実学・企業法務(第131回)
法務目線の業界探訪〔Ⅱ〕医藥品、化粧品
同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー
齋 藤 憲 道
〔Ⅱ〕医薬品、化粧品
〔Ⅱ-1〕医薬品
2. 医薬品の取り扱いに関する規制
(2) 医薬品の販売が許可される業態(販売チャンネル)
※許可期間はいずれも6年間で、更新が必要。(医薬品医療機器等法24条2項)
① 薬局(医薬品医療機器等法4条~11条)
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• 「薬剤師」が、販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所をいう。
(注1) 病院・診療所・家畜診療施設の調剤所は含まない。
(注2) 面積は、概ね19.8㎡以上(うち、調剤室6.6㎡以上を確保する)[1]
② 小売販売(店舗販売業)(医薬品医療機器等法25条1号、26条~29条の3)
- • 店舗において、要指導医薬品・一般用医薬品を販売(又は授与)することができる。
- • 要指導医薬品の販売においては、その店舗に従事する薬剤師が、対面で、情報提供・指導しなければならない。
③ 小売販売(配置販売業)(医薬品医療機器等法30条~33条)
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• 店舗を持たず、一般家庭等を訪問して、一般用医薬品を置いてもらい、一定期間後に再度訪問して、前回置いた薬の中で減った(使用した)部分について代金を請求・回収する[2]。
昔から「置き薬」で知られる先用後利の考え方に基づく販売形態である。
〔配置販売に求められる要件〕
- ⑴ 一般家庭に長期間配置するため、経年変化が少なく、使用方法が簡易で、容器・被包が丈夫な一般用医薬品が対象になる。
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⑵ 配置販売業の都道府県ごとの区域管理者は、薬剤師又は登録販売業者でなければならない。
(第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品に応じた業務体制の整備が求められる。) - ⑶ 家庭等を訪問したその場で現金販売することはできない。
- ⑷ 地域毎に担当保健所で配置販売許可を受ける。(都道府県知事が発行する「身分証明書」を携帯しなければ、販売活動を行ってはならない。)
④ 卸売販売業(医薬品医療機器等法34条)
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• 製薬会社が製造した医薬品を、専ら薬局開設者、医薬品販売業者、医薬品製造販売業者、医薬品製造業者、医療機関の開設者等にのみ医薬品を販売(又は授与)できる。
原則として、各営業所に薬剤師を置かなければならない[3]。
(注) 卸売販売業の概要(「日本医薬品卸売業連合会[4]」HPより)- ・ 会員企業の「医薬品販売高(2015年度)」は9.2兆円(うち、医療用8.9兆円、一般用0.3兆円)
- ・「医療用医薬品」の大部分は、医薬品メーカーから卸経由で、病院・診療所等の医療機関や薬局に販売されている[5]。(ごく一部が、医薬品メーカーから医療機関に直販)
- ・「一般用医薬品(大衆薬)」の販売額全体の約半分(3,000億円)が卸経由で薬局・店舗販売 業者に流通している。(残りの約半分は、医薬品メーカーから薬局・店舗販売業者に直販)
- ・ 医薬品の卸売販売は、物流(品揃えを含む)、販売(コンサルティングを含む)、医薬品等に関する情報の収集・提供、金融等の機能を果たしている。
[1] 薬局等構造設備規則(平成27年4月1日厚生労働省令第80号)
[2] 後日、減った部分を売り手と消費者が相互に確認して代金を請求する点で、訪問販売と異なる。
[3] 医薬品医療機器等法35条1項
[4] 2017年3月末日現在の卸企業数72(本社数)、2017年6月現在の社員数は合計約5.6万人(うち、医薬品のMSは1.7万人)。(注) 常勤は1名、パートは0.5名として計算。
[5] 医療用医薬品の販売ウェイト(2015年度)は、大病院21.4%、中小病院6.0%、診療所16.9%、薬局55.2%。(クレコンリサーチ&コンサルティング(株) 調査)