従業員の行為等に関して、重要な改正がなされている。
- 改正法第7条
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経営者は、金品その他の手段を用いて次の各号に掲げる企業・組織又は個人に贈賄して、取引の機会や競争における優位の獲得を図ってはならない。
- (1) 取引相手方の従業員
- (2) 取引相手方から委託を受けて関連事務を行う企業・組織又は個人
- (3) 職権又は影響力を利用して取引に影響を及ぼす企業・組織又は個人
- 経営者は、取引活動において、明示的な方法により取引相手方に割引を与え又は仲介人に対して手数料を支払うことができる。経営者は、取引相手方に割引を与え又は仲介人に対して手数料を支払う場合には、事実のとおり記帳するものとする。割引又は手数料を受けた経営者は、事実のとおり記帳するものとする。
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経営者の従業員が贈賄した場合は、それを経営者の行為と認定する。ただし、経営者が証拠をもって当該従業員の行為が経営者のために商機又は競争上の優位を獲得することと無関係であることを証明した場合は、この限りでない。
- 行為の目的:
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規制対象となる行為の目的に関して、旧法においては「商品の販売又は購入」とされていたが、サービスの提供等についても規制対象に含む実務も踏まえ、改正法においては「取引の機会又は競争上の優位な地位の獲得」に拡大された。
- 贈賄行為の相手方:
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贈賄行為の相手方に関して、旧法においては「相手方である企業・組織又は個人」とされていたが、改正法においては取引の相手方が除外される一方、取引相手方以外の一定の第三者を対象とすることが明示された。従来から取引相手方に対する経済的利益の供与は商業賄賂を構成すると解すべきではないという見解があったが、実務上は取引相手方に対する行為も広く処罰の対象とされていた。本改正では、この点が改められ取引相手方への利益供与行為はすべからく商業賄賂の対象から除外されたという評価がある一方で、取引相手方に対する利益供与であっても一定の場合には商業賄賂を構成するという見解も主張されており、実務の累積がまたれるところである。
- 従業員による行為:
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旧法では明確でなかった経営者の従業員による行為について明確な規定が置かれ、「経営者が証拠をもって当該従業員の行為が経営者のために商機又は競争上の優位を獲得することと無関係であることを証明した場合」を除き、経営者の行為と認定されることになる。このため、企業としては、日頃から、規程類の整備、社員教育、反腐敗の誓約書の取得、違反従業員の処分等の手段を通じて従業員の行為を厳しく管理することが求められる。
- 行政処罰の強化:
- 商業賄賂の違反について、旧法においては、違法所得の没収、1万元以上20万元以下の過料とされていたが、改正法においては、過料額が10万元以上300万元以下まで引き上げられるとともに、重大な事案においては営業許可証の取消しの対象とされた(改正法第19条)。